夜の逃飛行
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お付き合い、よろしくお願いします。
「………………ライラ。それが何の魔法なのか、私には分からない。けれども、安易に使っては行けないよ?あまりにも有用すぎる。」
そう言いながら、険しい顔をするリュカ様。うぅ。役に立てると思ってやったら、全部裏目に出ちゃってる気がするよ。さっきもモスダムに迷惑かけたし。
………リュカ様には怒られるし。
「ここにいる全員、今ここで起こったことは忘れなさい。君たちのこと、信じているからね?」
……あーはい。わかります。言ったら殺すってことですよね。
……いや、本当、ご迷惑かけて申し訳ない。
もちろん、リュカ様。私のことを心配してくださってるのはわかりますし、私の命を最優先に考えてくださっているのもよーくわかります。
でも、私が実年齢よりもちょぉっとだけ歳を取っていなかったら、たぶん、ギャン泣きしてましたよ?
今でも少し泣きそうですもん。
目がうるうるしてる。溢れそうだから上向きたい。
役に立とうとか、いいとこ見せたいって思った時に全部失敗すると、泣きたくなるもん。
あ、やばい。泣く。
「王太子様?今のはあまりにライラ様の御心に寄り添わない言動だったのでは?許容できませんね。あなたが、ライラ様をリードするという約束で私は今日のデートを許したのです。………それなのに、どのようなおつもりでしょうか?」
そこにいたのは、いつものようにピシッと制服を着こなした、ハルだった。
優雅に手を胸にあて、微笑を浮かべて歩いてくる姿は、どこか威圧感があって怖い。
「……………ハル?なんでここに……っっ!」
あ、涙が決壊した。やばい、止めないと。
いや、幻影魔法で上から書き換えれば大丈夫かな?
………よし、セーフ。誰も気付いてない。
「ライラ様。帰りましょう?魔法で隠しても無駄ですよ。私にはお見通しです。」
うぇ、バレてる!というか、あまりにもタイミングが良すぎて怖い。
それに、帰るなんてできるわけがないでしょう?
「できますよ。ライラ様がお望みであれば。……それに、王太子様がライラ様を責めるわけが無いじゃないですか。このようなものは、惚れた方が負けなのです。」
「ちょっと待ってくれないか、ハル。私がいつリードを失敗したと言うのだ?」
あ、リュカ様の魔力が揺れてる。……やっぱり怒ってるのかな。
「王太子様、確かに迂闊な行動をしたライラ様の情報規制という面では、正しい行動だったと言えるでしょう。しかし、ライラ様のお気持ちは?役に立とうと思って使った魔法……それも、私たちであれば一生使えないような大魔法を使って、剣をもとに戻したら、かえって周りに迷惑をかけてしまった。でも、この方は純粋な親切心でやっているのです。肯定して差し上げて、裏から情報規制をするのが、男性の役割というものなのではないでしょうか。」
「…………」
「エスコートとして、女性を守るのは当たり前です。しかし、仕事仲間ではないのですから、女性のお気持ちを考えて行動されては?………ということで、今日ライラ様は王城にはお帰りになりませんので、国王様にはこちらからご連絡させていただきます。」
「ま、まて!!」
「待ちません。では。……ライラ様、失礼いたします。」
へ?………うやぁぁ!!
お姫様抱っこ!?私重いよ!?やめてぇぇぇ!!
ばたばたすると余計重くなりそうで、暴れることもできず、落ちそうでハルにつかまることしかできない。
そんなことをしていると、ハルが悪戯っ子のように笑って、こう言った。
「いえ、羽のように軽いですよ?」
………っっひぇ。ときめきがヤバイ。こんなことリアルで言われるとおもわかなかった。
もう心が読まれるのが怖いとか、どうでも良くなってきたよ。
というかぁぁぁ!!うわぁぁぁっ!!空飛んでるぅ!いや、確かに私もできるんだけど!!
なんか、風圧とかが全部カットされてて、緻密な魔法使ってるんだなぁって思うと……なんか恥ずかしいっ!!
「あなたは私の大切な人ですから。」
……っぅぁあ!!というか!!あんな風に場を辞していいわけないでしょう!!つい、何も言えないで黙ってたけど、さすがに……
「勝手に動いてしまって申し訳ございません。ですが、傷ついたライラ様を放っておくことはできなかったのです。全てはこの私の責任でございます。あとの事は全て私が処理いたしますので、お許しください。」
……ハルのこと、怒れるわけがないでしょう。
「……はい。ありがとうございます。必ず、ライラ様の望む通りにいたしましょう。」
『それに、私がいけないのよ?行動は迂闊だし、周りに迷惑をかけるし。リュカ様は悪くないわ。尽く失敗した私がいけないのよ。』
そう本心から思っていても、こうやって言葉にすると、なぜか泣きたくなるのよねぇ。うん。泣きそう。
「そう、なのかもしれません。しかし、今回ばかりは、そのようなわけにいかないのです。」
う、肯定されると泣きそう。でも否定して欲しいわけでもない。……本当面倒くさい女ね、私。
それに、今回ばかりはってどういうことかしら?
「今回のライラ様とリュカ様のデートで、私や他の者が従者としてついていかない代わりに、リュカ様に完璧なエスコートを求めました。主人が気持ちよく過ごせるための従者ですからね。勿論リュカ様にもメンタルの部分にも気を使っていただくよう、言っておりましたが、今回はこのような有様です。……ですから、今回あの場を辞したのは、ライラ様のせいではないですよ。」
優しい眼差しでこちらを見るハルの前で泣くのはいやだけど、ブワッと涙が溢れて止まらなくなった。完全に私が悪いのに、こうやって甘やかしてくれる人がいるからよくないのよ。こうやって、心が弱っているときに自分の行いを肯定されると、人は弱い。コロッといってしまいそうになる。
それに、幻影魔法で見えないはずの涙を拭うのは反則だ。
そんなふうに、優しく微笑むのもずるい。
この日は思ったよりも、疲れていたようだ。
月と星が煌めく空の旅の途中で、私は眠りにおちた。




