霧がかった夢 前編
どうもー、書かないと駄目ですね怠けちゃって中々書こうと思えなくなってきます。
後薬品の知識は全くありませんので睡眠薬とかは軽くネットで検索しただけなので真に受けないで下さい、これは100%作り物の話です。
妙に薄い煙が霧がかったように意識が半ば眠っている状態の頭の中を甲高い機械音が反響し、薄めを開けて体制をうつ伏せの状態になり傷んだ自分の茶色い髪がぼやけて映る。
それを掻き分けて銀色の目覚まし時計を叩くと反響していた音が消えて、意味もなく瞼を数回瞬かせて両腕を地面につけて体を立ち上がらせると体に違和感を感じ下を見下ろす、服装がくたびれたスーツ姿のままであるのを見て明日、今日が祝日で休みなのを良いことに布団に風呂にも入らずに倒れこんだ事を思い出す。
軽く舌打ちをすると右手を後頭部に置いて掻きむしる、手から感じる感触はもう若い頃の物を感じることは出来ず硬い感触でありそれも重なって女性は額のシワを深めるともう一度舌打ちをしてから要約着替えにとりかかる。
狭い部屋の中の扉の縁にかけてある青いカバーが所々欠けているハンガーを手に持ち服から外す、無地の紫色の長袖を着ている途中で今朝も靄がかった気分でいる事に気付き手に持っていたスーツを無造作に布団に向かい投げる。
自分の中では野球選手をイメージして投げたが起きたばかりの女性の体が姿勢に耐え切れず、投げ終えたら滑り尻餅をつく。
途端に隣から壁を叩いた音を聞いて壁に向かい声色に気をつけて柔らかい声で謝罪の言葉を、般若の様な表情で口にし見るものが見れば女性を現代版の山姥だと連想されるような勢いがそこにはあった。
紫色のズボンを着て先程投げたスーツを手に持ち上下スーツを適当にハンガーに掛けて紫色の服を掛けてあった所に物音を立てながら掛けて行き、長髪を掻きむしりながら着慣れたカッターシャツを左手で持ち扉を開けて洗濯機を目指す。
(………今日もあのうざったい夢を見た)
そう思いながら女性は洗濯機のフタを開け、中に入っていた洗濯物をカゴの中に入れようとそちらに目を向けると中に何着か入っておりそれを上から押し込み乾いていた物まで濡れるがそれを気にする素振りすら見せずに洗濯機にカッターシャツを放り込む。
床に無造作に置いてある柔軟剤を入れてフタをして洗濯をし、コーヒーを飲むために台所に足を進ませる、借りているマンションの部屋もそこまで広くはなく、数秒で付くと女性は使い古されてると人目でわかるヤカンに水を入れてコンロにおいて火をつける。
木で出来た椅子に座り体重を預けると女性は寝不足もあって一瞬夢の世界に落ちて机に額をぶつけて頭を上にあげて額を擦る。
眠りに落ちていた時間自体は数秒も無いがその一瞬で何時もの気持ちが悪い夢を見たことに気付き舌打ちを漏らす。
「…気持ちが悪い」
何時も見ている夢に悪態を漏らすと夢について考える、毎日見ている癖に全貌が掴めない夢、ただその内容が楽しい事柄でないことは覚えてはいる分余計に気持ちが悪い。
霧がかっているがその霧を取っ払う事に抵抗を感じるのも何時も、そして何時迄もそのまま放置をし続けるというのも精神的に良くないと思うのも何時もの事。
そう思いながら机の上に置いてある紙に視線を落とす、女性が週一で通っている病院のレシートでありそれを見ていると自然と表情が笑みに変わる、笑みは笑みでも面白さから来るものではなく自嘲的な笑みだが。
夢を見始めて一年、未だにどういった夢なのか解らないが気にはなる。必ず同じ内容だと女性も自分で自覚出来ているのも強い。
気持ち悪さが同じなのだ、感情的な根拠しかないが女性はそれだけでも確信している、ここ一年同じ様な感覚で、楽しかったと思える夢を見れていない事に苛立ちの感情が募り舌打ちを鳴らす。
それと同時にヤカンから甲高い音が鳴り、そちらに目を向けると白い湯気が浮かび上がっておりそれを見るやいなや慌てて火元を切り、切ったと同時にそこまで慌てる事は無かったと思い直してまた自嘲気味に笑うと黒色の粉末が入ったコップに湯を入れてコーヒーを作り上げる。
上に上る湯気が顔にあたり温かいと思いながら椅子に座り直し白いコップに口をつける、口を離した瞬間広がる香りとコップに描かれているテディーベアとのギャップに笑うと女性はコップを机においてレシートを右手に持ち視線を向ける。
「…暇だし今日行っとくか」
自分の担当である主治医が今日はいることを聞かされていたので足を向けることに決めてコップに口をつける。
熱いことを忘れて音を立てて啜ると咽て少量コップの中に戻し口の中、特に舌が熱いと思いながら口の中の空気を出したり入れたりを繰り返す。
