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真・恋姫†無双-獣達の紡ぐ物語-  作者: わんこそば
第四章 空の記憶退行/黒白の殺し屋
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74話 2人から見たソラ

徐州の街を、街民と比べるといささか変わった格好をした2人組が歩いていた。

この時代に存在する筈のないメイド服に身を包み、市で買った物を抱えながら歩いているのだが、2人は街民の目を引いていた。



「もう、あのバカ!絶対に許さないんだから!」


「落ち着いて詠ちゃん」


「今度こそ、絶対一発ぶん殴ってやるわ!」



理由としては、2人に頼み事をした一刀に詠が起こっているだけなのだが、フリフリ揺れるメイド服のスカートへと街民達の目が行っていた。

そうとも気付かずに詠はプンスカしていたが、ある建物の屋根の上で読書している人物を見つけ、動きを止めた。

街民達は見えそうで見えないロマンが終わってしまい、残念そうに普段の日常へと戻っていく。

屋根の上て読書をしている人物は目をキラキラさせながら竹簡を開いて読んでいた。



「やあ」



詠と月の存在に気付くとニッコリと笑いながら挨拶をするソラ。

いくら何でも屋根の上で読書をするのには詠と月はどう反応すべきなのか迷った。



「ねぇ、なんであんたがこんな所にいるのよ」


「散歩だよ。この街は凄く面白いからね。歩いてるだけでも新しい発見があるんだ。この竹で作った本なんて初めてみたよ。それより君達は……確か…」



首を傾げながら彼女達の名前を記憶から探るが、残念ながら彼女達と話した記憶はなかった。

別の手段でここ数日の記憶を探り、彼女達を呼ぶ名前を探った。



「月と詠と呼ばれていたね。どっちが月で、どっちが詠かは忘れたけど」


「何回このくだりやるのよ!ってそう言えばあんた、今普通じゃなかったわね……。いい、私が詠で、こっちが月。ちゃんと覚えた?」


「大丈夫。ちゃんと記憶したよ」



詠はソラに二度目となる自己紹介をすると、ソラはニッコリ笑いながら右手を詠と月に向けて、親指を立てた。

そして、竹簡をたたむとそれを持って屋根から飛び降りて来る。



「……っと。ありがとう。いい時間潰しになったよ」



たたんだ竹簡をさっきまでいた真下の家の中へと投げると、はわわあわわと驚いた声が聞こえるのと、また来いよと店主の声が聞こえて来た。



「それより動いていいんですか?まだ病み上がりでは?」



月が心配そうに聞くがソラはそんな心配はいらないよとばかりに元気そうだった。



「それなら大丈夫だよ。僕は戦う為に作られたから、戦闘で負う傷は一週間程で完治するんだ。だから目覚めた時にはもう完治してる。とは言ってもこの傷、全部僕自身によるものだけどね」


「あんた本当に人間?」


「よく人は、僕の事を化け物だとか、人外だとか言うけど人間だよ。刺せば血が出るし、食べないと生きてはいけない」



そう言うと月と詠から買い物の荷物を受け取る。



「重いでしょ?持ってあげるよ」


「そんな、悪いです!私は大丈夫ですから」


「そんな重そうな顔しといて大丈夫には見えないよ。目的地は一緒だから僕はたまたま通り掛って、たまたま僕の手に荷物が飛んで来た。そう言うことにしといてよ」



笑いながらソラは歩き始める。

2人分の荷物を持ったソラの視界はほぼ遮られて見えないが、この人通りの多い道で誰1人ぶつかる事なくスラスラと避けるように歩いていく。



「あんた、よくぶつかんないわね」


「簡単だよ。自分のベクトルと、聞こえる足音の間隔、音の遠さから相手のベクトルと距離を出して計算すれば、どこまでがぶつからないか分かるんだよ」


「もう何言ってるのかほとんど分からないけど、それ出来るのあんたぐらいよ」



呆れる詠だが、月は「凄いですね〜」と感心していた。

詠は「そんなもの歩きながら計算出来る奴なんていないわよ」と月に説明する。

今のソラがそんな事を一瞬で次々に演算出来ているのは死神としての力によるものだが、月と詠の2人にはそんな事など知らなかった。

ソラは2人の会話を聞きながら相変わらず人を掠るかとなく避けていく。

そんなこんなで道を歩いていると、ある店から泣き声が聞こえて来た。



「うゔ……何故だ。何故、私は肝心な時に倒れてるのだ!戦で恩を返すどころか、何も出来ずに寝具の上で寝ていただけだぞ!天はそんなに私の活躍する場を奪いたいのか!」


「落ち着いて白蓮」


「これが落ち着いてなどいられるか!うゔ!」


「もぐもぐ」


「おお!恋も私を慰めてくれるのか!」


「いや、恋は何も言ってないよ⁉︎むしろ食べてるだけだよ⁉︎」



食堂屋の外に設置された席で白蓮、優二、恋の3人が座って食事をしており、白蓮の愚痴を聞いていた。

白蓮を宥める優二だが、それでは収まらずたまたま通り掛った恋にすら泣き言を漏らす白蓮。

恋はお構い無しに食べ物へとがっついていた。



「ねぇ、あれ……」


「あれは見なかった事にしなさい」


「そうするよ」



ソラが立ち止まろうとしたのを詠が遮り、見なかった事にさせた。

ソラも何も聞かずに歩きだし、その場を後にした。

またしばらくすると今度は



「あ、私の帽子ー!返して!」



と自分の帽子をカラスに奪われ必死に叫んでいる女の子がいた。



「ちょっとだけこれ持って貰える?」



そう言いソラは2人に荷物を預けるとその場で勢い良くジャンプした。

普通ジャンプは1メートルちょっと飛ぶのも凄いだが、ソラのジャンプは地面を少し抉り、一瞬で帽子を奪ったカラスと同じ高さまで飛んだ。



「悪いけど、それは返して貰うよ」



帽子だけを華麗に奪い返し、地面に着地する。

女の子に帽子を返すと拍手喝采が巻き起こるが、ソラは片膝を地面についたまま動こうとしない。

詠と月が近寄って見れば、ソラの顔は脂汗をかいていた。



「ごめん。ちょっと待って貰えると嬉しいな……着地を失敗したみたいで足の骨が折れたみたい」



格好良い出来事もその一言で台無しだった。

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