無と有
今回の話は一話の青黒い水族館と雰囲気が似ているような気がします、次はホラーの予定です
視界に移る全てが白い世界で一つだけ色がある童女が何で出来ているか解らない道を歩く、和傘を手で回転させながら無表情なまま周りを見回す、もう何回目か解らないその変わらない風景をつまらなさそうに眺めていると一人の男性が目に入る。
驚いたようにその男性に近づき体を揺すると男性が呻き声を出しながら鈍い動作で頭をあげる。
「んー………? ん!?」
「おお!? な、何じゃ驚かすでないわこの戯け」
男性が急に起き上がるので童女は驚いた拍子に尻餅をついて座り込む、男性はまだまともな思考を取れなかったが一応自分のせいで驚かせてしまったということは認識できたので手を童女に差し向けると悪いのと言いながら手をとって立ち上がる。
手で掴んで伝わる温度が死人の様に冷たかったので再度驚いて手を慌てて引っ込めると童女が和傘を緩やかに回しながら呆れたような表情で男性を見つめる。
「………お主先程から妾をからかっておるのか? そういう態度を取るなら帰り道を案内してやらんぞ」
そう目を細めて言う童女に酒が抜けきっていないので頭が回らないからか訝しげに見つめ、周りを確認すると抜けきっていない酒も綺麗に抜け落ちた。
「…ちょっとまって、色々説明してくれないかな」
「知らぬ! 散々弄びおって謝罪もなしにするわけなかろうこの戯けが!」
そう言うと少女は反転し赤い和傘を男性に見せる、宙を舞った艶のある黒髪も心なしか怒っていると言いたげに優雅に落ちると和傘を回転させる。
男性は頭を右手でかきながらとりあえず謝罪しようとその微妙に速く回っている和傘の主に背中越しに謝罪の声をかける。
「…悪かったよ少し動揺してたんだ、良かったら少し説明してくれないか?」
回転させた和傘を止めて少しだけ和傘から蒼白い顔を覗かせて童女が男性を見つめる、その瞳は人間のそれではなく深海のように深い蒼で本来白い部分が黒で出来ており夜の海の様に男性の心が取り込まれそうになっているとその瞳が細まるのを見て慌てたように言葉を続ける。
「本当に頼むよ今日大事な会議があるんだ、君には解らないけど遅刻したら偉い人に怒られるんだ」
そう男性が言った瞬間に童女は目を見開き、その次に男性を睨みつけると和傘に顔を隠し先程よりも速く和傘を回し男性に無言の抗議を行う。その姿を見て童女がいじけたと思い男性は先程から感じていた頭痛がより一層酷くなる事を覚えどう言い繕えば良いのか天を見上げる。
天を見上げて気づいたが男性の知っている空ではなく白色の天井のような空が目に飛び込む、辺りを見回すが童女以外に色はなく白く長い凹凸があるだけ、長いものは上が見えず、下に陥没しているものは底が見えない。
大きさは個体差があるがどれも横は家1件程の大きさで真四角であり何故そんなものがあるのか考えていると背後から声が掛かる。
「………この世界は無の世界じゃ、故に釣り合いを取るために必要でな」
後ろを振り返ると顔つきが険しいが男性の疑問に律儀に答えている辺り人当たりの良さを感じて、それを踏みにじったような対応をしていたことを男性は今更ながら心のなかで恥じてまた口を開こうとするとそれよりも少女が口を開く。
「よい、謝罪はもう聞き飽きたわ………先程の続きじゃが完全に無になると世界が消えるのじゃ、だから消えない程度に有と無を作っているんじゃよこの世界は」
「………そ、そうなんだ、所で俺は今日会社に行けるのか? っていうか今何時?」
「…この期に及んで仕事の心配か、お主の世界は仕事が全てなのか?」
険しい顔付きが呆れたように緩むと来いとだけ言い残し男性に向かい背を向ける、慌てて背を追いかけ童女の後ろを歩き回りを見渡すと少女以外に色のある物を何一つ見ることが出来ない。
