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真・恋姫†無双-獣達の紡ぐ物語-  作者: わんこそば
第四章 空の記憶退行/黒白の殺し屋
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82話 25番目の死神2

「ぐっ……」



一瞬で真後ろに移動され、ソードを背中に突き付けられた愛紗は今まで感じた事のないぐらいの生命の危機を感じた。



「お前の命には興味は無い。だが、これも世界の為だ。死ね」



振り下ろす為にソードを一度引いた隙を見逃さず、愛紗は振り返って青龍偃月刀の一撃を加えた。

完全にソードを構え直そうとしていた為にガードが出来ず、バックステップでそれをギリギリ躱した。



「何⁉︎」



殺った。

そう愛紗は確信していたにも関わらず、無傷である事に思わず驚声を上げた。



「俺は侮っていたようだ。お詫びしよう」


「貴様、何者だ!今のを躱すだと⁉︎」


「俺は対軍強襲用戦術兵器、アレンジタイプ025。隻眼の死神とも呼ばれている」



いつだか聞いた、その隻眼の死神。

先天的に戦闘を得意とする遺伝子を持ち、天才的なセンスで戦うことの出来る者達。

それらの遺伝子を解析し、ナノマシンとして誰でも戦闘の天才となれる夢の研究だった。

現実はとてもそうは行かず、負荷に耐えられなければ死んでいくおぞましいもの。

愛紗はあの言葉を理解出来なかったが、目の前のソレを見て、馬鹿げた天才加減を目の当たりにした。

自分よりもはるかに強い空を難なくダウンさせたのだ。



「確か、ブジンと言うものは誇りというもの持ち合わせているようだったな。なら、一撃を浴びせようとした事に最大の敬意を払ってこちらも力は使わずに俺自身の力を持ってお前を殺そう」



ライフルとソードを地面に刺し、右手を前に伸ばした。

右手に光が集まり、槍のような棒状のものを形成し始める。



「R.I.P-LSW/L09」



細身で、装飾は一切なく、黒と赤で塗装された西洋槍が光の中から現れた。

それを手にした死神は何度か試し振りをしながら調子を確かめ、肩に担ぐようにしてそれを構えた。



「我々死神が扱う数多くある武器の内の一つ。神殺しの槍(ゴッドスレイブ)とも呼ばれている。これでお前と同じ土俵に立った。小細工なしの俺の力、見るがいい。これが俺にできる最大の返礼だ」



愛紗は目の前の死神が本気であると理解し、偃月刀を構え直し、攻撃に備える。



「…行くぞ」



死神が振るう槍は、愛紗の青龍偃月刀の振り方と根本的に違った。

薙ぐ、叩き潰すと全く別の、斬る、刺すという西洋の棒振り。

全体的に体を使った振りではなく、柄の部分を主軸にした回転を加えた鋭い一撃。

回転により溜められた速度エネルギーは大きく、愛紗の重たい一撃を正面から弾き飛ばす。



「ぐっ……‼︎」



早く重たいその一撃は次々に愛紗の攻撃を跳ね返し、更には隙を突く一撃すら飛んで来る。

3合も打ち合えば、愛紗の攻撃は殆ど届かなくなっていた。



「驚く事はない。俺達、死神は戦いの天才。お前の動きはもう覚えた。当たる事は無い」


「ハアアアアァァァァ!」



愛紗の空中からの振り下ろしは、すんでのところで回避された。

カウンター代わりに蹴りが飛んで来る。

器用に偃月刀の柄を使ってガードするが、衝撃が骨身に響く。

動きは目でしっかり捉えられている筈なのに当たらない。

少しずつ、愛紗から余裕が削られていく。



「これが闇の中で暮らして来た強さだ、光しか知らぬ者よ」


「闇だと?」


「俺達は決して歴史には残されない裏に住む。どんなに叫ぼうが、その叫びは光に住む者達に届かない。苦しみ続けた末の力がこれだ!」



死神はバックステップで一度距離を取ると、体をバネした勢いで加速して迫って来る。

愛紗はカウンターを狙うため、死神を見定めた。

突っ込んで来た死神だったが、愛紗に攻撃を加える直前に何かを感じ取り、距離を取った。



「それを……待ってた」



頭から血を流し、右目が完全に塞がれた空が構えたP90から僅かな煙が上がっていた。

先程まで気を失っていた空は、死神が大きな隙を作るまで気を失っていたフリをしていた。

その視覚外の一撃は当たる事はなかったものの、見事に死神の動きを止めた。



「今は邪魔をするな!」



死神が空へ突っ込んで来る。

空もマチェットナイフを掴み、死神へと向かって走る。

フル加速して迫って来る死神は、腕を前に伸ばして突きの速度を更に一段加速させる。

空はそんな死神に正面から突っ込むと……

槍の鋭い突きを正面から受ける事なく、空中へと逃げた。

空が回避を選択した事により、死神は勢いを殺せずに通り過ぎて行く。

死神が振り返ると、視界には空中でひっくり返りながらもP90を構える空と、グレネードの影が映った。



「何ッ⁉︎」



咄嗟にガード態勢を取り、体を庇うように守ると、空がP90から銃弾を発射。グレネードを射抜く。

撃発装置部分を撃ち抜かれたグレネードは撃針を無理矢理作動させられ、雷管を撃発させた。

死神の目の前で爆発したグレネードは、爆煙で死神を包み込んだ。

半ば無理矢理にグレネードを撃ち抜いた空も、上手く着地出来ずに地面を転がる。



「相変わらず読みの甘い奴だ……」



空は左肩を押さえながら立ち上がると、



「早くここから離脱するぞ……詳しい事は後で説明……ぐっ⁉︎……傷が響くな…」



愛紗を引っ張ってその場から離脱した。


対軍強襲用戦術兵器

隻眼の死神の正式名称です。

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