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おうちに帰るミソロジー  作者: かわのながれ
シジューで
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聖鈴騎士。


教会が誇る最強戦力。生来から魔力を精製できない人間を集め特殊な訓練を施す事で人間でありながら霊素獣の如き力を発揮する。


その構成員には在籍証明として霊素を含んだ鈴が渡され、その霊素には彼らの個人情報が登録される。


彼らを魔術院の戦団と並ぶ戦力足らしめているのは霊素を操る能力。霊素獣同様に霊素を使用し肉体を強化、更には極簡単なものではあるが、霊撃さえも使用可能である。


魔術院の規定に於いて聖鈴騎士のその霊素獣としての段階は第三段階に相当するとされるが、個人によっては第四段階の霊素獣を討伐可能とされている。


「ごちそう様でした」


教会の夕食は贅沢なものではなかったが、決して質素なものでもなかった。新鮮な穀物に野菜や肉が並び十分に腹を満たしてくれた。


もっとも、メインとなった肉はエオメルが倒した霊素獣のものであったのだが。


「霊素獣って食べられるんですね……」


「私、霊素獣を捌くなんて初めてだったよ」


キーアはロシリエルと料理を手伝った。最初はあまり見ないグロテスクな死体に怯んでいたがエオメルが解体した肉を持ってくると慣れた手さばきを見せて調理してしまった。


「第二段階までならね。それ以降は肉体がほぼほぼ霊素化するせいで死んだら肉は残らない」


「……」


それは、エオメルにも適用されるのだろうか?そんな疑問がスオの頭をよぎる。そして顔にも出ていたのだろう。エオメルはにへらと笑うと言った。


「僕は死んでも肉体が消えることはないよ。肉体の強化に霊素を使っているだけで肉体が霊素化しているわけじゃないからね」


霊素獣は過剰な霊素を取り込み肉体が変質したものを指す。これは、肉体から余分な霊素を排出する方法がないから起きる現象だ。


しかし、聖鈴騎士達は肉体から余分な霊素を排出する方法がある。そのために肉体の変質は起こらない。


この差は魂の性質の違いから発生する。人間の魂は他の動植物と異なり霊素を魔力化する事で魂から排出する事が出来る。


聖鈴騎士は魔力変換が出来ないだけで余分な霊素を排出する事が出来る。これは逆に言えば魔力化という無駄なプロセスを踏む必要がないとも言えた。


つまり、人間の魂とはそもそも適量の霊素だけを吸収する性質を持っていると言える。


「何か、人間って生き物がよく分かんなくなるな」


「何だそりゃ、哲学か?似合わないなスオ」


ケラケラと笑うアレクトだが、家族であるスオにとってさえ考えてみればこいつの存在も大概謎である。


「面白生物のお前は更にワケわからないけどな?」


「クルニア司祭、ウチのスオが迷える子羊やってるから助けてあげてくれ」


誤魔化すようにアレクトがクルニアに助け舟を求めるとクルニアはカップを手で包み込み「ふむ」と息を漏らした。


「そうですね。では列車でもお話しましたがもう少し踏み込んだ所まで語りましょうか」


「教義について、ですか?」


「ええ。人間についてです」


ニコリと微笑んでから口元に手をやりコホンと咳払いをしてからクルニアは語り始めた。


「我らの教えは二つあります。神より与えられた使命と、人としてより善くあるための訓戒です。今回は前者についてお話しましょう。人間は神によって創造されました。それは神から使命を与えられ果たす役割を求められたからです。即ち人類とは神の使徒であり、労役者でもあります」


「労役……罪人なんですか。俺達は」


「与えられた役割を果たせていない、その使命を半ば忘却し始めている……故に我らは罪人なのです」


その言葉に少しばかりの反感を覚えた。それは、教会だけは神の使命を訴えているのだから彼らは逆説的に正しく、教会に属さない人間は間違っていると言っているようなものだからだ。


「さて、話を戻しますが人が他の生物と異なるのは神によって創造されたからです。役割を果たすべくそのように創られたからです」


「役割、使命……」


キーアが呟いた。どこか暗い表情をしている。その理由がスオには測りかねた。


「その使命とはなにか。至天の円環に辿り着く事です。そして辿り着いたそこで神に星の実を捧げる事こそが我らの至高命題です。そうして初めて我等人類は神の御許に帰る事が出来る」


胸の前で手を組み祈るように目を閉じる。


「これが我らの教典が円環教典、そして帰還神話と呼ばれる所以です」


要するに、人間が特殊な存在なのは神による采配であり、そうした能力を持つのは神が与えた使命を果たすためだと天井方舟教会は教えているというわけだった。


改めて聞くとスオとしてはその考え方に複雑な感情があった。


「役目を終えて神の御許に行くと人はどうなるんですか?御役御免でさよならですか?」


「神は慈悲深い御方です」


清く正しく、それは清廉な祈りの言葉であった。

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