世界一周してもこの調子なのではと思えるほど凹凸以外何もなく白い地面を歩く、地面に注目していたから気がついたが童女の足跡にだけ色が残ることに気がついた。茶色で童女が履いている茶色の草鞋の色と同じなので気になり歩きながら後ろを振り向くと数秒後に消えているが足跡が残っている。
すぐに消えるというよりは薄くなっていき気付いたら消えるという風で不思議に思い自分の足跡を探すが無く後が残るのは童女のものだけと悟り前を向くと童女が男性の方を見上げていた。
「………お主教養はありそうじゃな、知的でそれなりに発達した世界から来たように見受けられる…どれここは殺風景じゃろう?」
「ああ…何で君の足跡だけ残ってるんだ?」
「先程も言うたがこの世界は無じゃ、じゃからこそ妾に存在感を持たせて釣り合いを取っておるのよ…妾がこの世界の有なのじゃからアレは足跡ではなく存在の名残よな」
そう言うと顔を前に戻して歩き出すが知的でとあえて宣言してから会話を進めている辺り違ったら無視して案内だけしようとしていたと名言しているようなものだ、馬鹿とは話をしたくないという意思を感じて我が強い童女だと思いながらも苦笑して話題をふる。
「俺みたいに突然こっちに来たりする人は多いのか」
「よくあることじゃな、この世界は時間の懸念がない故例えにくいが………手毬に飽いた頃に来るという具合か、一気に三人ほど来たこともあったか」
手毬と聞いて童女を観察するが自分の日本の江戸時代の人物のように見えた、見たことは当然無いが、色鮮やかな着物を着て真っ赤の和傘を差して手毬で遊ぶ、昔の人物のような気がするが童女は勿論人間ではない。
少女の瞳もそうだが青い角が額から生えているのだ、短く先端が丸っこい角で左向きに日本生えている、上下にあり下の角は上に比べて短く太い。
酒は抜けたがまだ呆けている頭で鬼かどうか訝しんで、または狐の類に化かされているのかと疑って声をかける。
「…君は鬼か? それとも狐?」
「………待て、その台詞前に何処かで聞いたぞ? 何時じゃったか………」
突然立ち止まりそう言うと童女は額にシワを作り、悩んでいると思い出したように目を輝かせる。
「そうじゃ! お主日の本の生まれか、妾はその鬼とやらによく似ておるそうな」
「日の本って何時の時代の人だ」
「何時…忘れたが妾の会った人物とは全然違うな、もっとこう…刀を下げて兜と鎧を着ておったがお主は良いのか? 侍とやらは刀は命より重いと聞いたが」
その話を聞いて眼の前の童女が見た目どおりの年ではないことを知る、嘘を言っているような素振りは無いし必要性が無い、何より懐かしむ動作が様になっているので年寄りには違いが無い。
「時の流れか、時間が無いので解らなんだがお主は理性的じゃな、前のは話しかけたら行き成り刀で斬りつけて来おったぞ」
童女の嫌味を言う気持ちも解かるが仕方のない事だと思ってもいた、鎧と兜をしているということは戦の真っ只中で呼ばれたという事になる、気が立っているので仕方が無いし何より一つ頭に浮かんだ事を質問してみた。
「その兜って何か模様みたいなのが入ってませんでした?」
「そこまで覚えておらぬ、ただ妹の誕生日の贈り物を縁と言って譲って貰ってな」
そう言うと童女は着物に縫ったようにつけていた簪を取って男性に見せる、赤というより紅で綺麗に光り輝いており真ん中に桜の花弁が舞っている絵が描かれている。相当値のはる一品とあまり詳しくない男性でも解かるものであり、それを送った者はそれなりの地位である人物であることが予想出来た。
食い入る様に見つめる男性に着物の裾で口元を隠して笑う童女は自慢気に良いじゃろうて、妾も気に入っておるのじゃと目を嬉しそうに細めるが気付いた様に咳払いをしてまた歩き始める。
「お主が日の本の生まれならあれは出来るか、傘で手毬を回す奴じゃ、教えてもろうたのじゃがどうも妾には性に合わん様でな…」
