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4話 魔界の神様に会いに行く生活

「それじゃあみんな、お疲れ様!」

 

 私は掛け声とともにうず高く積み上げられた草に松明を使って火を灯した。

 ゴォオオオッと雑草で出来た小山が燃え上がり、日が暮れて暗くなったハッピーラブリー城の庭園を明るく照らす。


「お疲れ様でした! ヒナ様に栄光あれ!」

「お疲れ様っス!」「うぅおおお終わったああああ!」


 エッチさんやライ君たちが歓声を上げ、手に持っていた飲み物を口にする。

 さながらキャンプファイヤーのようでちょっと楽しい。


 魔王軍に入って二週間。

 特別やらねばならない事も無かったので、お城のだだっ広い庭園の雑草を毎日ブチブチむしり続けた結果、今日ついに庭園がスッキリしたのです!

 まぁあくまで私的に、だけど。

 通り道を阻んでいた腰よりも高く生えてた邪魔な草はあらかた抜いたし、道の小脇に咲いてる花も見えやすくなった。

 庭園を綺麗にしたところで喜ぶ魔族がいるか知った事じゃないけど、とりあえずやり遂げた感はあった。


「で、草むしりクエストクリアの経験値はいつ入るのかなっと!」


 何せ東京ドーム30個分(推定)の草をむしったんだ。

 経験値が入るだけじゃなく、ちゃんとレベルアップしたいところだけど、その辺どうなんでしょーか。


「魔族がクエストクリアした場合は魔界の神に報告するとクエスト経験値がもらえる仕様になってるハズですよ」


 物知り秘書のエッチさんがなんでも答えてくれる。

 ありがたいね。

 でも「なってるハズ」ってなんだかあやふやな感じじゃない?


「あっ! なってるハズ、ってなんだかあやふやじゃないか? とヒナ様は思いましたね?」


「思いました」


「ウフフ。ヒナ様が重箱の隅をつつくのが大好きな性格だと言う事はこの二週間でなんとなく分かってきました」


「それって私がどうでもいいことを執拗に掘り下げるセコセコした性格だっていう悪口だと受け取っていいのかな?」


「ダメです」


 と、しれっと答えるエッチさん。

 一体どう反応すればいいんだ。


「なってるハズ、と曖昧にお答えしたのは何せここ百年ほどクエストをまともにこなした魔族は全くいないそうですからね。私もこの目で確認したことがないのです」


「あ~、そう言えば最近の魔族があまりにも不甲斐ないから魔界の神様にぶっ殺すぞ! って怒られたとか魔王サマが言ってたっけ……」


 ん? あれ?


「えっ、ちょっと待ってよ。クエストクリアの報告で会いに行く魔界の神様って、魔族全員ぶっ殺宣言した危ないヤツのこと?」


「イエス♪ 正直、怖くて会いに行きたくないです……」


 エッチさんが良い笑顔から青ざめた表情に変貌するまでを見事なグラデーションで表現した。

 うわああああ……レベルアップはしたいけどそんな怖いヤツとは関わりたくないなぁ~。


「だけどレベルアップしなきゃ魔王軍に入った意味無いしなぁ。ここは思い切って会いに行ってみようか」


「……分かりました。ただ家族に遺言を残しておきたいので明日でも良いですか?」


 そこまで恐ろしいのか。

 いや、確かに魔王やエッチさん、ライ君たちを見てると忘れがちになるけど本当は魔族ってメチャクチャ恐ろしい存在で、さらにその神様ともなるととんでもないヤバいヤツな可能性は高い。


 私の世界で言えば誰だろう。

 会うだけで息が詰まるような……

 そう言えば私が勤めてる会社は地方の支社に過ぎないが東京本社の社長が視察に来られた時はメチャクチャ緊張したっけ。


 いや、魔王マリアが魔王軍の社長みたいなもんだから、魔界の神様ってのは会長みたいなもんかな。


「派遣社員の私ごときが会長の元に伺うとするなら……お土産があると少しは喜ばれる気がする」


 うん、そうだ。

 きっと魔界の神様だってそういう気遣いは嬉しいハズ。


「お土産、ですか? では極上のコウモリの干物と高級トカゲのしっぽ束を手配しておきましょう」


「あなた達の好みは私もこの二週間で分かってきたけどさ。そんなもん持ってって本当にブチ殺されない? 大丈夫?」


 そうなのだ。

 魔族の食事の趣味は基本ゲテモノ料理ばかり。

 気色悪ければ悪いほどポイントが高いという最悪の風潮がある。

 魔王城が誇る一流シェフにトリュフを使ったパスタを頼んだ時も、茹でたミミズ千匹の上にトリュフが乗っかった料理(?)を出されて危うく失神しかけたものだ。

 余所の食文化に文句をつけるのは無粋ではあるがハッキリ言って私の趣味とは合わなさすぎる。

 

「任せて下さい! コウモリって鳥なのか哺乳類なのか分からない所が不気味でチャーミングで二度美味しいですからきっと安心です」


「そうだね。まったく理解出来ないし理解したくもないけどエッチさんを信じるよ!」


 エッチさんをまったく信用できなかった私は明日までに自分の方でもお土産を用意してみることにした。


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