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空白の顔

 この話で一番考え込んだ部分はサブタイトルを何にするかです。

 真夏の炎天下の中いかにも億劫だと言いたげな動作で真新しい黒色で塗装されたアスファルトの上を歩く、ふと空を伏し目がちに見上げると雲ひとつ無い青空がどこまでも続いてく。

 所々ビルが邪魔で見渡せないがそれが返って青空の美しさを強調している。空の青色を見ていると喉が乾くような気がし視線を下げ、平日の昼間から外を行き来している人々を見て他人ごとのように労いの言葉が頭の中を過る。


 ふと自動販売機が目に入るが右手からぶら下げたビニール袋の中に入っている三つのアイスの重さを再確認して通り過ぎ服屋が視線に入る。

 店内に入れば太陽から逃れられると解るがどうしても青年の頭の中を自身が店の中に入った姿を想像させる。

 ガラス張りに出来た一部の壁を見ると中には水着が飾ってあり赤や黄色と言った無難な色合いが施されている水着が健康を超えて死体のような色のマネキンに着せられていて、それを眺めると不意に外の景色がガラスに反射されて視線に飛び込む。


 自分以外の人の顔がマネキンと同じなのを再確認しいつものことだと思い、自嘲気味に汗が垂れる頬を少し釣り上げながら我が家に向かい足を向かわせる。

 家まであと少しという所でふと前を見ると人が青年に向かい歩いてくるのが見え知り合いかどうか体型と服装を注意深く観察していると青年から離れ道路の端に行くのを見て知り合いではなかったと安堵し僅かながら坂を歩く足の力が抜けた。


 家の前につくと赤茶色のドアを数回叩くが返事がなく青年は苛立たしげにインターホンを押す、それでも近づいてくる足音が聞こえないので汗ばんだ左手を黒色のジーンズのポケットに突っ込み鍵を取り出す。

 鍵を握ると炎天下の中を歩いていた付だと言いたげに熱を発しているのを感じ素早く鍵穴に入れて回す。ドアを開けて中に入るが人影は勿論無く、自分の部屋かリビングにいるのだろうと思いながら茶色いフローリングで出来たホコリ一つ落ちていない床を素足で歩きリビングの中に足を踏み入れる。


 淡黄色のソファに寝転びながら女物の雑誌を広げている妹が視線に入る、足を左右上下させているので白色のワンピースがめくり上がり黒色の下着が目に入り自分が手にとったアイスの温度のような冷たい目線で妹を見下ろしながら女性の顔の前にイチゴ味のアイスを置く。


 「あっ、帰ってたんだ、気づいたらドア開けに行ってあげたのに」

 「まず一つすぐ帰って来るのに鍵を掛けるな、二つドアを叩いたしチャイムも押した」


 そう言われると青年の眼の前の女性は寝転がっている体制から起き上がりあぐらをかいて座り直すと首を数回上下し青年を顔が無い顔で見つめる。


 「えっ? なんだって?」


 軽く女性に拳骨を下ろしビニール袋から付属品の木で出来たスプーンを渡すと青年は自分も食べる為赤い花が描かれたオレンジ色の絨毯に腰を下ろす、青年の後ろで軽く頭を手で擦りながら女性は立ち上がり軽い足取りでリビングを出て行く。

 軽やかな足取りで刻まれる音を聞きながら帰って来るのを待っていたと思うと同時に袋の中からもう一つのイチゴ味のアイスにその上にスプーンを乗せて空中に浮遊している女性に渡す。


 「これ美玲さんの分です、アレと同じので良かったらどうぞ」

 『いえいえありがとうございます昇さん』


 そう言いながら優しげに微笑む女性に釣られて昇も笑みを浮かべる、薄く透ける女性は天井をすり抜けて行くのを見て自身の妹の所に行ったのだと思い袋からソーダ味の棒状のアイスを取り出す、袋を破くと中からソーダの匂いが鼻に届く。

 夏を感じさせる香りだと思いながら口に運び昔ながらの味だと思いながらテレビのを付けてチャンネルを変えていく。


 昼間というのもありニュース番組が多く顔のない人々が語り合うのをつまらなさそうに見ていると心霊番組に行き着く。

 夏の風物詩のそれを何となく見ていると心霊スポットを入るという企画に入り怖がりながら中に入っていく、廃病院の中に入ると霊能者らしき人物が注意を促すような事を言うが受付にいる二人の女性に気づいている様子が見えないので昇は鼻で笑いながら流れを見守る。