「したことがないので私には出来ませんね」
「………何故そう言葉を変える、お主の世界の流儀か?」
そう呆れたように童女が言うと道を歩いて行く、景色が変わらないので進んでいるのかも解らないが男性からしたら眼の前の童女にしか頼ることが出来ないので疑問は浮かぶがそれを聞いたせいで気分を害し案内をしてもらえない事になるのは最悪の事態になるので口を一の字に結ぶ。
ゆっくりと歩く童女にもっと速く歩けないのかと意味もなく時計を見ながら考えていると不意に童女が話す。
「…もっと質問をしても良いのじゃぞ? 妾としても話というのは楽しいものじゃし色々と疑問もあるじゃろうて」
「ならまず一つ、外の世界とこちらの世界は時間がつながっているんですか?」
「………気にせずとも良い、こちらにいる限り外の世界との時間は切れておるのでな、ここは無の世界じゃ時の懸念も無い」
和傘をゆっくりと回しながら歩く姿を見て気分が良い、または落ち着いている時はゆっくりと、激しい感情に囚われていると回転する速度も速くなると意味のない観察をして眺める中童女は語りながら歩んでいく。
人と話すのが好きな様に見受けられて、それでいて自分以外に人がいない世界というのはいかに残酷なことなのか男性はこの時感じ取ることが出来た。
眼の前の童女にとってはこの人助けすらも娯楽の一つと言う事、それもどの遊びより面白い道楽なのだ。
「この世界は無じゃから有を好む、様々な世界の生き物をこちらに送り込んでくるので困ったものじゃよ…一回妾の手に余る化物が訪れてな、あの時ばかりは手を焼いたわ」
カカカッっと元気よく笑い声を出すが男性としてはそれどころでなく、どんな化物が暴れたのか気になり声をかける。
「一体どんな化物だったんですか」
「ん? 黒い化物でな、獣のように毛むくじゃらで黒い眼でこちらをちらりと睨んでの、腕っ節に自信はあるんじゃがあれは恐ろしいもんじゃて腕に食らいついて来おった」
まぁ傷はつかなんだがと言う当たり眼の前の童女も同じぐらいの化物なのだろう、時間に余裕があると聞いて心に余裕ができた男性は童女のまた不思議な話に引かれていき景色に対する文句が浮かばず綺麗な赤い和傘を見ながら集中する。
その男性の気配の代わりを感じて楽しそうにもう一度笑うと話を続けた。
「この世界は疲れや空腹に睡眠も必要としないのでずっと戦ってな? 足がよろめいて倒れたら獣が妾を飛び越えて後ろの穴に落ちおった」
「………そう言えばそこら辺にある穴に落ちたらどうなるんですか」
「無に帰る、死ぬのではなくな………どうなるかと言うと妾には解からん、その世界の無の基準で決まるのでな」
「貴女が落ちたらどうなるんですか?」
そう言うと足を止めて和傘の回転も止める、聞いてはいけないことを聞いてしまったのだと思い焦るように言葉を考えるが考えている途中で和傘の回転が戻りゆっくりと歩み始める。
内心冷や汗が流れて顔色も悪くなっていたが幸か不幸か童女は前を歩いていて男性の顔を見ずにすんだ。
「………実を言うと落とされたことがある、ちょうど今のように迷い人を送っている最中にの」
「大丈夫だったんですかそれ」
「落ちて落ちて、どのぐらいかしたら地面があって着地したんじゃ、痛みはあったが生きてはいた」
痛みはあるのかと思うのと同時にどのぐらいの距離を落ちたのか解らないが眼の前の童女で痛いなら普通なら生きてはいないだろう、飛び降り自殺と同義なので自分がそうなる事を想像して鳥肌になっていると童女は低い声のまま続ける。
「此処と同じように白くてな、目の前に階段があるんじゃよ、上にも上がれるし下にも降りれる…妾は降りたんじゃが先は白い塔のてっぺんじゃ、落ちて地面に付いたら妾を落とした女が泣いておってな、腹が立って穴に落としてやったわ」
