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無音の令嬢  作者: お狐
2章 『無音』の令嬢
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《毎日投稿期間中》


リュカ目線の続きです。

「なっ何をいっている!?私達にはなんの攻撃もなかったぞ!?」


「はぁ、王太子サマも案外おバカなのねぇ。」



やれやれ、といった様子で大袈裟に動くリーフは端的にいって……うざい。

流石に私もこれは許容できない。



「何を言うか!事実を言ったまでだ!」


「だーかーらー!ハルサマがライラ様を放っておける訳がないでしょ!考えなさいよ、もぉ!」



つまり、今回私とライラはハルに守られていたと言うことか?いや、しかし……



「私達にも優秀な護衛がいた。事前に塞いでくれた事には感謝するが、余計なお世話だ。」


「はぁ?………まだ分からないの?アンタ達程度のやつに、クロスマリナの殺し屋集団からライラ様を守れる訳がないじゃない。それに、自分の愛する人が守られる可能性が少しでも上がるなら、頭を下げてでも有効な盾になる勢力に『守ってください』って言ったらどうなの?それとも、頭の下げ方でも忘れたの?」



絶対零度という言葉がしっくり来るような冷たい目線。先程のリーフとは打って変わった態度に流石に驚きを隠せない。思わず後ろに下がってしまう。


なぜ我々が戦ってもいない敵に負けると想定してる?

なぜお前に頭を下げれないのかと怒られねばならない。

苛つく事、認められない事も今リーフが言った事に多くある。


………だが、リーフの言うことはもっともだ。いや、私の護衛だけでは暗殺者に立ち向かえないと言うことは認めたくないが……ライラの手下が言うことだ。正しいのだろう。

それに、ライラック商会には隠密に適した者の集団があると言う。暗殺者を見破るにはこれ以上の味方はいないのでは?今回、街中にも関わらず、私達が感知しない距離で優秀な暗殺者を仕留められる監視網があった筈だ。それを利用しない手はないだろう。



ライラのために頭を下げるのは容易だが、次期国王としては不適切だ。が………



「この通りだ。お前の主人でもあるライラを、私の愛する女性を守る手伝いと、情報提供をしてもらえないだろうか。」



私は迷わず頭を下げた。



「…………頭を上げなさい。言った私が言うのもあれだけど、王太子サマともあろう人がそんなにホイホイ頭を下げちゃだめでしょ?それに、どーせ私達が命をかけてライラ様を守るって分かってるんでしょ?」



呆れているような、驚いているような、微妙な顔でそう言ってきたリーフは矢張り出来る奴なのだと感じた。

先程は本気で怒ってもいなかったし、ある程度の見通しを持った上で私を試したのだろう。

簡単に頭に血が昇り、言葉の端々に含まれた意味を読み取れなかった私が悪い。


それに、大切なもののためには犠牲を悔やむな、と言う教訓まで教えられたしな。



「あぁ、分かっているし、頭を下げなくとも情報はくれるだろうとは思っていた。だが、ご教授頂いた礼だ。ありがたく王太子の脳天を目の裏に焼き付けるんだな。」


「んふふ。ご教授ねぇ。……言い得て妙ね。いいわ、人の意見をちゃぁんと聞ける、いい子の王太子サマには情報とライラック商会の協力をご褒美にあ・げ・る♡」



………気色悪いな。やっぱりいらないと言ってしまおうか。



「暗殺者に情報を吐かせたらしいんだけど、まずはその情報からね。あ、王太子サマはターゲットになってないからね。……ライラ様を狙ったのは教会の連中よ。何故かはソイツは知らなかったけど、依頼者が小声で『全ては聖女様のために』って言っていたのを聞いたらしいわ。だから、ライラ様をクロスマリナの聖女に招待された件は考え直したほうがいいと思うわ。」



そんなバカな。ライラを狙ったのは聖女だと言うのか?そうだとしたら、なぜ此方に来てまもない聖女がライラを狙う?本当に聖女が未来を見て、ライラが害悪になるとでも判断したと言うのか?


