車内談義
帰りの車の中で、三人は談話を続けていた。
「どうですか?雅臣先輩。解決の目処は立ちそうですか?」
十津川の問いかけに雅臣は少し回答に困った。
「…ううん…何しろ半日しか経ってない。流石にこんな短時間じゃ尻尾も掴めないな。」
雅臣の返答に少し肩を落としながら十津川は俯いた。
「ま、流石の雅臣でも無理だろうなぁ。にしても、今日の俺の演技、すごくなかった?ねえねえ凄かったよね?ね?ね?晴乃ちゃん?」
先ほどまで軽く深刻そうな顔ををしていた十津川は、友則を引くような目で見ている。しかし、その問いに対する返答は友則が期待していない相手から帰ってきた。
「…ああ、さすが友則だ。想像以上だったよ。」
雅臣からの思わぬ素直な賞賛に舞い上がりながら、友則は続けた。
「でっしょ〜?ちなみに俺はさ、秘書さんなんか怪しいと思うんだよねぇ。第一発見者は疑うべきだってなんかの本で見たぜ?」
とても殺人事件のことだとは思えないほど軽々しい口調である。雅臣は少し苦笑いを浮かべながら友則に反論する。
「…それはないだろうな。彼女が犯人であればむしろ自殺に見せかけたい側だ。わざわざ我々に調査を依頼するのは道理に合わない。」
「ま、マジレスかよ…。」
冗談めかして言っているが、少し肩が落ちてるところを見ると少し本気があったらしい。こういう短絡的なところが友則の頭脳労働に向かない所以だ。
「ひとまず、会議は帰ってからにしましょう。これからの方針も決めなきゃですし。」
十津川の提案に2人は頷き、同意を表明した。