再度口を付けるが火傷した舌のせいで上手く飲めず、仕方なくラップをして机の上に置いて帰った時に飲もうと思い直して立ち上がり服を着替え直す。
今度は無地の紫と対照的な上から黒白灰色のボーダーで彩られている分厚い生地の長袖と黒いデニムズボンを着こなして外に出て赤いアクアに乗り込む、キーでエンジンを掛ける時に女性は何故か気味が悪くなり手を止め、しかし特に怖がる理由が思いつかなかったのでキーを回して病院に車を走らせる。
祝日だと言うのにスーツ姿で携帯を耳にし顔をしかめているサラリーマンを見かけて勝ち誇った気分になりながらハンドルを手にしていると赤信号で車を停止させる。
ふと歩道に目線を向けると若い男女が二人で手を繋いで歩く姿を目にし睨みつけると片割れの女性が微笑みを向ける、その表情が女の自分ですら魅力的だと思ってしまったのに悔しく思い睨みつけた所で青に変わったのでしばらくその形相のまま車を走らせ、病院が目に見える様になったら自然と顔をほころばせた。
駐車場に止めて車を出ると落ち着いたような安堵感を感じてようやく自分が緊張していた事に気付いた女性は何故緊張していたのか解らずその場で数秒立ち止まるがずっと立ち止まっている訳にもいかないと歩き出す。
(何で…? いや確かエンジン掛ける時妙に怖かったような…じゃあそこから緊張してたの?)
原因を考えるが何も解らず気味の悪さを感じていると透明な自動ドアが前に見えたので表情を気にしながらなるべく平静を保ちつつ歩く速度を速めていく。
ベージュ色のハイヒールと綺麗に磨かれている鏡の代わりにすらなりそうな床が打つかる音が速いのを感じ取りながら受付嬢の前に行き女性はにこやかな笑みを浮かべる。
「すいません、今朝から気分が悪くて相原先生に見てもらいたいんですけど…」
「おはようございます、本日も夢のせいで気分が優れないといった事でしょうか?」
「はい」
ナース服の若い女性に二つ返事でそう返すと何時もの様に白色のソファーに座る、自分の部屋においてあるソファーと比べることすら痴がましいと言える程丁寧に掃除されているのを感じて帰ったら久しぶりに元旦に出来なかった大掃除をしようと心に思い浮かべながら雑誌を取りに腰を浮かす。
勝手知ったる我が家の様に一寸のムダもなく木の棚から女性誌を抜き取りソファーに座り開く。
芸能人が結婚したと書かれにこやかな笑顔の二人が写っているが女性はテレビをあまり見ないので誰か解らず顔をしかめていると自分の名前が呼ばれ席に雑誌を置いて病室に向かう。
前まで来てドアをノックし開けて入るとくたびれた笑みを浮かべる自分と同じぐらいの男性が目に入りにこやかな笑みを浮かべて椅子に腰を下ろす。
「いやぁよく来ましたね、相変わらずお元気そうで何よりです」
そう言われて女性は笑みを深めるが主治医の男性、相原はその表情の変わり方を見て一瞬眉をしかめる。
(こりゃあだいぶ参ってるな………今のは嫌味と取られて不機嫌になられるか愛想笑いが返ってこないと行けない所だ)
化粧をしていても解かるほど目の隈が酷くあまり眠れていないのがわかり、顔に生気を感じる事ができない。
女であるので鏡を見て身なりを整えて外出をしているのは前提としてあって、自分の顔がどういうふうになっているのか解った上で今の言葉をすんなりと受け取っているのは精神的に問題がある。
そう考えていると女性がきつい表情に変わり力強く相原に向かい言葉を放つ。
「先生、大きなお世話だと思いますがタバコの残り香がきついです、健康のために少なめにしては?」
「ハッハッハッハッ、すいません今度から気をつけておきます」
そう言う女性の表情は先程と違い生気があり歳相応の顔だが言い終えると老衰した老婆の様な表情をするので近くにいたナースに向かいある薬品を持ってくるように指示を出し女性に顔を向ける。
ナースの女性も患者の顔色を一瞥してから足速に遠ざかるのを聞き力のない表情でいる女性に声をかける。
「どうです? 例の夢はまだ見てますか?」
「はい………でもまた内容が思い出せないんです、今朝も見たはずなんですけど…最近はよほど私の顔色が悪かったのか部下が心配してくれたんです」
「良い部下がいて助かりますなぁ、いえ私も看護婦…失礼看護師が察しが良く動いてくれるので助かってますよ」
昔からの癖で気をつけているが未だに看護婦と言ってしまう事に頭をかく相原に女性は薄く笑みをして合わせる。
そのまま数分話しているとナースが薬品と注射器を持ってきたのでそれを受け取り机の上に置いて女性に向き直る。