 一人の女性の表情は笑顔で固まっており明らかに緊張していることが伺えた、テレビに緊張しているのかと当たりをつけると女性が言葉を放つ。


 『ほ、本日は何のぎょ………御用でしょうか』


 服装を見るに古くどこか昭和を感じさせる、長らく人と話しておらず上がっているであろう相方を笑いながら口を開く。


 『いやいや先輩この人達私ら見えてませんって、なんで緊張してるんすか』


 そうおちゃらけた茶色い髪の女性を先輩と言われた方は睨みつける、そこまで見て飽きた昇は昼食を作るために買っておいた素麺を作るため席を立って台所に向かう、背後から悲鳴声と笑い声を聞き呆れながら手鍋を手にとって軽く水洗いをしているとドアが開く音がしそちらに顔を向けると服の中に手を入れて背中をかく妹の姿が見えた。


 「げっ………心霊番組ついてる…見てないなら消してよ」

 「えっ? なんだって?」

 「…やりおる」


 一人恐れおののいたフリをしている女性を一瞥すると手鍋の中に二人分の素麺を入れて茹で初め、段々と額が汗ばむ昇を見て女性は少し大きめの器や容器を用意し薬味を机の上に出す。

 綺麗に並び終えると灰色の椅子に座り机に倒れ伏す、顔を伏せながら右手でうちわを扇いでいると机の上にガラスの器に入った素麺が女性の視界に入る。


 「いただきます」


 二人揃ってそう言い素麺に箸を伸ばす、美味そうに啜る女性に反し昇としては食べづらそうに啜る、静かに宙に浮く美玲に申し訳なさそうに啜るのを困ったように笑いながら美玲は見つめる。

 テレビはいつの間にか女性が変えたのかお決まりのバラエティ番組が流れていて、微妙に上手い掛け合いを見ながらガラスの器に橋を伸ばすと氷の感触しかせず、視線をそちらに向けると満足気に女性が手を合わせていて昇の視線に気付くと左目を瞑り柔らかい笑みを浮かべる。


 「50点」

 「お前の笑顔は29点」

 「ちょ、兄貴それだと赤点じゃん」


 そう言われた女性は不服そうにそう言うと空のガラスの器と容器を持って流し台に行き洗い始めるので昇も容器と箸を持って行くと風も起こさずに美玲は昇に近寄ると不思議そうに見つめる。


 『よく笑ってるって解りましたね』

 「…何年アイツと兄妹やってると思ってるんですか」


 そう照れながら自身の妹に聞こえないぐらいの声で昇が言うと美玲は口元を手で隠しながら静かに笑い声を出す、その動作が様になる辺り育ちの良さがうかがい知れた。昇か眼の前で食器を洗っている女性がしてもそこまで似合いはしない。

 自室に戻るために廊下に出ると粘り気のある熱気が昇の体を包み込む、冷房の効いていたリビングが恋しくなり後ろ髪をひかれつつ階段を登る。

 階段を登りきり自室の前に付くとドアノブを引いて部屋の中に入る、自分の部屋ながらも昇は味気なく思いながらも白いリモコンを手に取りエアコンの電源をつける、勢い良く起動するが起動した直後なので生暖かい風が部屋を満たす。


 億劫になりながらも本棚から小説を抜き取り茶色い椅子に座り椅子と同じ色の机の上に手ごと乗せるとページを開く。

 そのままページをめくっているとドアが数回叩かれ意識が現実の世界に呼び戻される、机の上に置いてある妹から貰った時計を見ると一時間半は過ぎていた。

 ドアが開き女性が入ってくると机の上に先程昇が食べたアイスが置かれ、驚いて女性を見ると指を突き立てられる、表情が解らなくともいやらしい笑みを浮かべていると昇が思っていると女性が口を開く。


 「それで1点おまけしてよ兄貴」

 「………はぁ、アイス食べ過ぎて腹壊すなよ」

 「それ兄貴に言われたくないから、今日だって私と同じ味のとそれ食べたくせに」


 そう言われ黙る昇に女性は腕を少し引いて小さく「ッシャ」と呟く、眉をひそめる昇を見て急ぎ足に部屋から出る女性を見て昇は軽く頭を掻いてアイスの袋を開ける。

 冷たく広がるソーダの味を堪能し終えると棒を袋の中に入れてゴミ箱に捨て、再度本を開き物語の中に入り込む。

 どうも、今回のはあんまり満足出来ない結果になりました、特に後半が酷いと思います、こればかりは自分の力量と話を作る想像力が足らないからですね…。

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