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おうちに帰るミソロジー  作者: かわのながれ
シジューで
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通された部屋は質素なものだった。カーペット一つない裸の地面に木製のテーブルと椅子、綺麗に整えられた簡素なベッド。装飾らしい装飾といえばお馴染みの半円ぐらいのものである。


「表は中々豪華にしてるのに裏では清貧を尊ぶとは捻くれてるな!」


「ちょっとアレクト……やめなよ」


慌ててアレクトをキーアがたしなめるが、ロシリエルは手を振って気にしてないと示した。


「いえ、気にしてませんから大丈夫……今、そのウサギが喋りましたか?」


アレクトについて説明しながらついでに旅をしている事情やエオメル達に同行している理由も掻い摘んで話すと感慨深げにロシリエルは頷いた。


「成程、そういう事情でしたか。大変でしたね」


話を聞いている間、ロシリエルは一つ一つの出来事に喜怒哀楽を露わにし、くるくると変わる表情は人の気持ちを汲み、その痛みを共感できるとても素直な性格を表しているようでキーアは彼女に好感を持った。


「そうですね、ちょっと出だしから色々と起こりすぎてますよね。これ以上は何もないといいんですけど……」


「ああ、旅の話だけではなく、その、レンレセルに来た理由も含めてなんですが……ええ。魔力を精製できない体質ですか。それはレンレセルでは大変でしたでしょう」


「……そうですね。皆が優しいから私はやっていけましたけど。ちょっと申し訳ないなって思いもしました」


「そうですよね。ただ、そういった体質の方は方舟大陸では聞くので確かにキーアさんは方舟大陸の方なんだと思います」


「そうなんですか?方舟大陸には私みたいな人がいるんですか?」


「ええ。例えば騎士エオメルはそうですよ」


「エオメルさんが……?」


「はい。ですからキーアさんが魔力を精製できない事に関しては心痛めることはないと思います」


「そうなんだ……」


不意に現れた同じ体質の人間にキーアはどこかホッとした、救われたような気持ちになった。この世界に自分は一人置いてけぼりにされた孤独な人間ではなかった、同種がいるという安心感だった。


……それに、少しだけ気がかりなこともあった。


あのケレブリアンは、生き返ったという女は、魔力を精製する事が出来なかった。


よもやまさか、自分もという恐れは少なからずあった。自分も死んでいたものを蘇らせたからレンレセルへ逃されたのではないか?そんな不安があった。しかし、自分はケレブリアンのように狂ってはいない。その自覚が自分は彼女とは違うと言い聞かせていた。


何しろ、少し安堵した。余裕ができたせいかふと疑問が浮かび口にする。


「そういえば、ロシリエルさんは方舟大陸の方なんですよね?エオメルさんやクルニアさんと一緒に来たんですか?」


「いえ、クルニア司祭が十年前に、騎士エオメルは五年前にこちらに来たそうです。私は一昨年赴任しました」


「バラバラなんですね。皆で一緒に来たのかと思いました」


「ここは教会の護衛圏の端っこです。特に十年前に生じた空白地帯でした。色々あって組合はシジューの管理を放棄しましたが当時はまだこの地に残された組合の面々の影響も強く彼らとの折衝の必要があったので余計に刺激したくないからとクルニア司祭だけがまず派遣されました」


「はっはっは。豪気な話だ」


教会の大胆さにアレクトが笑う。組織に見捨てられた人間が真っ当な判断力を持てていたかどうかはかなり怪しく、そんなところに護衛もなしに一人で派遣されたクルニアに対する同情の念が少なからずキーアには感じられた。


そして、同時にそのような判断を下した教会に対する皮肉でもある。


それを察したのだろうロシリエルは困ったように微笑んだ。


「そうですね、クルニア司祭は苦労されたと聞いています」


「大変ですね……」


心の底から口にする。今だって何者だかにお金の無心をされているような有り様である。まさに聖人でもなければ心根が歪んでいようというものだ。


「ところで……」


ちらりとロシリエルが視線をずらした。


そこには荷物を片付けるスオの姿がある。


「あの、お二人は別々の部屋でなくともよろしいのですか?御用意出来ますよ?」


「いえ、お部屋を借りる身分でそんな図々しいこと言えませんから。ねえ、スオ」


「まあ、そうだね。お気になさらず」


どちらもあっけらかんといった風情で言うものだからロシリエルは言葉に困ったように視線を彷徨わせてから聞いた。


「お二人は兄弟ではないんですよね?」


「血縁関係はないですね。でも家族です」


「そうですか……分かりました」


何の疑問も挟む余地がない口振りにロシリエルは自分の思慮が及ばない関係性なのだと認識した。これ以上は野暮になる。そう納得した。

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