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無音の令嬢  作者: お狐
2章 『無音』の令嬢
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マヨネーズ

『じゃあ、明日の8と半分の鐘の頃に調理場に卵を持ってきてくれるかしら?』



かくん、と首を傾げてキッドにお願いしてみる。……決して、自分の今の容姿が可愛いからって、調子に乗ってるわけじゃないんだからね!



「う、ウスッ!」


「キッドぉ?」


「はっ!はいっ!了解であります!」



明日はソース作りについてじっくりと研究できそうね……東屋が吹っ飛んだ(リュカ様の暴走)のお陰で学園が休園になってしまっただけっていうのが残念だけどね。









そんなこんなで翌日の8の鐘の頃、私は準備をするために調理場に来ました。勿論……というか、何故か?ハルは私と一緒にいるけど。



『じゃあ、卵が届くまでに他の材料と器具の準備をしましょう。』


「「かしこまりました。」」



あ、料理人たちは料理長を除き退出してもらっています。一応、これからの主力商品になるから情報の流出は防がないといけないし、リュカ様もこれから来るからね。礼儀がなってない人……は王宮の料理人だし少ないと思うけど、リスクは少ないに越したことはない。



というわけで、環境も整ったし、準備開始!


料理長に、塩、酢、オリーブ油……によく似たエリヤの種油を用意してもらい、ボールと泡立て器……は無かったため、ハルに鉄塊を持ってきてもらって、自分で錬成魔法で作ったよ。電動は無理だから魔導式となっておりまーす。


案外時間が余ったからね。道具作りを凝ってしまった。



そんな風に有意義な時間を過ごしていたら、キッドの卵デリバリー。8と半分の鐘にジャスト。時間の管理はしっかりしてるんだなぁと、感心してしまった。



「ライラ様、ご機嫌ウルワシュウございマス。《虹の不死鳥のたまご》をお届けにマイリマシタ。お納めクダサイ。」



丁寧にお辞儀をしながら、何処かぎこちない敬語を使い、虹色に輝く宝石のような、美しいバスケットボールほどの大きさの卵を3つ両の手に抱えていた。



『こんなにも《虹の不死鳥のたまご》が美しいと思わなかったわ!本当に宝石のようね!ありがとう、キッド!……ところで、私に対してそんな丁寧な態度を取らなくても大丈夫よ?普通にしてくれていいわ。』


「へ?いや、でも……」


『いいのよ。私はそんな高貴な人では無いわ。そんなに敬われると困ってしまうわ。』


「うっ…じゃ、じゃあ、これから敬語ちゃんとするから、それまでは普通に話す……よ。」


『ええ!嬉しいわ!』



ちらちらと、何処かに目線を彷徨わせながらも、私のお願いを聞いてくれた。優しい子ね。



『じゃあ、始めましょうか。卵は普通に使ってもいいのかしら?』


「そうっすね。殻が少し硬いっすけど、中身は変わらないっす。」


『そうなのね……ちょっと割ってしまうのがもったいないけれど、作り始めましょうか。』




まずは、虹色に輝く卵を割る。硬さはガチャガチャのカプセル位の硬さで、かなり硬かったけど、今世の私の敵では無い。余裕だった。


濃い黄色に輝く直径がハンドボールほどの大きな黄身と卵白を魔導ミキサーで混ぜて酢、水、塩、オリーブ油を加えて混ぜていく。


……卵1つがとても多いから、かなりの量ができたわね。



『できたわ!みんな、味見をしてみて。』



勿論、私も出来栄えがきになるから味見をする。

………うん、美味しい!すごく濃く卵の味がして高級感がある。しかも、なんか旨味?……よく分からないけど、地球のよりもずっと美味しい。


ハルも前のソースと味が変わっているのがわかったようで、驚きながらも美味しそうに食べていた。


白い謎のソースを料理長とキッドは少し不思議そうに眺めてから口に運んだ。



「………っっ!!!こ、これは!美味しいっっ!しかも、何にでも合わせやすそうだ!パンにもサラダにも、肉、魚……これは素晴らしい!」


「うっめぇ!!マジうまいんだけど!」



わぉ、流石腐っても王宮の料理長。合わせると美味しいものにまで考えが回るのね。……まぁ、作る料理はこの国らしく微妙な美味しさだけど。

キッドの食レポは想像どうりね。



『喜んでくれて嬉しいわ。何か改善点はあるかしら?』


「そうですね。とても素晴らしいお味ですが、この国のものは酸味を好みます。もう少し、酸味を加えたら宜しいのではないかと愚考します。」


『なるほど……では、リュカ様がいらっしゃった時に手直しをいたしましょう。』



そうやって改善点を考えているうちに、コンコン、とドアがノックされた。



「ライラ、失礼するよ。」


『リュカ様。おはようございます。早くからご足労いただき感謝いたします。』


「あぁ、おはよう。……ライラ?私に向かってそんなに気を使わないでおくれ。私がライラを巻き込んでしまったのだから。」



困ったような笑顔を浮かべながら、リュカ様は私に()()()をする。……あぁ、命令ならやりやすいのに、この方は優しすぎて、自分を傷つける。


……だから。



『リュカ様が、そうおっしゃるのであれば。』



私にはこう答えるしかない。形だけだとしても。


ふっ、と悲しい顔をするリュカ様。分かっています、貴方の望むことは。でも、私には与えることができないのです。

……どうしようもできない。


そんな微妙な空気とグルグルと回る考えを一度切り替え、パッと顔を上げ仕切り直す。



『では、魔法のソース《マヨネーズ》を作る工程をお見せいたします。』



………ってね。


はい、では始めます。

先程の工程に加え、改善点である酢の量を増やすことや、硬さの調節などを変えながら、リュカ様の質問に答えていく。魔道具のことや、量産の方法について、容器についてなど。


そんな考えがまとまってきた頃に、改☆マヨネーズが出来上がった。



『これで完成となります。実食に移りますので、少々お待ちください。』



流石にスプーンで渡せるような相手じゃあないからね。



「いや……盛り付けなんて面倒くさいだろう?このままスプーンで頂いてもいいだろうか?」



へ?いや、でも……



「では、ライラ様。先程スティック状にした野菜をお使いになってはいかがでしょうか?」


『そうね。ハル、よろしく。』



ハルーーー!!ナイスアイデア!!天才!流石は私の執事!!……リュカ様は不服そうだけどね。







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