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おうちに帰るミソロジー  作者: かわのながれ
レンレセルから
24/189

24・センティーア

古都大陸は世界最大の大陸であり、最も人類が繁栄した大陸でもある。しかし、古都大陸(その名)が指し示す通り、それも昔の話。今では多くの人々が他の大陸に移り住み、霊素獣の多さも相まって国と呼べるほどの力を持った政治体は数少ない。


その中でセンティーアは古都大陸における最大の都市国家として今でも活気のある場所である。


古都大陸の中央付近に位置し、交通の要所となっていることから人も物も集まり、発行しているセンティーア紙幣は世界のどこに行っても信用価値があるとされレンレセルを近くにしていることから安全面においても優れている。


古都大陸における都会の代名詞と言っても差し支えない。それがセンティーアである。


「凄い……何だかよく分からないくらい賑やかだね」


キーアが初めて見るセンティーアに感嘆の声をあげた。


センティーアに到着したのはすっかり夜も更けもうじき日時も変わろうかという頃になってしまったが、入国管理所を出て目に入ってきた光景は昼間もかくやという賑わいを見せる舷梯駅である。列車駅とバザールが一体化し、それを利用する客を見込んでレストランが隣接され、更には宿泊客の需要も取り込もうと宿泊施設が立ち並びその賑わいはレンレセル中心部でも見られない活気であった。


「センティーアには四つの出国駅がある。それぞれ東西南北舷梯駅と言われているがここは南舷梯駅だな」


教師が思い出したように講義をするかのようにキーアの肩に乗っかったアレクトが口を開いた。


「舷梯……?」


「この街を船に見立てた名前だそうだよ」


「そもそも船自体がよく分からないんだけど」


ふむ、とアレクトが鼻をならした。少し考えるような所作を見せてから言葉をついだ。


「船は水の上に浮かぶ乗り物だ。その乗り降りに使用されるのが舷梯というものなんだよ」


「水の上に浮かぶ乗り物なんて人が乗ったら沈みそう。何か魔術でも使って浮かしているの?」


「まあ、あれだ。後で説明しよう。それより今は」


ちらり、とアレクトが背後を見る。


スオがどこか呆然とした顔をしてフラフラとした足取りでいた。


「ユガ、と言ったっかな。あの男は無事だったのだろう?」


「あ、ああ。うん。バッツの兄さんの治療魔術が間に合ったから」


「私、遠目だからよく分からなかったけど怪我は酷かったんだ……」


「身体を張るのが戦団の仕事だからね。多少の怪我は本人も承知の上だ」


「あれが多少の……」


言葉が口をついて出ようとした。思いもかけず強い口調になりそうだったので慌てて止めた。


「センティーアには魔術院の支部がある。そこに行こう……と言いたいが時間も遅い。今日のところはこの辺りで一泊した方がいいだろうね」


ホッと胸を撫で下ろしたのはキーアである。


「良かった、何もしてないのに何だか疲れちゃってたから休めるのは助かるよ」


「戦わない子がああいう場に立ち会えば神経をすり減らす。仕方がないね」


「そうね。戦団の仕事って大変なんだね」


「ああ、そうともさ。だからスオ」


アレクトが再び振り返る。


「後で勉強のお時間だ。折角観戦したんだから参考になったろう?」


「それは……」


先程の戦闘を思い出す。スオの理解を超えたものだった。一瞬にして発動される魔術、極めて正確な魔術式。ユガだけではない。サガームとヒッツの二人もまたスオから見れば遥か高みにいる魔術師だった。しかし彼らでさえ第四段階に至った霊素獣に対しては援護しか出来なかった。


遠い。あまりにもかけ離れすぎて寒くなった。


「二人とも。早く宿をとろう?邪魔になるよ」


夜も更けて眠りについてもおかしくない時間だというのにセンティーアは未だ人の往来が盛んで、三人はそんな人の流れに逆らうように立ち止まって邪魔だった。


ああ、と頷きアレクトの指示通りに歩くキーアの背中を追う。小さな背中だと思った。

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