ナニコレ?
「………」
小鳥のさえずりと差し込む朝日で目を覚まし、いつも通り伸びをする。
それでも、今日はいつもと違う特別な日。
学園の入学式。そして………声が出なくなる日。
☆☆☆
ドアから控えめなノックが聞こえてくる。
はーい。と返事をしようとして声が出ないことに気がついた。
仕方がないからドアを直接開けに行く。
「やぁ。おはよう。」
「おはよう。ライラ嬢。」
……オゥフッ!朝からロイヤルファミリー。
重い。重いよぉ。
取り敢えず、『おはようございます』のプレートを出す。(昨日に仕込んでおいたよ!)
「あぁ、本当に声が出なくなってしまったんだね……」
「何か困ったことがあれば直ぐに言うんだよ?」
『ありがとうございます。』
「うぅ。ライラぁ〜。グスン。」
えっ!ちょ、朝から泣かないで〜!
うぅ。ロイヤルパンチが重い。(精神的に。)
と言うやり取りを30回以上しつつ学園へ向かいました。はい。
………私、頑張ったよね?
☆☆☆
「私の教室は反対側の棟だから一緒に行けないけど……本当に大丈夫かい?本当に?」
ようやくたどり着いたと思ったら今度は『1人ダイジョウブ?』攻撃です。
……うぅ。周りの目が痛い。
『大丈夫です。』
「……そうか。では、頑張るんだよ?何かあったら直ぐ言うんだよ?そいつを消してあげるから。」
ひぃっ!ヤバイコノヒト!
……私は全力で頷いておきました。うぅ。だってぇ〜!
☆☆☆
はい。教室に辿り着きましたが、周りの目が……
完全に謎に王子と仲がいいポッと出の女って感じで、一線引かれてます。
しかも、自分からは話しかけられないっていうね……。
完全悪循環。リュカ様めぇ〜!!
「ちょっと、よろしくて?貴方、リュカ王太子様とどの様なご関係なの?貴方の家名は?特技は?どの派閥なのですか?」
うっわ面倒そうな人が来ちゃったぁ。
それも、縦ロール!もう一度言いましょう!縦ロール!
見事なパツ金縦ロール!しかも、取り巻き(髪が赤、青、緑の3人組)付き!
これは、完全なる悪役令嬢!絶対リュカ様に恋してる系だぁ!!
……っと。現実逃避してる場合じゃない。
『すみません。私、声が出ないんです。』
「はぁ?声が出ない?……っぷ。あははっ!何であんたみたいな地味な女があの方の隣にいるのかと思ったら……。優しいリュカ王太子様の同情だったのね!」
くすくすくす。あはははは。
……なんだか嫌な雰囲気。はぁ。早く授業になんないかなぁ。
「辞めなさい!ライラ様にそんな暴言を吐くなんて、許せない!」
今までのヒソヒソとした小声を消し去る様な力の入った声が間に割って入ってきた。
高い位置に一つに結ってある、青い髪に紫の瞳をしたクールな雰囲気の女の子だ。
………えっ?誰?てか、何で私の名前知ってるの?
「はぁ?公爵令嬢である私になんて口を利くのかしら?」
「ライラ様。お初にお目にかかります。私は、薄紅の薔薇団団長、ルナ・カラトリックです。」
…………へ?何それ?薄紅の薔薇団?団長?
てか、今悪役令嬢さんに話しかけられてたよね?思いっきり無視したよね?
「これを参謀よりお預かりしております。」
手紙?何かしら?
…………はっ!ハルの事すっかり忘れてた!!
………………………………………………ナニコレ?
ちょ、タンマ。まって、まじで。
『ライラ様の手足となる者たちを指令書通りに集めて、組織化しました。武闘派の《薄紅の薔薇団》。隠密系の《月光の白百合団》。各地に散らばる《群青のさざ波団》。また、幹部5人と私、ハルめが務める参謀。合わせて148名になります。……詳しい事は放課後、私がお話しいたします。』
………ん?あっれれぇ?おっかしぃぞぉ?
ふぅ。そうだ。一旦落ち着こう。もう一回よくみてぇ………………148名!?多すぎだろ!
と言うか、なんでこんな組織作ってんの!?
「ちょっと!私を放置して、2人で話した挙句、書類に目を通し始めるなんて何事なの!?あまりに無礼が過ぎるのでは無くって?」
あ。忘れてた。
「五月蝿いなぁ。ライラ様の貴重なお時間を取るなんて何事だ?潰すぞ?」
「ひいっ!?」
「ライラ様。お気になさらずお読みになって下さい!」
……いや、気にするでしょ。公爵令嬢相手にそんな口きいて大丈夫なの?
「あっ!もしかして、心配されてますか?……安心して下さい!ライラック商会にかかれば、人1人消すくらいどうってこと無いですから!」
「はぁっ!?ライラック商会の方でしたの!?……これは!失礼をしましたわっっ!では、これにて失礼しますわっっ!」
「あ、待て。ライラ様や私がライラック商会であることは内密にしておけ。……殺されたくなければな。他の奴らも、肝に命じておけよ?」
「「「「は、はいっ!」」」」
うーん。なんかもう話について行けないや。
ライラは予め用意してあるプレートに光魔法で光を当てて文字を書いています。
次話は久し振りにハルの登場ですね。