壊れた黒鬼
「炎鳳、冷鬼、月夜、光。お前ら四人にはこの鬼の都を守る使命がある。その力はいつか鬼人族に必要なる、我々が居なくなった後でも鬼の都を守る様になるのだぞ」
「おう! 月光様!」
「うん。僕らが守ります」
「はいはい~分かった~分かった~。いてぇ?! 何しやがる! 糞親父!」
月夜は月光からげんこつを食らって頭を抑えながら地面にうずくまった。
「お前は分かっているのか………はぁ、光、お前には苦労かけるかもしれんが、このバカを頼む」
「はい。月夜は私が支えます。ですから、ご心配は要りませんよ。お義父様」
月光はふっと笑い全員の頭を撫でた。
「…………糞親父が」
俺は仕事をしてる最中寝てしまっていた様で背中には結月が掛けてくれたと思う布があってソファーにはその結月が寝ていた。
「バカたれ。俺に掛けるのでは無く自分で着ろ」
結月は布団を着てなく月夜はそっと自分に掛かっていた布を結月に掛けてやった。
月夜………大好き。
「!?………。変な夢を見たから………ちっ、ああ! 糞!」
月夜は思い切り机を殴り。殴られた机は割れてしまい使い物にならなくなってしまった。
「ふぇ? あ、月夜………あ、違った、月夜様。どうかなされましたか?」
「……………… 結月、下がれ」
「いや、でも、月夜様………………!?」
また月夜は机をバンッと叩き結月を睨んだ。
結月はそれが怖くなり「はい」っとだけ言って部屋を出ていった。
月夜、月夜、私ね。月夜を支えるから一緒に____。
「あぁぁぁ!? うるさい! 耳障りだ! 辞めろ! お前なんて俺は知らん!」
それからも月夜は部屋で暴れに暴れてずっと気が狂った様に何かを言いその度に物に当たった。
☆
「ごめんなさい。今日の月夜様は体調が悪いためにお仕事は受け付けておりません」
「ん? 月夜が?………………。なら、見舞いをさせてくれ」
使用人も訪れたのが赤鬼代表の炎鳳だったために断れなく月夜のもとまで案内をした。
「月夜様。炎鳳様が訪れました」
月夜は屋敷の庭で外を見ながら座っていて目の下には泣いた跡が残っていた。
使用人は炎鳳を案内すると直ぐに下がってい行き、炎鳳は月夜の隣に座った。
「月夜、今日はどうした?」
「ん。炎鳳? お前、いつ人の国から帰ってきたんだ? 冷鬼と一緒に和解をするために会議に行ったんじゃないのか?」
それは数年前の出来事。
鬼の都っと世間に広まった時にあちらから会議の申し出がありそれに青鬼代表の冷鬼と赤鬼代表の炎鳳が向かった。
炎鳳はそれを聞いたら目を見開いて驚いた顔をしていた。
だが、直ぐに炎鳳は理解をして月夜の同じ様に庭を見つめた。
「そうだな。上手く行って直ぐに帰ってこれたわ」
「そうか。それなら良い。これからも鬼の都を四人で頑張ろうな」
「………………あぁ。俺達四人ならこれからもやれるさ」
二人共うっすらと笑い。
「そう言えば、光を見なかったか? 何時もなら来てるんだが、居ないんだ」
「あー、その、光は………………。光は今日は妹の結月と買い物だそうだぞ」
「そうか。なら、俺は仕事をしなくてはな。確か漁業に対する書類が溜まっていると思うし」
月夜は立ち上がり直ぐ横にある仕事部屋に入って行き、炎鳳もそれに続いた。
部屋の中は月夜が暴れに暴れたのであちこち穴だらや物は崩壊していたりっと炎鳳は苦笑いをして見ていた。
「また、随分と暴れたんだな」
「まぁな。やっぱり今日は光に会いに行こうかな?」
「いや、今日は仕事をしておいた方が良いだろう」
「そうか。なら、そうする」
そして、月夜は壊れた椅子に何度も座ろうとして転けたり首を傾げたりっと頭のネジが一本何処かに行ってしまったかの様に腑抜けになっていた。
その姿を見るのが辛いのか炎鳳は目を瞑り下向いていた。
