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2話 秘書のいる生活

 エッチさんに脚を押さえてもらって、ふんっ、ふんっ、と腹筋を続けること約30回。

 私はまったく疲れていない自分に気が付いた。


「おや? いつもなら10回くらいで生きる気力が失われるのに……」


「その魔神の肉体はマリア様の特別性。ポテンシャルは上級魔族並ですからね。腹筋の千回や万回は余裕でしょう」


「そういえば人類侵略のお手伝いをするために作られたんだっけ」


 そんなに強いなら人類全員を峰打ちで倒せないかな。

 異世界だからって殺しなんか絶対にしたくない。

 そんな事したらご飯が美味しく食べられなくなりそうだし。

 ご飯が美味しく感じるってことは人生において結構、大事なことだと思う。たぶん。


 うーん、そっか。そのためにも人間相手に手加減しても余裕で勝てるくらいレベルアップしておくのは重要だね!


 とりあえず腹筋一万回終えるまで止まらないぞ! と固く決意して私はペースアップするのだっだ。




─五分後─


「飽きた」


「えっ」


 そりゃそうだ。

 疲れないからといって、ただ腹筋運動をしてたって何一つ楽しくないよ。少なくとも私は。

 地べたにぐでっと寝転ぶ私を見てエッチさんが提案する。


「では気分転換に腕立て伏せをするとか」


「そういう問題じゃないね」


「ではでは気分転換に下ネタしりとりをしながらやるとか」


「あなたの頭には問題があるよ」


「たった五分で投げ出すヒナ様には問題がないとでも?」


「あります、ごめんなさい。あなたの言う通り、私は最低な人間のクズです」


「そ、そこまで言ってませんよ!」


 そもそもなんでも中途半端に投げ出すような人間だから資格の一つもとれないしダイエットも成功しないのだという事を忘れていたね! うっかりうっかり。


「他の魔族の者って、どうやって経験値稼ぎしてるの?」


「大半の魔族は経験値なんか稼ぎませんよ。持って生まれた強さにアグラをかいて、やがて成長した勇者に殺られるまでラクに楽しく生きていければいいやって」


「潔いね!」


 言われてみればドラゴンや悪魔が腹筋やサンドバッグを殴って鍛えてる姿は漫画やアニメでも見た覚えがない。

 もっとも魔族が一生懸命きらめく汗と涙を流して努力して、勇者をボコボコにしても困るけど。


「これは人間の冒険者のやり方ですが、クエストをクリアすることでも経験値は入るようですよ」


「クエストってなにかね」


「例えば魔族が村の近くにいるのでブチ殺してきてほしい、高値で取引される気持ちよくなるクスリを手に入れてほしい等です」


「あ~、討伐とか依頼とかそういうヤツね」


 仕事を一つやり遂げるたびに人間的に成長した気がする、という事は現実にもあるがそういう感じなんだろうか。

 ただただ腹筋し続けるよりはやり甲斐がありそう。

 それにしても例がなんだかヤバイよエッチさん。


「ちなみに私が出来そうなクエストって心当たりある?」


「それはまぁ我々は魔族ですから……人間の村を襲うとかですかね」


「クエストを受けた冒険者に私がブチ殺されちゃうよ!」


 というか、他人に迷惑をかける行動は出来れば避けたい。


「それならば魔王城の草むしりはどうでしょう」


 なんだかいきなり話の規模がショボくなったぞ。


「ふむ。でもまぁ、これからこのお城でお世話になるんだし挨拶代わりに草むしりしとけば私の印象も良くなるね」


「では早速、庭園に案内しましょう」


 庭園か~。

 色とりどりの花や壮麗な木々を見ながら汗を流すのも良いかもね。

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