いや、考えるのは後だ。まだ報告はあるらしい。



「……続けろ。」


「ええ。その暗殺者に聖女について聞いたんだけだ、クロスマリナではその話題でもちきりらしくて詳しい話を聞けたわ。……聖女はニホンという異世界のハナエ・ハルと言うそうよ。いきなり呼び出されたからか、今すっごく大変らしいわ。あと珍しい黒髪黒目で、可愛い女の子だそうよ。…………ただ、ライラ様のことを何故知っているのかは分からなかったわ。今頃、『月光の白百合』がクロスマリナで探っているだろうからちょっと待ってね。」



ニホン……。『ハル』と言うのは珍しい響きだと思っていたが、聖女にと同じ名前?そんな偶然あるか?



「その『ハル』と言う名前は偶然だと思うか?」


「もしかしてハルサマを疑ってるの?」


「あぁ。」



苛ついた顔をしていたリーフだが、私があっさりと認めるとまたも呆れた顔をされた。



「ほーんと、素直ねぇ。…………正直、私も違和感は感じてるわ。私の勘もナニかあるって訴えてくる。だけど、ハルサマのライラ様への想いは半端なものじゃないのは知ってるでしょ?だから、この件については関わりは無いと思うわ。」



ハルサマならこんな下手なことしないだろうしね、と言うリーフの言葉は信じてもいいだろう。それに、ハルがこんな下手な事をしないって言うのは妙な説得力がある。



「そう……だよな。」


「…………だけど、この件について関わりがあるであろう人物に心当たりがあるわ。」


「っ!!それを早く言わないか!!」


「私だってこんな事考え付きたくなかったのよ。…………ハルサマの名付け親であるライラ様よ。………私たちの主人が関わっているような気がするわ。」


「………なるほど、な。ハルの名付け親はライラだったのか。……………これについては少し考える時間が欲しい。まだ手に入れた情報があるのか?」



正直、私もそんな気がする。

だが、これは後回しだ。ライラが自分を自分で狙わせるような事はしないだろうから、これをライラが仕組んだということは無いだろうし、第一、彼女が私たちを困らせるような真似はしない。



「そうねぇ。言うべきか迷ったけど、まぁいいでしょう。……いま、ライラ様が体調を崩されて寝込んでいるわ。場所は教えないし、詳しい事も教えないけど。」


「…………っっ!!なんと言う事だ。私が彼女の機嫌を損ねさせてしまったことが関係しているのだろうか。」


「まぁ、他にもあるだろうけど、それしか考えられないわよね。ライラ様、目が溶けそうなくらい泣いてたらしいし、熱を出してもおかしく無いわよ。」


「ライラは泣いていたのか!?!?」


「ちょお!近い近い、怖いっ!剣幕がすごい!!揺すらないでっっ!……そうよ!考えても見なさい!!私は理由絶対に教えないからね!!1人で悶々と考えるがいいわ!!それじゃあね!!情報が入り次第またくるから!!せいぜい、我が主人を泣かせた事を、それを知らなかった事も含めて反省しなさい!!」



私がリーフに掴みかかったら、早口で嫌味と次回の訪問についてと嫌味と嫌味を言って、泡のように消えた。


先ほどまで実態があったのも分からないくらいにスカッと消えてしまった。




だが、それよりも…………なんと言う事だ。私はライラを泣かせた挙句、体調まで崩させてしまったのか?


あぁ、ライラ。何故なんだ?

君は何故、『ハル』と言う名前を思いついたんだ?

何か聖女と関わりがあるのか?

何故、泣いているのか?

寝込んでいるのなら、私が隣で看病をしてあげたいと思うのは、君が何故泣いているのかわからない察しの悪いな男には贅沢だろうか?





そばに寄り添って、愚鈍な私に教えておくれよ、ライラ。

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