2話 秘書のいる生活
ちなみにやはり簿記の参考書などこの世界には存在しないとの事だった。
収益や出費の記録などに資格なんか無くて、職場で下働きしながら教えてもらってるんだって。
まぁファンタジー世界ってそんな感じだよね。
うーん、しかしパソコン系の資格の参考書なんかもないだろうし、これはいよいよやる事がない……
「むむ?」
いや、あった!
思い付くと私はおもむろに鎧を脱ぎ始める。
ガチャガチャ、ガチャガチャ。
あれ?鎧ってどうやって脱いだらいいか分かんないや。
「エッチさん、悪いけどちょっとコレを脱ぐの手伝ってくれる?」
「喜んで!」
彼女は慣れた手つきでスルスルと鎧を脱がしていってくれた。
助かるな~と感謝していると調子にのってスカートとパンツまで脱がそうとするので彼女の頭についているコウモリの羽をグイッと引っ張ってやった。
「ひぎぃっ!?羽はダメぇっ!?」
エッチさんが動揺している!
頭の羽は弱点だったのか、ごめんね。
ひきちぎったらどうなるのか、すごく興味があるよ。
「ソーリー。でも私、下ネタ禁止って言ったよね。それなのに下着まで脱がそうとするから……」
「えっ、今のはヒナ様が誘ってきたんじゃないですか」
心底、不思議そうな顔をして首を傾げるエッチさん。
彼女の眼は本気だった。
なんだったら自分の服も脱ごうとしていた。なぜ?
「私がいつ誘ったのかな?」
「ヒマだから裸になって愛し合おうぜ!とヒナ様の眼が雄弁に語っておられました」
「これが国会で流行ってた忖度というやつか」
鎧を脱いで動きやすくなった私は地べたに腰を下ろして仰向けに寝て、腹筋運動を開始した。
仕事が終わってから運動する気力なんて残っていなかったが、売るほど時間がある今こそ腹筋でお腹を引き締める時!
「あ、でもこの魔神の体?で腹筋したところで現実の私は痩せるものなんだっけ?」
「えーっと、体力面を強化すれば体力中心にレベルアップするのは確かですが……痩せるかどうかは充分なデータが無いのでなんとも言えません」
「そっかぁ。でも体力がつけば元の体に戻った時にもジョギングとかしやすくなるだろうし意味なくはないよね」
文句ばかり言ってても仕方ない。
せっかくのこの状況を前向きにとらえようじゃないか。
「ちなみに知力をレベルアップするオススメの方法は?」
「魔法などの勉強ですね。その手の参考書ならすぐに取り寄せられますよ」
エッチさんが指でチョイチョイと魔方陣っぽいのを描くと紫のモヤモヤが彼女の右手に集まってモヤの中から古びた本が現れた。
「それを読めば魔法が使えるようになるの?」
ちょっとワクワクしながら本を見せてもらうと中には見たこともないような難解な文字列が……
「あぁ……これはアレだね。異世界にいくと何故か会話は理解出来るけど文字は読めないってパターンのヤツだ」
物分かりのいい私は光の速さで勉強を諦めた。
「ねぇ、腹筋してたら体力中心にレベルアップするってことは言い方を変えると知力も少しは上がるって事だよね?中心的に上がらないだけで」
「まぁ理屈ではそうなりますね」
よ~し。こうなったら1か月間、腹筋しまくって世界一、頭が良くなろう!
なんか言ってる内容がすでに頭が悪そうだがそういう方向性でがんばる決意をするのであった。