クマちゃん。
うわぁ、謁見の間の扉、久しぶりに見たからか前より豪華に感じるんだけど……気のせいかしら?
「ライラ様、御入室されます。」
……いっつも思うけど、扉をゆっくり開けられると緊張するのよねぇ。やめて欲しいわ。
さて、気合いを入れて、行きましょうか。
「殿下のお目にかかりま「ライラーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!もう、急に修行なんかに行って!私がどれだけ心配したと思ってるんだ!!それにしても、ライラ、大きくなったなねぇ!美人になったねぇ!天使!、いや、女神のようだ!そう!君こそがアプロディーテー!愛の女神だったのだね!あぁ、本当に君の美しさに目が眩みそうだ!………あぁ、ぼんどゔにあいだがづだぁーーーーーーー!(本当に会いたかった)」
「わわっ!」
ちょ、この状況は何!?凄い勢いで抱きつかれた?しがみつかれた?うーん?よく分からないけど、取り敢えず、心配(?)してくれてたのよね?
「えぇっと、リュカ様。御心配おかけして申し訳ございません。」
「…………グスッ……、っ!済まない!取り乱してしまったようだね!ちょっと、席を外すよっ!」
「えぇっ?あ、はい。」
ダダダダーーっと、ものすごい早さで出て行った。
………それはもう、床が摩擦で焦げるくらいに。
本当に大丈夫かな?
「ふぅ。ライラ嬢。リュカが済まないね。」
「いえ、陛下。私に気をかけて下さっていたようで、とても嬉しく思いました。」
「そうか。そう言ってくれると嬉しいよ。……ライラ嬢。こちらに来なさい。」
「………?はい。」
「何でしょう………っ!」
わぁ、いい匂い。イケメンの匂いはこんな感じなのねぇ。………って、えぇっ!?
お、ぉわーーーーー!!だ、抱きしめられてる!?
王様、思ったより筋肉質!?がっしりしててキュンとしちゃうよ!!!
「ライラ嬢、よく頑張ったね。老師は恐ろしく素晴らしい魔術師だろう?そんな人の元で君が元気に過ごせているか、私達は気が気では無かったんだよ。………あぁ、無事て良かった。」
わわっ!この国の人はハグする習慣でもあるの!?………中身はいい大人だから恥ずかしいわね。
「ふぅ。これからは心配をかけないで欲しいものだね。」
そんな目で私をみないでーーーー!!
反省してます!!
「うっ……。すみません。」
「ふふっ。………では、最初の位置に戻ってくれるかな?1つやっておかないといけないことがあるんだ。」
「……?はい。」
あぁ、さっきは優しい雰囲気だったけど、やっぱり王様らしい風格がある人だなぁ。
彼が居住まいを正すだけで、その場の雰囲気が変わる。ずっしりと、空気が質量を持ったようだ。
「大魔術師である老師の元で修行を積んできた魔術師ライラに特別魔術師の称号を与えよう。…………これからも、研鑽に励むように。」
「っ……!有難い幸せと存じます。これからも精進致します。」
………えぇっ!?どういうこと!!称号とかめんどくさそう!どうしよう!やばいやばいっ!
私の最終目標は冒険者になることなのに!!
「では、ライラ嬢。執務室に移動しようか。話したいことがある。」
「了解しました。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ふふっ。リュカ様が恥ずかしがっているのを見るのは初めてね。苺みたいに顔を赤くして……不謹慎だけど………可愛らしいわね。
その顔のまま、王子様キラキラスマイルを浮かべて話しかけてくるのは………っふふ。かわいいわね。
「ライラ、さっきは見苦しいところを見せてしまって済まなかった。」
「いえ、リュカ様が私にお心をかけて下さっていたことが分かり、とても嬉しかったです。」
「そ、そうか。」
妙に使用人さんたちの目が生暖かいのは気のせいかな?
………うん。気のせいだ。
「おほん。……さて、ライラ嬢のこれからについてだが、ライラ嬢はどうしたい?老師の元で魔術を学んだなら学園に行く必要は殆ど無いのだが……」
「えっ!ライラと一緒に学園に行けると思ってたのに!………ライラ!僕は今年学園を卒業するんだ。だから、今年だけでも一緒に行かないか……?」
「こら、ライラ嬢を困らせてはいけないよ。彼女に決めさせてあげなさい。」
「いえ、経験として学園に入るのはとても有意義なものだと思います。それに、学園は魔法だけでなく薬学などもあるのですよね?それは、是非習得したいと考えています。」
「本当にっ!………おほんっ。嬉しいよ。ライラ。」
「ふふっ。えぇ、私も楽しみです。」
「それではライラ嬢は学園に入るということでいいかな?」
「はい…………っっ!」
辺りに白い光が満ちた。とても強く眩しい光だ。
「なんだっ!?ライラっ!気をつけろっ!!」
「っ!……はいっ!」
光の発生源に何かシルエットが見える。魔法を行使したものだろうか?とその場にいた全員が警戒していたが、それは、
「「「えっ?クマのぬいぐるみ?」」」
「なんなんだ?これは……」
いや、これはもしかして………
『やぁ、ライラ。今頃は学園に入ることでも決めたのではないかの?』
やっぱり老師っ!!というか、なんで私の行動が筒抜けなのっ!?
『何故行動がバレてるのかと思ったかの?ほっほ、お主の考えなぞお見通しだわ!』
「うるさいわねっ!まだ半人前ですけど何かっ!?」
『あぁ〜あと、これは録音だから会話はできないから気をつけるのじゃぞ?』
っくそ、この野郎!人をおちょくりやがって………っと、王様とリュカ様が驚いてる。気を取り直して。
『では、本題に入るぞい。……ライラに課題を課す。秘術の一つを使えるようにするためのものじゃ。……内容は、あるモノが運んでくる鍵を使い、ある扉を開けるまで魔法により声を出すことを禁ずる、というものじゃ。』
「えっ!喋れないって、学園に入ろうとしてる時にっ!」
……そんなの!無茶じゃないっ!!
『まぁ、無理だと思うならやら無くてもいいんじゃぞ?……まぁ、一生秘術は会得出来ないがなぁ〜?』
こんの、くそ老師。そんなのっ……
「やってやろうじゃないのっ!」
『ほっほっほ。それでこそ儂の弟子、儂の愛娘じゃ。……さぁ、励みなさい。お主の新しい可能性を開くために。』
「えっ!ちょっと!これ本当に録音?会話できてない?」
『……試練は5日後からじゃぞ。それでは、健闘を祈るぞぃ〜』
「おいっ!クソジジィ!!この野郎っ!私にクリア出来ない試練はなーーい!!絶対やってやるっ!!《ファイアーボム》っ!」
『ちょ、それイントネーションちょっと違く無かっ……』
ふぅ。跡形もなく消えたわね。良かった良かった。…………って、あ!やばい。王様達がドン引きしてる。どうしよう。