表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無音の令嬢  作者: お狐
2章 『無音』の令嬢
18/48

最後の会話

老師(クソジジイ)に試練を行うことを宣言されてから早4日。


学園に入るにあたっての基礎知識の確認と、()()()魔術を確認したり……としていたらあっという間に過ぎたなぁ。


あぁ、見得切ったはいいけど明日の朝が憂鬱だぁ。

なんか、雨がやばいし。余計気分沈むわ。




コンコンッ


ん?こんな夜中に誰だろう?


「はい。今開けます。」


「こんばんは。夜遅くにごめんね?」



へっ!リュカ様!?

寝巻き……ヤバイな。うん。



「いえ、こんな格好で申し訳無いです。」


「いや、とてもかわいいよ。……と、少し話してもいいかな?」


「はい。どうぞお入りください。」



わぁ、緊張するな。

夜遅くにイケメンと2人きりって……美味しいポジションだね!


……まぁ、絶対何も起こらないと思うけど。



「それで、話っていうのはね……特には無いんだ。明日からライラの声が聞けなくなっちゃうし、学園の入学式もあるから少し心配になってね……」



……うっ!その照れ顔の破壊力!ヤバイ!



「ふふっ、リュカ様でも心配になる事なんてあるんですね。……私は大丈夫ですよ?」


「そうかい?……僕だって心配になる事もあるよ?」


「……ホットミルクはお好きですか?私、落ち着かない夜はホットミルクを飲んで眠るんです。」


「そうなのかい?…うん。頂こうかな。」



本当に心配してるみたい。一人称が『僕』に変わってる。

……殆ど老師(私)のせいだと思うけど。








「どうぞ、あったまりますよ。」


「あぁ、ありがとう。………美味しいよ。温まる。それに、いい香りがする。」


「ふふっ。ありがとうございます。少し香辛料と蜂蜜を加えてるんです。」


「あぁ、そうなんだ。……落ち着くよ。」


「それは何よりです。」




雨と風の音が絶え間なく聞こえる中、沈黙が流れた。


……それでも、なんだか心地いい静かさだなぁ。

リュカ様も落ち着いたようだし。





「………ライラは、どうしてそんなに魔術を極めようとしているんだい?そんな……声が出せなくなるなんて、茨の道を通ってまで。」



あぁ、やっぱり。私が心配させてしまってるんだ。

……リュカ様はあまりにも優しすぎるな。

禿げてしまったりしないかしら?……なんてね。



「ん?ライラ?なんで笑っているんだい?」



あっ!やばい!顔に出てた!!

すっごい訝しげな顔をされてる!



「いっ!いえ!………えっと、(ライラ)はずっと()が欲しかったのです。……また、私は冒険者になりたいという夢を幼少期から持っています。そのためにも、力が欲しいのです。」



あぁ、そうか。私は、ライラは、力が欲しかったのか。


魔術を死にそうになりながら極めたのは、ただ趣味だ(知恵がある)からだと思っていたけど……


ただ、純粋に夢を叶える(復讐する)ためにやってたんだ。


……なぁんだ。それなら。




どうしても、人生の全てを捧げるほどに魔術に打ち込めなかった。


どうしても、老師に張り合う形になって、教えを乞うことは出来なかった。


どうしても…………要らないプライドが捨てられなかった。



一つのことに打ち込めないのが、そんな自分が嫌だった。



「あぁ。リュカ様……ありがとうございます。」


「ん?何がだい?」


「いえ、リュカ様は私のことを心配して此方に来てくれたのですね。」


「へっ!?いや、その……」


「ふふっ。リュカ様が焦ってる姿をみて元気が出ました。」


「な、な!?」


「ふふふっ。」



真っ赤になってる〜。……多分からかわれた事なんて無いんだろうなぁ。


おっと、からかいすぎないようにしないと。



「もしかして、からかったのかい?」


「ふふっ!それはどうでしょう?」


「……あははっ!そうか。………ライラ、僕は、何があっても、君の味方だと誓おう。」



時間が止まったかと思う位に真剣な顔。

そして……悲しそうな顔。



「では、良い夢を。……ライラと話せてよかったよ。」





窓に当たる雨粒の音もさっきよりも大きくなっているようだ。……止む気配は無い。



そんな音にかき消されたのか、リュカ様の声は私に届かなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