失敗
《毎日投稿期間中》
今回はリュカ目線のお話です。
護衛たちにライラの実力を見せるために、護衛リーダーのモスダムにライラの結界を攻撃させた。
そうしたら、モスダムの剣は折れてしまったが、ライラの結界はびくともしなかった。それはそうだろう。ライラは素晴らしい魔術使いなのだ。
私も追いつくのは無理かもしれないが、少しでもライラに相応しくなるように精進しなければ。
そう思っていると、ライラは剣を折ってしまったのを申し訳なく思ったのか、剣を直すことを買ってでた。
ライラは土魔法の派生である、鍛治の技術まで持っているのかと感心していると、剣が光ったと思った次の瞬間、元通りの一振り剣が現れていた。
信じられるだろうか。
折れた剣がパズルのピースを嵌めるように、ピッタリと折れた部分がくっついたのだ。それもかなり勢いよく折れたために、破片が所々無くなっているところもあるのにも関わらずだ。
これはきっと鍛治の技術ではない。『再生』とでもいうべき魔法だ。私は見たことも聞いたこともない。
つまり、老子の元で学んだ失われし古代の魔法なのだろう。
こんな魔法があると知られたら、ライラの身に何か起こってしまうかもしれない。あまりにも有用すぎる。
……いや、ライラの身には何も起こらないだろう。彼女は強いから。しかし、その周りのものはどうだろう。
ライラック商会の者やライラと親しい者などの身に何かあったら?
彼女はどうなってしまうのだろう。
……考えたくもない。
どの分野でも、力と呼ばれるものを持っている者は自分ではなく、いつの間にか周りを壊されていることが多い。
敵わないと分かっているから、周りの弱者を狙う。
遠回しのメンタル攻撃、そして、最もダメージを与えることができる有効な攻撃。
どんなに、力を持っていても万能ではないのだ。
それならば、私はどうするべきだ。
彼女を、彼女の周りも、彼女の心も守るべきだ。
この世の全てから、私が、守るのだ。
「………………ライラ。それが何の魔法なのか、私には分からない。けれども、安易に使っては行けないよ?あまりにも有用すぎる。」
するべき事は沢山あるけれど、まずは自分の規格外さに気付いていないライラに注意をする。
「ここにいる全員、今ここで起こったことは忘れなさい。君たちのこと、信じているからね?」
つぎに、特に近くにいる人への圧力。
そして次は……
「王太子様?今のはあまりにライラ様の御心に寄り添わない言動だったのでは?許容できませんね。あなたが、ライラ様をリードするという約束で私は今日のデートを許したのです。………それなのに、どのようなおつもりでしょうか?」
私の思考は、ゆったりと落ち着いた男の声によって遮られた。よくわからない言葉と共に。
「ライラ様。帰りましょう?魔法で隠しても無駄ですよ。私にはお見通しです。」
ライラが帰る?なんでだ?少しばたばたするが、レストランの客の反応をみて、付近に潜んでいる者がいないかを確認したら、ほぼ情報規制は完了だ。時間はかからない。
それに、なぜここにハルがいる?
なぜハルにこのようなことを言われなければならない。
帰るか帰らないかはライラが決めるものだろう?
今日の前半はライラがライラでないようだったから、楽しんでもらえたのかは分からない。女心は難しいものだから。
しかし、観劇からここまで完璧にエスコートしたのだ。ライラも少しいたずらをしたら怒られたが、楽しそうにしていた。
それを、なぜ執事がとめる?
だから、私はそのように聞いたのだ。そうしたら、
「王太子様、確かに迂闊な行動をしたライラ様の情報規制という面では、正しい行動だったと言えるでしょう。しかし、ライラ様のお気持ちは?役に立とうと思って使った魔法……それも、私たちであれば一生使えないような大魔法を使って、剣をもとに戻したら、かえって周りに迷惑をかけてしまった。でも、この方は純粋な親切心でやっているのです。肯定して差し上げて、裏から情報規制をするのが、男性の役割というものなのではないでしょうか。」
………は?どういう事だ?ライラは私の言動で傷ついてしまったのか?
いや、そんなはずはない。状況を瞬時に把握し、適切な行動をした。
あの行動をライラが親切心でやっている事はわかっている。ライラが他人に力を見せびらかすような女性でないことなんてわかっているに決まっているだろう?
肯定?何を肯定するんだ?あの行動が人智を超えた素晴らしいものだと理解し、肯定しているからこその行動をとっているのだ。何が間違っている?
「エスコートとして、女性を守るのは当たり前です。しかし、仕事仲間ではないのですから、女性のお気持ちを考えて行動されては?………ということで、今日ライラ様は王城にはお帰りになりませんので、国王様にはこちらからご連絡させていただきます。」
仕事仲間?そんな風に思っているはずがないだろう!!
ライラは私の大切な女性だ。普段仕事を共にしている臣下達と比べ物にならないくらいに。
だからこそ、王太子という立場を振りかざしてライラを守ろうとしているんだ。
ライラの気持ちを考えているに決まっているだろう?
彼女は自分自身よりも周りを大切にする人だ。だから、彼女が悲しまないように先手を打とうとしている。
王城に帰らない??なぜ………
あ…………
ライラはハルに連れていかれてしまった。
横抱きされている時も暴れていなかった。
つまり、それを受け入れたということか?
なぜだ?どこが悪かったのだ?
なぜ私は無理やりにでも、ハルを止めなかった?
どこが自分でも気付いていないところに思い当たる節でもあるのだろうか。
分からない。何も分からない。
教えてくれ、ライラ。
置いていかないで。




