考え
《毎日投稿期間中》
ヒロイン目線に戻ります
「ライラ様。体調はいかがですか?」
『えぇ。もうすっかり良いみたい。看病ありがとう、ハル。』
私が寝込んだ次の日。風邪の辛さが嘘みたいに治り、体調は絶好調だった。
治癒魔術の凄さを改めて実感しました。
「それはよかったです。………それで、ライラ様。回復されて早々に申し訳ないのですが、お伝えしたいことがいくつかございます。」
『それは……もしかしてリュカ様のこと?』
私はリュカ様とのデートの際に良いところを見せようと気を張った結果、見事に全て失敗した挙句、自分のダメさ加減に泣き、ハルに助けてもらって逃げてしまったのだ。
リュカ様に見捨てられてもおかしくは無い。
「まぁ、それもあるのですが……実は、王太子様とのお出かけの際、ライラ様が隣国、クロスマリナの暗殺者に狙われたのです。」
あぁ、妙に視線を感じると思ったら暗殺者か。
なぁんだ………ってなるか!!私が狙われる理由なんて見当もつかないんだけど、どーゆーことよ!!
『それは本当なの?私を狙うメリットが分からないのだけど……。』
「はい。ここからが本題なのですが……。」
あ、まだ本題じゃ無かったの?………これよりも重要なことなんて聞きたく無いんだけど。
「その暗殺者を放ったのが2日前に異世界より召喚された聖女だったのです。そして、その誕生の儀が2日後に行われるのですが、その招待者の中にライラ様も含まれております。」
………………ん?2日前に“異世界”からやってきた聖女?
え?なんでその人に私が狙われなきゃいけないの?
私何かした?もしかして日本人で知り合いだったり?………いや、私日本で人に殺されるような恨みなんて無い筈だよ!?それにピンポイントで日本人な訳がないよね!!うん!!そうに違いない!!
『その聖女について詳しく教えてもらえる?』
「はい。その聖女とやらはニホンと言う異世界から………」
『え?マジで?』
「え………?はい。え?」
え?今ニホンって言ったよね?え?まじ?
てか、ハルが急な態度の悪い言葉にビックリしちゃってるよ。ごめんね。
『ごめんなさい。続けて?』
「え……えぇ。それで、珍しい黒髪黒目の14歳の少女で名はハナエ・ハルと言うそうです……っ!!」
私は我慢できず、椅子を蹴飛ばして立ち上がり、机を叩いた。
バァンという音が部屋に響く。
ハルが驚いているが、そんな場合ではない。
『今、ハナエ・ハル。そう言った?』
「はい。」
冷や汗が止まらない。心臓が耳の近くまで移動してきたように煩い。息がうまく出来ない。
「ライラ様っっ!しっかりしてください!!」
なんで、なんであの子がここにいるの?
人違いかも、花江春なんて苗字と名前はありふれてはないけれど、日本を探せばそれなりにいる筈だ。
いや、でも……
『ごめんなさい。ハル。少しびっくりしただけよ。』
「………それならいいのですが。」
ハルは私の大丈夫という言葉を全く信じていないらしく、明らかに疑っているけど、一応引き下がってくれた。
『ねぇ、ハル。私は命を狙われている人のパーティーに呼ばれているのよね?』
「はい。」
『………私、それに参加するわ。』
「かしこまりました。」
『…………ダメだって言わないのね。』
危ないからダメだって言われると思ってたわ。
それに……さっきの行動と、この世界には珍しい名前、『ハル』が異世界の聖女と同じだったこと。
怪しい要素しか無いもの。
「えぇ、もちろん。主人の願いを叶えることこそ、執事の最上の喜びですから。……そのために、己を鍛え、ライラック商会を立ち上げたのです。きっと、ライラ様のお望みを叶えて見せましょう。」
『ありがとう、ハル。』
「いえ。……そうと決まれば、準備をして参ります。体調が良いとは言っても病み上がりなのです。一応ルナを付けますので、余り彼女を困らせないでくださいね。」
『えぇ。勿論よ。』
動くなって言わないあたりがハルに私の気持ちが筒抜けな証拠よね。
「出発は王族やその他の重臣などとともに行くのであれば明日、ライラ様の魔術で行かれるのでしたら3日後の昼から誕生の儀ですのでそれまでに行けば間に合います。勿論、ライラック商会単体で明日明後日に行くのも可能です。……どうなさいますか?」
これは……リュカ様との事を気遣ってくれてるのよね。
………謝るべきなのは分かっているけれど、それを拒否されたらと思うと足がすくむ。どうしよう……。
「明日の昼までに決めた頂ければ構いません。……ゆっくりとお考えください。」
『えぇ、わかったわ。私にできる準備があればなんでも言ってちょうだい。』
「はい。……それでは、失礼します。」
告白してくれた人に、男性関係で気を遣わせるってどうなのよ……私。
あー。考えることが山積みでどこから手をつけたら良いのか分からないっ!!
………とりあえず、聖女のことは一眼見てから決めよう。まだ、私の知っている彼女なのか分からないのだから。……私の娘である花江春なのか、どうか。