「さて灰村さん、正直に申しますと貴女はだいぶ参ってます、自分が思ってる以上にです」
そう言われても特に表情が動かないあたり灰村もそれとなく察していたのだろうと相原は思いながら台とチューブをナースに持ってこさせて机の上に置く。
机の上に先程置いた透明な入れ物に入った薬品右手に持ち黒字が書かれている部分を灰村に見せながら口を開く。
「これは最近作られた睡眠薬で簡単に言ってしまえば眠りの浅い人が気持よく深く眠れるようになる薬と思っていただいて構いません」
「はぁ、あの…通常の睡眠薬と何が違うんでしょうか」
「睡眠薬と言っても種類があります、催眠作用の強弱、それに加えて筋肉を緩める作用が有るものや中には眠らせる過程、薬の力で眠るというよりは自然に眠らせる事ができる薬品もあります」
相原がそう話している間も灰村は訝しげな表情をして耳を傾ける、睡眠薬は試したことは無いが眠れないのではなく夢が気になるのだ、灰村自身深い眠りに付きたいとは思うがあの薄気味悪い夢を長く見ることになると思うと鳥肌が立つ思いがするため当然するつもりは無い。
患者が自分が言い終えた途端に薬品を使用するつもりがないと言う気配が感じ取れたので相原は睡眠薬の説明を速めに切り上げて本題の自分が使用しようとしている薬品の説明に戻す。
「これはその中でも特殊で寝ている脳に視点を向けた薬で、ようはレム睡眠の気分よく起きられて夢を何度も見て記憶の固定化をする、この過程を強めた状態でノンレム睡眠、つまり深く眠れるという事です」
それを聞いた途端灰村は腕をめくり勢い良く相原に向けて腕を差し出す、危険性や副作用といった点を聞かないのでそこを後でとやかく言われても困るので今のうちに女性に向けて説明する。
「まずこの薬は多少ですが中毒性があります、そして錠剤ではなく血管に直接投与しなければ効果が無いためこの睡眠薬を持って帰ることは出来ません、それと副作用として最低五時間は何をしても起きることが出来ません」
「………大丈夫です、記憶の固定化ということは起きても夢を覚えていられるという事ですよね? それさえ出来れば構いません」
右手が少し震えているのを感じて灰村は左手で右手を強く握る、その様子を見て辞めるように言おうか相原は迷うがこのままの状態で灰村を置いておく訳にもいかないので黙っていると横にいるナースが相原に意味ありげに視線を送る。
「…すいません灰村さん、この睡眠薬途中で起きることが出来ませんから今のうちにトイレに行ってきてもらえませんか?」
「あっ…はい、解りました」
そう恥ずかしそうに言うと灰村は席を立って病室から抜けていく、それを見届けて相原に向かいナースが口を開く。
「…相原先生大丈夫なんですか? あの薬が使用された事は数件しかありません、もし何か不手際があったら………」
「うん実際その通り、私もこの睡眠薬を使うのは正直言って怖いよ」
そう相原が言うとナースは驚いたような表情をし、次に怒鳴るように息を吸い込むとその途中で相原が付け足す。
「でもね、この薬しか思い当たるのが無いんだよね…一年も同じ夢を見ててそれが何か思い出せない何て普通じゃないよ、気のせいの可能性のほうが大きい、それでも灰村さんはそう思ってないんだ、なら多少危険があっても患者を治すのが私達の仕事だろう?」
そう言い終えると気恥ずかしそうに頭をかく相原にナースは何も言えずに立ちすくみ、口を数回動かしている所で失礼しますと言って灰村が戻ってきたのでそちらに向けて相原はにこやかに笑みを向けて、ナースはぎこちない笑みをして迎え入れる。
椅子に座り裾をめくって腕を出す灰村を見て相原はナースの方に視線を戻す。
「じゃあ注射お願いね、私より日頃から慣れてる君達のほうが上手く出来ると思うし」
「………………失礼します」
感情を殺したような表情で腕を台に固定し、チューブで肘の辺りを縛ると注射器を少し押して液体を数滴出す、それから右腕の脈を探しそちらに針を通し薬品を投与し始める。
針が刺さったので鈍い痛みがあるがそれ以上痛みはなく、普段から慣れているであろうプロの技がそこには感じられて灰村は久しぶりに人に感謝をした。
投与し終えて針を抜き、綿のような物を刺し後に押し付ける。
数分たった所で目眩を感じるとその綿を押すのをナースは止めて小さな絆創膏の様な物を貼る。
「灰村さんそこのベッドで眠っていて下さい、後で空いてる病室の方に私達で移しますので」
「はい…」
そう言うと意識を朦朧とさせた灰村がベッドに手をつき仰向けで目を瞑る。
久しぶりに書いたらこの量で五時間かかりました、最近書いてないのもあるんでしょうか、もっと速く書きたいものです。