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街中に入ると小さな子供の姿やスオやキーアと変わらない年頃の姿もちらほらと見えるようになってきた。元気に走り回ったり家の仕事の手伝いか農作業着を着ていたりとしている。
家は一軒一軒の敷地が広く農耕具が置かれた軒先に犬や鶏といった動物を飼うためのケージがある家も珍しくなかった。
やがてバスが停車するとそこは街の中心部のようだった。センティーアとはくらぶべくもないが商店街が広がりそれなりに活気のある雰囲気を見せていた。
「よし、こっちだ」
四人と一匹はバスを降りるとエオメルの先導に従い歩き出した。賑わう商店街を避けるように人通りの少ない道をしばし行くと目の前に小高い丘が現れ、そこには他の建物に比して大きく、そして毛色の違う建物があった。
鋭角に尖った屋根の先端に銀色に光る半円のシンボルを掲げ、ステンドグラスで窓を嵌め込んだ白亜の建造物。大きな門扉は来る者を拒むつもりはないらしく開け放たれ石畳が門扉から建物への道を繋いでいる。小川が流れ池があり花壇もある。目に楽しく散歩するのにも適していそうだった。
「どうぞ中へ」
勧められるまま中に入るとそこは広い空間になっていた。
几帳面に並ぶ長椅子は四列に別れ、内側の長椅子と長椅子の間には赤い絨毯が血の川のように敷かれていた。その先には黒檀の教壇が設えられており、その背後には翼のある二人の女性が棺のような物を持ち上げるステンドグラスがある。横の壁には宗教画と思しき絵が飾られており荘厳な雰囲気が漂っていた。
「クルニア司祭、おかえりなさいませ」
白地の修道服に側面のない貫頭衣のような黒地の布を羽織った黒髪の女性が深々と頭を下げた。そばかすの目立つ不思議と愛嬌のある顔立ちをしていた。
「ロシリエル、不在の間ありがとうございました。何か問題等はありませんでしたか?」
「ええ、それが……」
ちらりとスオやキーアの方を見る。特に、スオの服装、魔術師の象徴たるロングコートを見てその表情を曇らせた。
「部外者には聞かせられない話なら外しますけど」
気を利かせようかとスオが言うがクルニアはニコリと微笑んだ。
「いえ、構いませんよ。ロシリエル」
鷹揚に促すと、それでもどこか躊躇したように視線を泳がせた後、心を決めたように話し出した。
「はい。あの、ジョージさんがですね。お金を無心に来まして」
「成程。そうでしたか。それで渡したのですか?」
「いえ。クルニア司祭が不在なのでお金は渡せないと断りましたらお帰りになりました」
「ふむ……」
少し思案するように頭を下げると、おもむろに懐へ手をやると小袋を取り出した。
「騎士エオメル。申し訳ありませんがこれを彼に渡してきてはもらえませんか」
「はあ。それは構いませんけどよろしいので?」
「彼にはお世話にもなっていますから」
「承知しました。そうですね、彼には聞きたいこともありましたし」
そこで一旦言葉を止めてスオ達の方を見た。
「彼らに紹介しようかなと思ってもいましたので渡りに船ということにしときましょう」
「そうですか。では、長旅でおつかれでしょうから先に部屋へお連れして少し休んでから行くと良いでしょう」
そう言うとロシリエルに目配せをする。それを受けて「こちらへどうぞ」と促した。




