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無音の令嬢  作者: お狐
2章 『無音』の令嬢
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お化けっ!?

「魔法の……ソース?それはどの様なものなんだい?」


『ふふ。百聞は一見にしかず。明日現品をお見せしましょう。』



……やっぱり、王子を調理場に連れて行くのはマナー違反だからね。私が作りましょう。



「……いや、よかったら私も見学してもいいだろうか?ライラだけに任せるのは、巻き込んだ側としては如何なものかと思うんだ。」



えぇー逆に困るけど……でも、原価とかもあるからね。私の常識だけじゃ不安なんだよ!きっと!……あれ?王子に原価とかの常識ってあるの?……まぁ、いいか。それを望んでいるのであれば。



『分かりました。では、明日9の鐘の頃に伺います。』


「あぁ、よろしく頼むよ。……こんなことに巻き込んでしまってすまない。きっと、君の期待にも答えて見せるから。」



キッと、鋭く決意を秘めた目は、私にはとても眩しく感じた。こんなリュカ様のお手伝いができるのなら、恩を返すことができるのなら、私にとっては幸せな事なのに。……頭なんて下げなくていいのに。



『いえ、私がお役に立てるのであれば、これに勝る喜びはありません。』


「そうか……。ありがとう。では、おやすみ、ライラ。」


『お休みなさいませ。リュカ様』



カーテシーを綺麗に返してから、リュカ様の自室を出た。正面にあった窓から、満点の星空が輝き、少しの間見とれていたら、窓の上方からニュッと黒い影が出てきた。


ニュッ………?



ひゃぁーーーーーーーーー!!!!っと思いっきり叫んだ……いや、叫べてないけど。取り敢えず、お化けは無理!絶対無理っ!逃げ……腰抜けた!動けない!どうしよう!あれ?これって金縛り!?うわぁーーーーーー!!



「ちょ、ライラ様、俺っす。俺。月光の白百合団団長、キッドっす!!」



ふぇ?キッド?あ!あの時の赤毛の少年か!!………なんだぁ、お化けじゃなかったぁ。うぅ。


あ、あれ?涙が、涙が止まらない。しかも動けない。ひぇっ!



「ちょ、ライラ様!?どうしたんすか?怖かったっすね!すみません!泣かないで!!ハル様に殺されるから!お願いしますーーー!!」



涙を止めたくても、止まらない私をキッドが焦りながら慰めて(?)くれた。優しいのね。………ひいっ!殺気!?なにこの殺気!?急に背後に現れた!?


キッドも動きを止めて、2人でギギギっと油をさしていないおもちゃの様に後ろを振り返ると、そこには鬼がいた。


「キッドぉ?なにをしているのでしょうかぁ?わたしにもおしえていただけますぅ?……ライラ様。お部屋にお運び致します。少々、お体に触れます。失礼。」



と、ハルはキッドに向ける目は鬼のまま、私には神父の様に優しい目を向けて、言葉を言い終わったと同時に、私をお姫様抱っこした。……正直、私に向けられてるわけじゃないのに、あの温厚なハルが鬼の形相をしていたのがかなり怖い。よって、私は急なお姫様抱っこに身じろぎもせず、ドナドナされる家畜の様に静かに運ばれたのだった。






所変わって、私の部屋。


私は1人掛けのふわふわのソファに座り、その隣の床に正座で死んだ魚の目をしたキッドが座っている。首の角度は90°カクンと、真下に傾けている。


そして、キッドの前にはハルが。


それもただのハルじゃない。ハル、鬼バージョンだ。



「ライラ様?今失礼なことを考えませんでしたか?」



えっ!?なんで分かったの!?



「分かります。あなたの執事ですから。」



うーん。なんかもう、どうでもいいや。



『じゃあ、キッドはなにもしてないって分かってるんでしょ?そんな怒らないであげてよ。私が驚き過ぎたのがいけないんだから。』



キッドから、すごくキラキラとした目線を感じる。例えるなら、砂漠でオアシスを見つけた様な。



「はい。それは存じております。念のため、確認をしておこうと思いまして。ですが、例えそうだったとしても、それはキッドの配慮不足が招いた結果です。……そうですよねぇ?キッドぉ?」



ガクンと、今度はハルが、キッドの方に顔を向けたら、光の加減ではありえないところに、影が入って私からでは、ハルの表情は見えない。



「えぇ。そうでゴザイマス。まことに申し訳ゴザイマスです。」


「言葉遣いは?」


「ひいっ!……直すデス。」



……キッドがかなり怯えてる。やんちゃな男の子って感じで物怖じしなそうなのに……。ハルは絶対に怒らせない様にしよう。そうしよう。



「ライラ様。私の教育が至らないばかりに、申し訳ございませんでした。」


『全然気にしてないわ。だから、ね?怒っちゃだめよ?』


「あぁ、ライラ様はお優しいですね。……そうでした。キッド何か報告があったのではないのですか?」


「えぇ。そうでゴザイマス。……ハル様からライラ様がこれから大量に卵が必要になると聞いたから、取りに行ってたんだよ…です。そしたら、珍しい《虹の不死鳥のたまご》があったから、虹色に光ってる間にライラ様に届けようと思ったから、急いだんだよ……です。」



《虹の不死鳥のたまご》?なにそれ?なんか、名前からしてすごそうだけど。……というか、その気持ちが嬉しいよ!キッド!!私に食べさせようとしてくれたんだよね!?可愛すぎでしょ!!………ん?というか、さっき話したばっかりだよね?卵が必要になるってことは。ハル?なんで?



「《虹の不死鳥のたまご》とは、その名の通り、不死鳥が産み落とした卵のことです。しかし、それが虹色になるのは取ってから3時間の間のため、この国では、不死鳥の生息地から考えると、《虹の不死鳥のたまご》を食べることは不可能でしょうね。とても美味しいと評判ですが。……あと、国王様おリュカ様第1王子様の考えの傾向と、ライラ様の知識から考えて、昔作ってくださった、あの白いソースが頭に浮かんだため、ライラ様が王に謁見している間にキッドに命じたまでです。……こんなに早く取ってくるとは思いませんでしたが。」


『えっ!それじゃあ、どうやってこんなに早く取ってきたの?』


「彼はテイマーなのです。なので、恐らく不死鳥をこの付近に連れてきたのだと思います。……違いますか?」


「いいえ、合ってますデス。」



ふふっ。あれだけシュンとしてたけど、少しドヤ顔になってて可愛い。……そっか。私の為にそんな大変なことをしてくれたんだね。嬉しいなぁ。



『キッド、ありがとう。とっても嬉しいわ!!ぜひ、見せてくれないかしら?』



……それに、それは使えそうね。まだ見てないからわからないけど、幅広い料理に使えそう。そうしたら、キッドに振る舞わなくちゃね!






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