13話 帰ってきた異世界生活
初めて私がコッチの世界に呼ばれた時と同じ場所、魔王城のバルコニーに魔王マリアの声が響き渡った。
「どうしていきなり私を投げつけたんですか!? 私の事が嫌いなんですか!? それとも愛情表現の裏返しなんですか!? やったぁあああああああ!!」
私を召喚するなり床に叩きつけられたマリアは錯乱してガッツポーズで踊り出した。
相変わらずいきなりクライマックスかよこの女。
「落ち着いてマリア。ごめんごめん。ただ私もおトイレ中に強制的に呼び出されたもんだから、ちょっぴりイラッとしちゃって」
「そ、そんな事言われてもアッチの世界でヒナさんがどういう状況か分からないから仕方ないですよ……」
マリアは頬っぺたをぷくっと膨らませた。
「そういうもんなのエッチさん? 私、魔法のシステム的な事はよく分かんないんだけど」
傍らに控えている我らが愛すべきぽんこつ秘書、エッチさんに念のため確認してみる。
「はい。召喚対象を呼び出す際のトラブルは多いです。気を付けたいところですが、こればかりは改善されない問題でして」
「そうなんだ。それじゃ仕方ないかな」
「むーっ、ひどいですヒナさん! 私の事をどんな風に思ってるんですか!?」
トイレ中の私を辱しめて興奮する可能性を秘めた女だと思っている……と、正直に吐露すると今後の人間関係に支障きたしそうだな。
「どんな風に思ってるかって? もちろんとっても素敵で愛らしい女のコだと思っているに違いないよー」
私はまるで心の籠っていない社交辞令を述べた。
「ええぇ!? そ、そんなっ、ストレートに愛情を叩きつけてくるなんてズルいですよぉ」
マリアは二の腕を抱いてクネクネし始めた。
これがチョロいヒロイン、チョロインというヤツなのだろうか。
「もう、仕方ないですね! それじゃ、おトイレ中に召喚してしまったお詫びに私がオシッコしてるとこを見ますか?」
「絶交していいかな」
「えっ、な、は!?」
残念!
マリアは選択肢を間違えてしまったみたいだね。
私の好感度は大幅ダウンしてしまったようだよ。
私は明日に向かって走り出した。
さて、これからエルシアドにある領主の館に行かなくてはならない予定だけど、絶交した手前、マリアに魔方陣を用立ててもらいづらいなぁ。
と、城の中に何かすごいヤバいものがいる気配を感じた。
あ、これ、神様の気配か。
遠く離れた場所にいる人物の気配を感じるなんてマネ、いくらレベルアップしたとはいえ私ごときに出来ないだろうけど、神様の魔力の大きさはさすがに別格だね。
城の一階にいるのかな?
とにかく足元の方から見えない力の波みたいなのをビンビンと感じた。
「ん、待てよ……」
あのヒト、マリア以上の魔力を持ってるワケだしエルシアドにワープできる魔方陣くらい作れないかな。
私は挨拶がてら神様の気配がする方にタッタカ走って向かう事にした。




