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4話 魔界の神様に会いに行く生活

「ところで私、胃袋に入っても消化されないものなんですか?」


「それは大丈夫。そなたは戦乙女、その身に聖なる加護を纏っておるからの」


 加護とかよく分かんないけどラッキー!

 戦乙女には適当なノリでなっただけなんだがチョコチョコ便利な機能がついてるよね。


「ただ体の中は暗いからのう……」


 そう言うと神様はなんの脈絡もなく私のオッパイを触ってきた。


「セクハラ!」


 ゴンっ! と私は反射的に神様の頭をグーで殴った。


「痛っ!? えっ? えっ? い、今、どうしてワシは殴られたのじゃ……?」


「いやいやいやいやだってだってだって!」


 鎧ごしに触られただけなので揉まれた感触は無かったがビックリしてしまったよ、だって突然なんだもん!

 神様も困惑したような表情で叩かれた頭を押さえている。

 そんなかわいい顔したって私が大切に育ててきたオッパイを勝手に触らせるもんか!

 だいたい、最初から「ワシはいつでもお前らなんか簡単に殺せるぞ」って圧をかけながら話しているのが気に入らなかったんだから。

 現実世界では目上の相手にこんな事言えないけどファンタジー世界の中でくらい私は自由でありたい。


「か、神様だからって誰でもなんでも従うと思ったら大間違いだぞっ!」


「な、なにぃ……! ワシは、ワシはそんなつもりは……」


 もう私の異世界生活もここまでかも知れない。

 そう覚悟を決めて二週間お世話になった自分の魔神の肉体を改めて見てみるといつの間にかボワァ~っと体が光ってる事に気がついた。


「おや、これは……?」


「ヒ、ヒナ様……神様は体内でも周囲が見えるよう、触れた際に発光魔法をかけてくださったと思われまして……」


 エッチさんの顔がひきつってる。

 セクハラネタとか好きそうだが私が神様を殴った事への恐怖の方が上回ったようだ。

 私は次の瞬間、神様の前で仰向けになってゴロンと寝転んだ。


「なにをしておる?」


「土下座をも上回る服従のポーズです。急所である内臓のつまったお腹をあなた様に晒けだすことで忠誠心をですね……」


「ほう、そうか、服従か。ならば、これからそなたは語尾にゲソをつけろ。イカになったつもりでな」


「え!?」


 猫になったつもりで語尾にニャーをつけるとかなら聞いたことあるけど、何故にイカなのか。


「返事はどうした?」


 神様の眼がすごく怖い……。


「うう。わ、分かりましたでゲソ……」


 こんな私、元の世界の知り合いにはとても見せられないよ!

 けど、まぁ命が助かっただけ良しとするゲソ。


「では、とっと行ってこい!」


 神様がプリプリ怒りながらヒュッと手をかざすと仰向けに寝ていた私の背中から地面の感触がなくなる。

 あっ! これ、もしかして浮いてるパターン……?

 気付くと私の体はゆっくりゆっくりブネさんの口の奥の方へと勝手に進み始める。

 牙や舌の部分を間近で見ながら通過して「あっ! サンドバッグがあると思ったら巨大なノドチンコだった」と思った瞬間、斜面を猛スピードで急滑降するジェットコースターのように喉の奥へと


「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああアアアアァァァァァッッ」


 っという間にちょっと広い、胃袋らしき場所に放り出された。

 胃の肉壁に猛スピードで激突しそうになるがググッとブレーキがかかった感じになってぶつかる直前にススッと空中移動が停止する。

 

「はぁ、ちょっとした絶叫マシン気分だったよ……うぅっ?」


 落ち着いて周りを観察すると、そこらに消化しかけの魚がネトネトへばりついていてグロいし、胃液の匂いもなかなかキツい。

 早く用事を済ませて帰りたいところだね。


「えっと、コレ……適当にバラまいて大丈夫なのかな?」


 野球ボールくらいの体積のウコンの粉末を持ってきたがブネさんほどの巨大生物にはどれくらいが適量なのか分からない。

 でも人間サイズで比較すると粉一粒分くらいの小ささだよなぁコレ。

 とはいえ採取したウコンはこれで全部だし……

 いや、そもそもホントにドラゴンにウコンが効くのだろうかという根本的なギモンも……


「ん? あれって……」


 あれこれ考えながら胃の中をなんとなく眺めているとブネさんのサラッとした胃液とは質感の違うドロッとした胃液まみれの魚が肉壁にへばりついているのが見える。


「もしかしてエッチさんの汚染物質を食べた魚か……?」


 泳ぐようなイメージで手足で宙をかくとふよふよと移動が出来るみたいだ。

 私はなんとかその魚の前まで泳ぎ着く。


「ふむ。ここからアルコールを吸収したなら、ここにピンポイントでウコンを塗り込めば少しは効きもよくなる……って事があるといいんだけど」


 そんな理屈が通用するか分からないがとりあえず肉壁からネチョォッと魚を剥がしとりウコンをモサッと塗り込んだ。


「とりあえずやるだけやったかな。で、この魚だけど……」


 これは念のために持って帰ろうね。

 放置してまたブネさんが体調を崩したら、かわいそうだ。

 しかし、きったいなぁ……とウンザリしながら汚物まみれの魚をウコンを入れてきた容器に移そうとすると……


 ゴゴゴゴゴッと辺り一面が大きく揺れ動き出す。


「わっ、なに? なに? なんだこれ!?」


 宙に浮いてるから揺れを体に感じる事はないけど、周りの肉壁が上も横も下も全部動きまくるっていうのは天変地異みたいでかなり動揺する。


「「これ、人の子よ。酔い止め薬はもう使うたのか?」」


「神様ぁ!」


 神様が良いタイミングでテレパシってきてくれてヒナちゃん大歓喜!


「お薬使いました! でもなんか周りがグォオオオッてなってガァアアアアッてなって助けて下さい!」


「「ゲソはどうした?」」


「本当にごめんなさいでしたゲソ」


「「フン、まったく……」」


 神様の声はまだ不機嫌だったけど、体がスゥ~ッと上に浮かび上がり始める。どうやら外に出られるらしいや。

 ホッと一息ついたものの、なんだかドンドン上昇スピードが加速していってうわわわわわわ超怖いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃィィィィィィィィィィィィッッッッっという間にノドチンコ、舌、牙のゾーンを弾丸みたいにくぐり抜け、シュポッと私の体はブネさんの口から脱出して大空高くに放り出された。

 こんにちわ、太陽!


「グルルォ……」


 ああ、ブネさん起き上がってる。元気になったんだね。よかった。

 だから体の中が動き始めたのかーと思いつつ、今度は高層マンションの屋上くらいの高さからの急転直下が始まる。


「ンニャああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァッ……!?」


 こんなに大声を張り上げまくったのって子ども時以来かな~。あっ大変! 走馬灯思い出さなきゃ!

 って思ってる間に私は凄い勢いで水に叩きつけられた。


 ガクッ。


 湖の底へゴボゴボと沈みつつ、意識が薄れていくのを感じた……

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