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真・恋姫†無双-獣達の紡ぐ物語-  作者: わんこそば
第四章 空の記憶退行/黒白の殺し屋
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80話 働き蜂


空は銃をしまうと、少し警戒しながらもアレイオンから降りた。



働き蜂(ワーカー)とはよく言ったものだ。証拠は?」


「これでよろしければ」



そう言って取り出したのは、ローンウルブズの部隊章とドッグタグだった。

それを見せられた空は確認するが、それが本物だと分かっている空はホーネットが用意周到であることに心底呆れた。



「いつの間にこんなものを……用意周到だな。それで、元義賊でいいんだな?」


「ええ、そこを強調されることは遺憾ではありますが、貴方様の言う通りの元義賊です。ホーネット様は義賊の中でも優秀な人材に声をかけて集め、再教育を行なって頂き、今に至ります。因みに、私は義賊ではありましたが、更に元が付きますが、帝に仕える文官でありました」


『英語は大丈夫か?』


『ええ、ある程度の日常会話なら』



空の英語での問いに、スラスラと同じく英語で返した働き蜂に、空は少し驚きながらも関心していた。



「文句の付けようもないな。なんて呼べば良い」


「名前は捨てましたので、ワーカーとお呼び頂ければ」


「早速だが本題に入りたい。まず、お前がワーカーであるなら他にキラービーと呼ばれる奴もいるな?」


「はい、お察しの通りでございます。私達ワーカーの他には武に長けるキラー、情報を纏めるのに長けたクイーンがいます。ホーネット様は例外で、この中には当てはまりません」



空の質問にワーカーは丁寧に答えると、「なるほど」と納得していた。



蜂の巣(ビーハイブ)ってところだな。ソルジャーはいないのか?」


「ソルジャーと呼ばれるのは今教育を受けている者達がそれに該当するかと」


「よく考えられている。ファントムはこれを?」


「勿論承知しております」



そうかと一言、安心した声音でそれを発すると、空は再び双眼鏡で幽州の街を観察する。

見える光景というのは、あまりに見窄らしくなってしまった城壁、人が復興を目指して活動する姿。

活気には溢れていないものの、それでも復興しようとする人々の姿が空の目に見て取れた。



「それで、街の情報は?」


「先日の戦闘により街は半壊したものの、奇跡的に死者は出てはおらず、現在は復興の最中であります。住民らに事情を聞いたところ。敵は1人でありながら防衛部隊を壊滅させ、半日で街を破壊していったとのこと」


「1人の上に半日?どんな奴か情報は?」


「それが、ローブで姿を隠しており素性が分からないのです。住民達も口を揃えて同じように言っていました」


「相当な戦闘力を持った奴か。戦いたくはないな……。ソイツが今どこにいるかはわからないか?」


「残念ながら私達が調査しても何の痕跡もありませんでした。足跡一つすら残されておりませんので、今どこで何をしているのかも掴めておりません」



「……そうか」と納得する空だが、その半日で幽州を壊滅させた人物を懸念していた。

もし仮に空が幽州を滅ぼすとして、大掛かりな装備をしたとしても早くて1日半はかかる。

自身ですら半日以上かかる戦闘を、たった1人、しかも半日で幽州の機能停止に追い込んだのだ。

実力面で言えばその人物は空よりも遥かに上回る。

任務中とは言え、リハビリを兼ねている空にとって、今その人物と鉢合わせするのは非常によろしくない。

善戦どころか相手になるのかさえ怪しいところだ。



「戦闘のあった砦に案内してくれ」


「了解致しました」



先ずは相手の扱う武器を調べなければならないと空はワーカーに砦まで案内させた。




「何だこれは………」



砦について早々、空はその原型すら留めてない砦を見て絶句していた。

滅茶苦茶どころかグチャグチャである。

一体何をすればこんなになるのだろうか?

空は自身が扱う武器で模索してみるが、そんな武器は見当たらない。

兵器を使って無理矢理にぶち壊したとしか表現しようのない目の前の砦は、それほどまでに酷い有様だった。



「爆発跡に弾痕……斬撃による無数の傷。断面は滑らかで非常に切れ味がいい事が推測できる。本当に1人だったのか?」


「生き残った者からはたった1人だと伝えられています」



空は聞いた俺が馬鹿だったとばかりに溜息をこぼした。

1人でこれだけの事をした人はもはや人間と形容していいのかさえ怪しい。

もう化け物か兵器と呼んでもいいぐらいだ。



「こんなの、俺でも勝てないぞ……」



空が嘘を言ってはいない事に愛紗は気付いた。

あからさまに戦いたく無いと顔をしかめているぐらいだった。



「関羽、試しにそこの壁を偃月刀で斬れ」


「は?」


「良いから斬れ」



強く言われ、愛紗は言われた通りに砦の壁を青龍偃月刀で斬り込んだ。

愛紗の手から放たれた斬撃は壁の一部を削り、傷跡を作り上げる。

傷は襲撃した人物と同等のレベルだが、大きさが違った。

不思議に思う空だが、その理由に気付き、



「よし」



ローブの下に隠していたマチェットナイフを取り出すと、その斬られた傷の下に同じく斬り込んだ。

同じような傷跡ができるが、それでも傷跡は浅く、とてもその人物が行なった斬撃とは程遠い。

だが、空が結論を出すのには十分だった。



「その人物は左手に似たような刃物を持っていたと。威力からして君の両手持ちの斬撃と同等クラス。それを片手で行なったと……。下手にやり合えばミンチだな」



化け物具合がどんどんと浮き彫りになり、ますます戦いたくなくなる空は、壁に開けられた弾痕を見ながら、その人物がどのような装備をしていたのか推測する。



「右手には大口径のライフル。左手にはロングソードクラスの剣。左手の斬撃は武将と同等、右手のライフルの威力は攻撃ヘリに搭載する機銃と同等か、それ以上。歩く戦車か何かなのかソイツは……」


「それが袁紹が得た力の正体だったのですね。それが今野放しになっているとは危険です。他のワーカー達にはその人物を見かけた際には即時離脱するように進言しておきましょう」



ワーカーが連絡の為に離れていくと、空は砦に開けられた弾痕を触りながらその戦闘のあった様子を調べていた。



「この弾痕……どこかで」


「見たことがあるのですか?」


「多分だけど、ある。前のいた場所だが……確かあの時は……ッ⁉︎ マズイ伏せろ!」



愛紗の質問に答えながら、似たような状況が前にあった事を思い出して、愛紗の首根っこを掴んで伏せさせた。

その瞬間、何かが通り過ぎて砦にぶつかった。



「やはり来たか!」



空はその場から離脱しながらローブの下に隠していたP90を取り出して構えた。

愛紗も急いで態勢を立て直して、青龍偃月刀を構え直す。

構えた時、戦闘もしていないのに血がローブにべっとりと付いており、空は投げられた何かを理解した。

さっきまで人であったソレは、五体満足とは言えない状態で砦の壁に張り付き、血を垂れ流していた。

愛紗も空につられてソレを見て、敵が来たのだと理解した。



「俺は25番目の死神。悪いがこちらも仕事何でな、そこの女には死んで貰うとしよう」



放たれる重圧でその敵である人物が只者では無いと理解させらる2人。

ただ、次に発せられた言葉には2人して耳を疑った。



「久しぶり、ソラ」




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