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おうちに帰るミソロジー  作者: かわのながれ
レンレセルから
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レンレセルの出入国管理は内務省によるものとなっている。一方で魔力列車は国土交通省による預かりとなっている。だが、レンレセルを出入国するには国外行き魔力列車に乗るしかない。よって出入国者のリストは国外行き魔力列車の乗員乗客のリストと基本的には一致する。故に二度手間を避けるために管轄を同一化しようという動きがあった。


結局これは国民管理の漏れというリスクから採決されず現在でも出入国管理は統一されていない。そのため乗車手続きと出国手続きは別口での担当になっており出国手続きの列に並んだ後に乗車手続きの列に並ぶという非常に疲れる手順を踏まねばならない。それだけなら仕方ないかと思うのものであるが、この窓口は併設してあった。出国手続きをしている横で乗車手続きをしているのだから誰もがまとめればいいのに、と心中にぼやきを隠していた。


それはスオとキーアの二人も例外ではない。


「……はい。以上で乗車手続きは終わりとなります。よい旅を」


すました顔で頭を下げる窓口担当の女性係員の慣れすぎてどこか機械じみた声に喉からおかしな吐息が出てきそうになるのを押し留めながらお礼を言って立ち上がると、


「いやー、毎度毎度思うけどまとめてしまえばいいのに!バッカみたい!」


明け透けに思いの丈を吐露する声が。顔をあげた女性のにっこりとした笑顔に思わず口を塞ぐスオであるが、塞がなければならなかったのは己の口ではない。肩にへばりつく桃色をしたすっとんきょうなウサギの口である。


へこへこと頭を下げて列を離れると先に手続きを済ませていたキーアが疲れた顔をして座っていた。旅装に身を固め、小さな子供なら収められそうな鞄を脇に置いている。スオはその鞄に見覚えがあった。


「……その鞄は十年前の?」


「そうだよ。私が入ってた鞄」


細い指先が革製の鞄をなぞる。十年の歳月ですっかりキーアは大きくなってしまった。今ではとてもこの中に収まることはできないだろう。


どのように扱っていいものか、今はまるで分からないが、少なくともこの旅にこれ以上相応しい物もなかった。


自身の感情にけりを着けるための旅を。これから生きていく人生の枝葉を切るための旅に。


キーアは顔をあげた。


「行こっか」


「……ああ」

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