「炎鳳。俺を殺してくれ」
「バカを言うな。お前が死んだら同胞の黒鬼達はどうなる?」
そう炎鳳が言うと月夜は壁に凭れ掛かり力無く座った。
「だったら、俺はどうしたら良いんだ、光が居ない鬼の都なんて………………俺には価値なんて………!?」
月夜が言い掛けた時に炎鳳は手加減をして殴ったのに壁をぶち抜く勢いで月夜を殴った。
「てめぇ、それ以上言うなら本当に殺すぞ。光が居ないからなんだ。ここは親父達から受け継いだ場所だろうが、それを価値が無いと言うなら、今度こそ殺すぞ」
「………………………すまん」
「分かれば良い………………。はぁ、少しは頭を冷やせ」
炎鳳は部屋を出て行き、月夜はずっと壁に凭れ掛かっていた。
「あ、炎鳳様。こんにちは」
「お前は………幸だったか」
「はい。月夜様から貰った大切な名前です!」
炎鳳は幸をじっっと見ていた。
(何処か、光に似ているな。もしかしたら………こいつなら、月夜を………)
「なぁ、今から月夜の所に行くのか?」
「あ、はい。月夜様が元気が無いと聞いたので、私なんかに出来ることはありませんが、少しでも気を楽にして欲しいんです」
「そうか。いや、君なら月夜を元気に出来るかもしれないな」
「え」
炎歩は「頑張れ」っとだけ言って何処かに行ってしまった。
幸は不思議に思いながらも月夜の所まで向かった。
☆
「わぁ」
幸はあちこち壊れまくってる部屋を見て少し驚いていた。
そして、部屋の壁に凭れ掛かっている月夜を見つけて少し身体を震わせて近寄っていった。
「月夜様? 大丈夫ですか?」
「ん。ひ、光? どうした?」
「え。光? あの、私は幸ですよ?」
自分の事を光と言う月夜に困惑の顔色を見せる幸。
(光ってどなたでしょうか? 少なからずここの人ではありませんよね?)
ここに来て数日、屋敷の人なら大抵は覚えた幸だが光と言う名前の者は知らないようだ。
「なぁ、光。結婚式はいつにする? やっぱり白無垢でするか? それとも人の国から来たウェディングドレスとか言うのが良いか?」
「へ? あ、いや、その」
「光?」
幸は困惑をしながら今どうするかを考え出した。
「そうですね。えっと、月夜様はどちらがよろしいですか?」
今することは今の月夜様に合わせて知りもしない光という知らない鬼人を演じるしかない。
「ん? お前が月夜様って珍しいな。俺何か怒らせることしたか?」
「え。あ、ごめんな………………ごめん。怒らせてないよ」
「そうか? なら、良いが」
それから壊れたソファーで二人で座り。
「光、結月はどうしてる? また体調が弱くなったりしてないか?」
「あ、うん。今日は大丈夫だったよ」
「………………光、前に言ってたことだけど、結月が良いなら俺は大丈夫だよ」
「え。前に言ってたこと?」
「ん? いや、だから、結月も娶るって話だよ。結月は好きって言ってくれたし、俺も光も結月、どっちも好きだから、三人で幸せになろ」
それに対して幸は笑顔でしか返せなかった。
「光、今度は海に行こう。俺、光の水着素顔見たいな」
「そうだね~、月夜になら良いのかな?」
「なんだよそれ、俺はお前の夫になる奴なんだぞ、見せてくれよ」
月夜はクスクス笑い言うが幸は苦笑いをするしかなかった。
「はぁ………………楽しかった。ありがとうな、幸。付き合ってくれて」
「へ? あ、はい」
当然もとに戻ったのか月夜は光では無く幸と呼んだ。
月夜は立ち上がり身体を「う~ん!」っと良いながら伸ばして。
「ふぅ。幸、今の事は忘れてくれ。じゃあな」
月夜は部屋を出て行き、幸は暫くして月夜の後を追いかけた。
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