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無音の令嬢  作者: お狐
2章 『無音』の令嬢
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英雄譚

先程のトラブルで遅れてしまったので、少し急いでホールに入りました。

そして、最初に目に入ってきたのは……



『わぁ、とても素敵なホールですね!』


「あぁ、私も来るのは久しぶりなのだけど、いつ来ても圧倒されるよ。」



そんな会話をしている私たちの前に広がるのは、彼の有名なオペラ座のような金の装飾が至る所に施された、重厚感のあるホール。

天井や柱の細部に至るまで、細かで優美な彫刻が刻まれています。


私が美しい建築に見惚れていると、リュカ様に笑顔で手を差し伸べられました。

周りを見れば、皆さん手を繋ぎ、腕を組んで席に向かっています。


………これはそういうことだよね?


私はちょっと恥ずかしかったけど、リュカ様の手に、そっと自分の手を置いて、歩き出しました。………年甲斐もなく恥ずかしくて、顔を上げられないけど。



「さぁ、お姫様。ここが今日の席だよ。……ねぇ、顔を上げて?ライラの恥じらう姿も見たいんだ。」



………あーーーーもーーーー!!そうやってすぐ小っ恥ずかしい事を言う!!!そーゆーのよくない!よくないよ!!

 


そう言われて顔を上げてみると、本当にホールのど真ん中の、これぞ王族の席!!と言う感じの余りにも豪華なものでした!


……いや、ね?分かっていたよ?分かっていたけど、気がひけるよね。流石に。だって、ここ王族しか座っちゃいけないとこでしょ。絶対。



「ふふふ。気に入ってもらえたようで何よりだよ。さぁ、特等席だよ!楽しんで観ようじゃあないか!」



……なんか、リュカ様ちょっと意地悪になった?気のせいかな?



「気のせいだと思うよ。」


『うぇっ!なんで分かったんですか!?』


「………ライラ、流石に『うぇっ』は傷つくよ?」


『あ…すみません。つい、条件反射で……。』


「……………ライラがわかりやすいだけだと思うよ?私は気持ち悪くないもん……。」



王子が『もん』ってどうなのでしょうか?

本気で傷ついたらしいリュカ様は、しょんぼりしながら席につきました。



「さぁ、始まるよ。席について。……カッコよくエスコートしたかったのに。」


『何か言いました?』


「いや、何でもないよ。」



気になるので、まだ追求下かったですが、ビーっと開始のベルが鳴ってしまったので仕方なく私も座りました。








《物語の始まりは1人の騎士がとあるお姫様と出会ったことから始まりました。》


そうやって、物語の前文が朗々と紡がれ始めました。


物語はありきたりなもの。

ドラゴンに連れ去られたお姫様を騎士が助けようと、たどり着くまでの困難を乗り越えて、ドラゴンを倒し、栄光を手に入れる物語。


それでも、魔法を併用した臨場感がある戦闘シーンや、緊迫した雰囲気、騎士が英雄になった時の高揚感などが、ダイレクトに伝わってくるような、エフェクトとして魔法を効果的に使った、とても素晴らしい劇でした。



……でも何故か、騎士が英雄となり、伝説の騎士団長となった事にしか触れられておらず、お姫様と結婚した様子もないし、喉に刺さった小骨のような違和感がありました。







そして、物語が終わり、わらわらと人々がホールから出ていく中、私達もディナーに向かいました。



『凄かったですねぇ。戦闘シーンの表現も魔法を使って臨場感たっぷりの表現で目が離せなかったです。』


「あぁ、そうだね。特にドラゴンの幻影魔法を使った幻影は素晴らしかった。咆哮もビリビリと肌が粟立つようだった。」




そうこう話している内に併設されているレストランに着きました。



『わぁっ!このレストランはホールを模した物になってるんですね!とっても素敵です!』


「あぁ。そうだね。……さて、お手をどうぞ?ライラ姫?」


『……リュカ様、その揶揄い方気に入ったのですか?』


「ふふふ。だって君が可愛いんだもの。」



にこにこと嬉しそうに……いや、顔がいいからごまかせてるけど、これはニヤニヤだな……まぁ、そんな顔をしながら言われるとムカつくけど……それ以上にカッコいい!!


流石王子!!めちゃめちゃ様になってる!



仕方ないから手を取りました。……絶対顔が真っ赤だと思うけど。




レストランのドアをドアマンが恭しく開けた先には、ズラァッと両脇に30人ずつ等間隔に並んで、45°ピッシリ揃ってお辞儀をしているウェイターらしき人達が居ました。



………え?今からこの中に入らなきゃ行けないの?

うそでしょ?





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