14
友の顔は深刻だった。予想されていた最悪は回避されながら、より深い問題が横たわっているのを見つけてしまったという陰影を刻んでいた。
胸が痛い。いつだってそうだ。誰かを苦しめるような真似ばかりしている。グラグラとした足場の上で片足立ちしているような生き方をしている。
だから伝えなければならない。自分が何のために生まれ落ちた場所に向かうのかを。
「私は私に納得したい。見知らぬ故郷や家族に思いを残したまま人生を生きていくなんて出来ない。これから生きていく自分に自分の選択を納得させずにいたくないの」
一つ一つの言葉がキーアそのものだ。何ら隠すところのない本心だった。
イーチガはそれを受け止めて咀嚼し飲み込むべく尽力した。沸き立つ自分の感情を押さえつけてキーアの思いを斟酌するべく心を砕いた。
波が引き、心が落ち着いてくるとイーチガは努めて穏やかに見えるように微笑んだ。忸怩たるものがあるのを押し隠した所作だった。
「いいと思う。キーアが悩んでいたのは知ってたし……解決出来るんならした方がいいもんね」
困ったように笑うその顔は優しくて暖かい。
「……ありがとう」
他に言葉が見つからない。この友人の優しさに応える誠意をキーアの貧弱な語彙からは見つけ出すことができなかった。
イーチガだけじゃない。レンレセルにはキーアが大切に思うものが沢山ある。簡単に捨てていい場所ではない。
心底ほっとした。
そんな当たり前のことを再認識できたことを。
「イーチガ、今、家に私しかいないの」
「カウツさんは……まあ、いつものこととしてスオは戦団試験か。えーと、アレクトはどうしたの?」
「私はバカだからよく分かんないけど調整がどうとか言ってた」
「ふーん……じゃあ、お邪魔してもいい?」
「泊まってってよ、しばらく会えなくなると思うからお話ししましょ」
その言葉には意図せず、すがるような響きがあった。何を恐れているのか、自分でも分からないキーアの誘いにイーチガは少し思案を巡らせていた。
「分かった。私も話したいこと……相談したいことがあったからね。丁度いいや」
「相談?私に?」
何の力もなければ知恵もない、そんな自分に頼る理由があるのだろうか。キーアの疑問にイーチガはこくりと頷いた。