そう言うとまたカカカッっと笑い和傘の回転を速くさせる、そんな童女に見た目は清楚で可憐なのに対し性質は結構激しい方だと思い社会の出世術のから笑いでその場を合わせて歩いて行くと回転を落ち着かせてゆっくりと歩いている中言葉を話す。
「自分から落ちるのと誰かに落とされるのでは行先が違うらしい、自分から落ちたらそのままこの世界の何処かに落ちてな、階段に行かなんだ」
「登りたかったんですか階段」
「さての…その時は気になったんじゃよあの時登っていたらどうなっていたかとな」
先程の知的でといった意味を男性は把握できた、過去に裏切られた事があるから話が通じない相手なら手っ取り早く送ろうとしていたのだと、それと同時に今は違うが最初は速く送ってくれと思っていたので人で区別せず速く送って欲しいとも思い、同時にこの童女の話し相手ぐらいならば別に良いかとも思い直す。
娯楽の少ない世界で一人で生きるというのは耐え難い苦痛だろう、空腹といった懸念もなさそうだし何をしても無、童女に聞きはしないが死ぬことも出来ないのだろう、恐らくだが眼の前の童女はすでに試していた気がした。
「妾からも質問がある、お主は出会ってから今まで仕事の事しか気にしおらんがそこまで仕事とやらは忙しいのか?」
「私以外の人は慌てたりしなかったんですか」
「………妾の質問に応えるつもりがないのかお主、お主以外のは取り分け仕事でと言うのはいなかったな、皆様々な反応をしておった」
訝しみ最初の方の言葉に怒気を感じたが質問に答えてくれる辺り優しさを感じ取ることが出来る、楽しいか聞かない辺り仕事がどういったものか解ってもいると予想できた、無の世界にいるが知識は豊富にあるのだろう。
その証拠によく語る、頭の良い者は黙り語らぬというが眼の前の童女は会話の中にも知的な部分を感じ取れてそれでいて内容のない話ではないし語り方が上手い。
「さてもうそろそろ妾の質問に答えてもらおう、このままでは妾ばかり損をしておる」
一瞬和傘から顔を出してそう男性に言うとまた顔を和傘で隠し前を歩く、かれこれ三十分程は歩いているが疲れが出ない辺り疲れがない世界というのは本当なのだと思い童女の質問に答えていないのに引け目を感じ始めた。
「そうじゃな、何か面白い話をしてたも…前に来た日の本の者は手毬を和傘で回して貰った故話でなくても良いが」
「急にそう言われても何も面白い話なんて…」
そう言いながら歩いていると気付いてスーツのポケットの中に手を入れて飴を取り出す、居酒屋の会計の時に飴を無料で一つ貰ったのを思い出した、イチゴ味で女性店員から貰った時顔をひきつらせて受け取ったのを覚えている。
いい歳してイチゴ味の飴を舐めるという事に抵抗を感じたが眼の前の童女に渡す分にはちょうど良い。
「あの、こんなもので良いなら差し上げますが…」
「それはなんじゃ? 袋に包まれておるな…何か中に丸い物が入っておるわ」
不思議そうに手に取り触って確かめる、ピンク色の水玉模様の包装で目を見開いて確かめてる姿は歳相応に見えて愛らしく思え、同時にまだ独身である男性に子供の良さを教えるには十分であった。
恐る恐る袋を破ろうとするがどう破れば良いのか解らないのか破りやすくなっている所からではなく水玉の塗装の部分から破ろうとしているのを見て微笑みながら童女の手から飴を取り破って見せる。
「ほら、こうやって破るんですよ」
「ああ!? 綺麗な水玉だからその部分を破らないようにしておったのに………」
そう言って顔を俯かせる童女を見て悲しみが胸を突き抜ける、水玉模様の部分を切らずに出来るがそれを悟れなかったのを見て子供相手の経験の低さを呪ったが後の祭り、子供の慰め方も知らずあたふたと周りに意味もなく視線を泳がせていると童女が低い声で語り出す。
