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無音の令嬢  作者: お狐
2章 『無音』の令嬢
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夜の逃飛行

毎日投稿始め〼


お付き合い、よろしくお願いします。

「………………ライラ。それが何の魔法なのか、私には分からない。けれども、安易に使っては行けないよ?あまりにも有用すぎる。」



そう言いながら、険しい顔をするリュカ様。うぅ。役に立てると思ってやったら、全部裏目に出ちゃってる気がするよ。さっきもモスダムに迷惑かけたし。

………リュカ様には怒られるし。



「ここにいる全員、今ここで起こったことは忘れなさい。君たちのこと、信じているからね?」



……あーはい。わかります。言ったら殺すってことですよね。

……いや、本当、ご迷惑かけて申し訳ない。


もちろん、リュカ様。私のことを心配してくださってるのはわかりますし、私の命を最優先に考えてくださっているのもよーくわかります。

でも、私が実年齢よりもちょぉっとだけ歳を取っていなかったら、たぶん、ギャン泣きしてましたよ?

今でも少し泣きそうですもん。

目がうるうるしてる。溢れそうだから上向きたい。

役に立とうとか、いいとこ見せたいって思った時に全部失敗すると、泣きたくなるもん。


あ、やばい。泣く。



「王太子様?今のはあまりにライラ様の御心に寄り添わない言動だったのでは?許容できませんね。あなたが、ライラ様をリードするという約束で私は今日のデートを許したのです。………それなのに、どのようなおつもりでしょうか?」



そこにいたのは、いつものようにピシッと制服を着こなした、ハルだった。

優雅に手を胸にあて、微笑を浮かべて歩いてくる姿は、どこか威圧感があって怖い。


「……………ハル?なんでここに……っっ!」



あ、涙が決壊した。やばい、止めないと。

いや、幻影魔法で上から書き換えれば大丈夫かな?

………よし、セーフ。誰も気付いてない。



「ライラ様。帰りましょう?魔法で隠しても無駄ですよ。私にはお見通しです。」



うぇ、バレてる!というか、あまりにもタイミングが良すぎて怖い。

それに、帰るなんてできるわけがないでしょう?



「できますよ。ライラ様がお望みであれば。……それに、王太子様がライラ様を責めるわけが無いじゃないですか。このようなものは、惚れた方が負けなのです。」


「ちょっと待ってくれないか、ハル。私がいつリードを失敗したと言うのだ?」



あ、リュカ様の魔力が揺れてる。……やっぱり怒ってるのかな。



「王太子様、確かに迂闊な行動をしたライラ様の情報規制という面では、正しい行動だったと言えるでしょう。しかし、ライラ様のお気持ちは?役に立とうと思って使った魔法……それも、私たちであれば一生使えないような大魔法を使って、剣をもとに戻したら、かえって周りに迷惑をかけてしまった。でも、この方は純粋な親切心でやっているのです。肯定して差し上げて、裏から情報規制をするのが、男性の役割というものなのではないでしょうか。」


「…………」


「エスコートとして、女性を守るのは当たり前です。しかし、仕事仲間ではないのですから、女性のお気持ちを考えて行動されては?………ということで、今日ライラ様は王城にはお帰りになりませんので、国王様にはこちらからご連絡させていただきます。」


「ま、まて!!」


「待ちません。では。……ライラ様、失礼いたします。」



へ?………うやぁぁ!!

お姫様抱っこ!?私重いよ!?やめてぇぇぇ!!


ばたばたすると余計重くなりそうで、暴れることもできず、落ちそうでハルにつかまることしかできない。


そんなことをしていると、ハルが悪戯っ子のように笑って、こう言った。



「いえ、羽のように軽いですよ?」



………っっひぇ。ときめきがヤバイ。こんなことリアルで言われるとおもわかなかった。

もう心が読まれるのが怖いとか、どうでも良くなってきたよ。


というかぁぁぁ!!うわぁぁぁっ!!空飛んでるぅ!いや、確かに私もできるんだけど!!

なんか、風圧とかが全部カットされてて、緻密な魔法使ってるんだなぁって思うと……なんか恥ずかしいっ!!



「あなたは私の大切な人ですから。」



……っぅぁあ!!というか!!あんな風に場を辞していいわけないでしょう!!つい、何も言えないで黙ってたけど、さすがに……



「勝手に動いてしまって申し訳ございません。ですが、傷ついたライラ様を放っておくことはできなかったのです。全てはこの私の責任でございます。あとの事は全て私が処理いたしますので、お許しください。」 



……ハルのこと、怒れるわけがないでしょう。



「……はい。ありがとうございます。必ず、ライラ様の望む通りにいたしましょう。」


『それに、私がいけないのよ?行動は迂闊だし、周りに迷惑をかけるし。リュカ様は悪くないわ。尽く失敗した私がいけないのよ。』



そう本心から思っていても、こうやって言葉にすると、なぜか泣きたくなるのよねぇ。うん。泣きそう。



「そう、なのかもしれません。しかし、今回ばかりは、そのようなわけにいかないのです。」



う、肯定されると泣きそう。でも否定して欲しいわけでもない。……本当面倒くさい女ね、私。

それに、今回ばかりはってどういうことかしら?



「今回のライラ様とリュカ様のデートで、私や他の者が従者としてついていかない代わりに、リュカ様に完璧なエスコートを求めました。主人が気持ちよく過ごせるための従者ですからね。勿論リュカ様にもメンタルの部分にも気を使っていただくよう、言っておりましたが、今回はこのような有様です。……ですから、今回あの場を辞したのは、ライラ様のせいではないですよ。」



優しい眼差しでこちらを見るハルの前で泣くのはいやだけど、ブワッと涙が溢れて止まらなくなった。完全に私が悪いのに、こうやって甘やかしてくれる人がいるからよくないのよ。こうやって、心が弱っているときに自分の行いを肯定されると、人は弱い。コロッといってしまいそうになる。


それに、幻影魔法で見えないはずの涙を拭うのは反則だ。


そんなふうに、優しく微笑むのもずるい。





この日は思ったよりも、疲れていたようだ。

月と星が煌めく空の旅の途中で、私は眠りにおちた。

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