ゾンビに恋した人間
私には好きな人がいる。彼は、カッコよくて、お調子者で、少し変わった人。
何が変わっているかはわからない。ただ、他の人たちとはちょっと違う。今日も彼を見て私は呟く。
「彼は、何を考えているの?」
私には嫌いな人がいる。彼は、カッコ悪くて、無口で、だいぶ変わった人。いつも誰とも話さず、日記に何かを書いている。何を書いているのかはわからない。きっと、変なことばかり書いているに違いない。今日は彼を見て私は呟く。
「彼は、変な人ね」
私は、普通の女の子。ある程度勉強ができて、ある程度モテて、ある程度友達がいて、ある程度充実した日々を送っている。恋もしてるし、失恋もしている。そう。私は普通の“人間”だ。友達と話す彼を見て私は呟く。
「彼に、何をすれば良いの?」
私は今日も彼を見る。いつも通り、カッコいい。話す姿、勉強する姿、笑う姿、彼の全てが好きだ。彼の後ろ姿を目で追う。気がついたら、授業が終わり放課後になっていた。ホームルームが終わり、彼が部活に行こうとする。私は、彼を呼び止めて呟く。
「あなたは、何を考えているの?」
「何も、考えていないよ」
カッコいい。カッコいい。カッコいい。全てが、全部が、一切がカッコいい。そのカッコよさに、私は意思を、心を、奪われた。
「どうしたら、私を好きになってくれるの?」
「僕と、同じになってくれるなら」
「私は、何にでもなるよ。君のためなら」
彼は笑った。その瞳は虚で、その唇は乾いていた。
「なら、君は、ゾンビだ」
そう。私は、ただの“ゾンビ”だ。彼が望むから私は、ゾンビだ。彼のことを盲目的に愛し、信じ、従い、尽くす。私の意思は、彼に奪われた。私は、彼の側に居続ける。そこに意思などなく、ただ、彼の側に居続けるだけ。そうだ。私はゾンビだ。今日も私は、彼に呟く。
「何を、考えているの?」
「何も、考えていないよ。
君は、何を考えているの?」
「私は、 あなただけを考えている」
あなたの周りには“ゾンビはいませんか?ただ、惰性的に日々を過ごすだけで考えるのをやめてしまった“ゾンビ”はいませんか?
今ならまだ、間に合います。この小説をゾンビたちに見せ、人間に戻してください。この小説は、ゾンビたちを救うために書かれたのですから……。
それと、評価ボタンを押してくれると作者が救われます。物書きは、常に評価を、閲覧数を求める“餓鬼”なのです……。
「属性てんこもり妹と俺の日常」も連載しています。興味を持ったら読んでください!