「良い………お主が好意でしたのは解っておるし、そもそれはお主の物、妾がお主を批判するのはお門違いじゃ」
童女は顔を上げるが誰がどう見ても気落ちしていて表情は儚げに微笑んでいる、今すぐにでも消えてしまいそうな雰囲気を晒す童女にどうすれば良いのか悩んでいると不意に童女は飴玉を取り出し手に乗せて動かせる。
「………このピンク色の球はどうすれば良いのじゃ? 使い道があるのかこれは」
「食べればいいんだよ」
「なんと、これが食べ物という物か………初めて目にした」
食べ物自体を知らないというのは数ある世界の中でもここだけなのだろうと思いながら童女を見ていると口に含んだ童女が甲高い声を上げる。
「おお!? なんじゃこれは!? これが味というものか!」
満面の笑みで歳相応に笑いながら和傘を地面に降ろして走りだす、その力強さで地面が揺れるがそれ以上に力強い笑顔と声をあげる姿を見て飴玉一つでそこまで喜ばれるのも気が引けるのと同時に空から光を感じ見上げると空一面に様々な色が爆発しているように弾ける。
見た目的には花火と同じで爆発が消えると同時にまた爆発が起きて鳴り止まない色を唖然として見ていると気付いた少女が立ち止まり興奮したように男性を見上げる。
「すまぬ少しはしたない所を見せてしもうた…妾に釣られて世界が声をあげているのじゃ」
「飴玉一つが世界に影響を与えるなんてこれから先も見ることないでしょうね」
「ここと妾にとってはそれほどのものという訳じゃ、味というのは話では幾つも聞いておったが文字通り味わったのは初めてでな、礼を言うぞ迷い子よ」
そう言うと地面にしゃがみ落としていた和傘を手に取る、着物の袖から出る白くか細い腕を見て話に聞いた獣と殴り合えるとは思えないが事実なのだろうと男性は一人思う。
童女の話が本当ならばこの世界の有を一箇所に集めた存在、自分と同じ物差しで比べることもおこがましく思えて未だ嬉しそうに体を左右に静かに揺らす童女を見つめる。
「さてこれほどの物を貰ったのならお主で言う所の仕事に移るとするか………口を閉じておれ舌を噛むぞ」
そう言うと童女は男性を脇に持ち地面を強く蹴り飛び上がる、強烈な風を受け思わず目を閉じると暗い視界の中今度は浮遊感を感じ、その後激しく落下していると解かる風を下から感じ心の中で念仏を唱えていると地面に激突した音がしそれと同時に童女が脇から離し地面に落ちる。
一瞬落とされたと思い体を固くするがすぐに地面が訪れたので肩透かしを食らいながらも立ち上がると底は一つの塔の天辺であり上から見下ろすと穴と地面、同じ所にあったりもっと高い位置にある、あるいは低い位置にある塔を見ていると隣に童女が静かに移動し下を見下ろしながら男性に語りかける。
「どうじゃ中々のものであろう? 存外此処も綺麗なものでな…有じゃからこそ美しい物はあるじゃろうが無だからこそ美しい物もある、この景色はここだけのものよお主は運がよいな無の景色を見られて」
袖で口元を隠して静かに笑う童女に今度はから笑いじゃなく本当の笑い声で合わせると静かに男性に向き直ると力を抜くと引きこまれそうになる深海の瞳で男性の目を見つめる。
「後は瞳を閉じておればそのうち戻れる、この塔のてっぺんはあらゆる世界につながっておっての、逆に言えば塔に上がりさえすれば何時でも帰れるのよ」
そういたずら好きな子供のように言うと一歩踏み出し下に落ちる、男性が驚く気配を感じながらも慣れた風圧を肌で受け止めながら地面に着地する、凄まじい音を鳴り響かせると差していた和傘をたたみ手毬を出して空に浮かべる。
色鮮やかで花火のような模様をした手毬は白い空の中本当の花火のように浮かび上がる。
今回の話は八千文字超えるか超えないかを狙いながら書ききる事を意識しました、一話と二話共に文字数が少なかったので思い切って多くしたかったんです