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おうちに帰るミソロジー  作者: かわのながれ
シジューで
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51

荷物を置いてしばらくしてから手に紙袋等の荷物を抱えたエオメルがやってきた。


「それじゃ悪いんだけどついてきてもらえるかな」


世話になっている身分で嫌とは言えず二人と一匹はその後に従って教会を出た。


なだらかな道を歩き、のどかな風景をしばらく眺めているとおもむろにスオが切り出した。


「今から会いに行くジョージとかいう人は何者なんですか?」


「うん。まあ、僕の友人なんだけどね。実の所、組合員なんだ」


「組合……!」


その単語は剣呑である。ここまでの道中で全く良い印象を持てる理由がない。スオは勿論のこと、キーアもまた表情を固くしていた。


「何故組合の人に俺達を会わせようというんですか」


「シジューから次の国ワレオに向かうには車が必要でね。その車は使用中なんだ。帰ってくるのに五日はかかる。その間に、まあ、ないとは思うんだけど君らが彼と接触する可能性も無きにしもあらずなので先に紹介しとこうかなって感じかな」


「余計な悶着がないように、という計らいかな?気が利いているねえ」


ニヤニヤとアレクトが皮肉をきかせた余計な事を言う。


エオメルは涼しげにそれを流して続けた。


「彼は組合員ではあるけれど過激派とは派閥が違うからね。別に魔術師を見たからと言って襲いかかってくることはないし、策略たてて奇襲をかけてくることもないよ」


「派閥、ですか」


「魔術院にもあるだろ?過激派とか穏健派みたいなの。組合にもあって、彼は穏健派だ」


魔術院の象徴、三つ首の犬。カニス、ルプス、ファミリアリス。


具体的な内実をスオは知らないが三つの派閥があることは聞き及んでいる。だが、表立ってどこの派閥だと公言する人物が知り合いにいない。


「そういうのって自分で宣言するものなんですか?」


「色々と込み入った事情があってね。当時は十年前の件で組合長であり過激派のトップでもあるガトーは追い込まれてて身を隠す必要があった。そのため過激派の命令系統は混乱状態になってて黒庇山脈南部の拠点でもあったシジューを失う事は出来ないと穏健派が派遣した人員の一人が彼だったのさ」


「……成程」


理屈は通る。黒庇山脈を挟んで足を留めることができる場所はいる。そのために人員を割くのは当然だし、過激派がどうしようもないなら穏健派が独自に動いてもおかしくない。しかし、とも思った。


「もとからいた組合の人達はどうしたんですか」


「行方をくらましたらしい」


「追い出したんですか?」


「そういうわけじゃなかったらしいけど、当時僕はここにはいなかったからね。詳しい事は何とも」


「あの」


キーアが片手を上げて割り込むように質問した。


「エオメルさんは魔力を精製できないって聞いたんですけど……」


「うん。確かに僕は魔力を精製できないね」


「実は私もそうなんです」


「……へえ。そうか。レンレセルでそれは大変だったろう」


「色んな人に助けられてます。それで、その方舟大陸にはそういう人がいっぱいいるって聞いたんですけど」


「それは語弊があるな。いっぱいってことはないよ。珍しいには違いないけど、そうだな。僕の周辺は皆そんな人ばっかりだった」


「それは、どういう……」


「ごめん。そろそろ見えてきた」


そう言って指差した先には大きな湖とそれを囲むように楢の木が林立していた。湖面には白鳥や鴨が優雅に浮かんでおり下手くそな管楽器のような、あるいはビードロを鳴らすような、そんな様子で思い思いに鳴き声を上げている。


周辺にも走り隠れるように小さな影があった。小鳥や小動物の類であろう。


不思議と他の場所にもまして空気が美味しいように感じられる、そんな場所だった。


「あの林の向こうにジョージの家があるんだ」


「街中から離れた所に住んでるんですね」


「厭世家みたいな所があってね、あまり人と関わりを持ちたがらないんだよ」


「そりゃまた難儀な話だ。何でそんなのが送り込まれたんだ」


ケラケラと笑いながらアレクトが言う。


確かに、住民との関係性や教会との折衝を考えれば協調性のある人材が送られるべきである。人との繋がりを嫌がるような人間が適しているとは到底考えられない。


「本人が希望したらしいからね。ここはセンティーアに近いから」


「センティーアに何かあるんですか、その人」


「まあ、会えば分かるよ」

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