2話 敵襲
11月14日 大幅改稿
「死にたくネェならその高そうなもの全て置いて行ってくんねぇかな?」
「そうそう、俺達はちょいとこの辺で縄張りを貼ってるモノなんだがぁ」
「抵抗しなければ命までは取らねぇから……ッ⁈」
バスッ!
減音された銃声が最後に賊の口上を述べようとしていた者の命を一瞬にして散らした。
頭を撃ち抜かれ、仰け反るように地面を転がった。
「な、なんだ⁉︎」
「か、隠れ⁉︎」
何が起きたのか理解が追いつかず、その倒れた者に目が行ってしまう。
その瞬間、大量の銃声と共に交戦が始まった。
ズタタン!タターン!バス!
様々な銃声が森にこだまする。
弾のソニックウェーブの音が残酷にも賊達の戦意を喪失させていく。
ただ、人が大勢いて大した事ないだろうと軽く考えてしまった故の末路だった。
ただ、ありえないと賊達は祈るしかない状況で、15人も撃ち返しがない事に驚きを隠せなかった。
それでも誰も口にその事を出さず、一方的に銃弾の雨を降らせ続ける。
躍起になり槍などを手に、叫びながら走ってくる盗賊達に容赦無く弾は、胸、頭を貫いていった。
「こんなの嘘だぁぁ!」
「死にだぐなぁい!」
ついに逃走を図る賊が現れ始める。
しかし、その逃走を図るには遅すぎた。
「王手だ。十字砲火開始」
ファントムが指示を出すと、今まで直線的な面攻撃から完全殲滅なさんとすべく銃弾が交差する点攻撃へと変貌した。
賊達は逃げる事を許されるず、その場に次々と倒れていく。
戦闘時間3分も経過せず、決着はついた。
その場に残ったのは先頭を走った賊1人だけだった。
周りを見渡せばそこに広がるのは血の海。
と、大量の人の死体。
少し前まで一緒に酒を酌み交わした仲間は誰1人として生きてはいなかった。
恐怖に押し潰され、涙を流す事も忘れて逃げようとした刹那、上から何かが降ってくる。
その降って来たのは一瞬で逃げようとした賊を組み伏せ、首筋にナイフを当てる。
「Freeze.(動くな) It's all up to you whether make or break this chance.(このチャンスを生かすも殺すもお前次第だ)」
「やめてくれ!死にたくなぁぃ!」
「Huh?」
賊を押さえつけていた空は思わずナイフを引いてしまう。
自分の喋る言語とは全く違う事に戸惑いを隠せなかった。
どうしようか悩んだ末にファントムへと指示を求めた。
「隊長、これ日本語」
「はぁ?取り敢えず通訳を頼む」
「了解」
空は一度咳払いをすると、日本語で賊に語りかけた。
「動くな。動かなければ命は取らない」
「え?」
今度は賊が驚く番だった。
自分の知らない言語を喋っていたのがいきなり自分と同じ言語を使ってきたのだから。
「もう一度言う。動くな。動けばその首を切り落とす」
語気を強めて言われ、賊はコクコクと頷いた。
空は賊の手を後ろへと回し、縛り上げる。
手慣れた手つきで賊を無力化した。
空は無力化された賊の前に移動すると、自身のハンドガン、ベレッタ90-twoを向ける。
「さて、お前は誰だ?」
「青林!俺の名は青林だ!」
「何故襲ってきた」
「俺達は賊だ。人を襲って糧を得ている」
その一言は強烈だった。
賊なんてAK小銃片手にトラックとか使って襲ってくる者だと思っていたからだ。
まさか時代錯誤も甚だしい槍を片手になんて考えもしなかった。
「さて、他にも質問をさせてもらう。全て答えろ」
「分かった、なんでも答えるよ。だから殺さないでくれ」
それから空の質問は1時間近く続いた。
ローンウルブズのメンバー達に伝わるように英語で通訳しながら、ここの場所やら、聞ける事全てを聞き出す。
「信じられないっす」
「お、同じく」
「で、これからどうします?フェルカーモルトに合流って明らかに無理ですけど」
「空、この辺に集落が無いか聞いてくれ」
「了解。……この辺りに集落は?」
「あ、ある。この北にある道を北上したら小さな集落が1つだけある」
「……そうか」
「ひ、ヒィ……」
「殺しはしない。お前の処遇はその集落に委ねる」
空はそう言うと賊を立たせた。
賊は抵抗出来ず、空になされるがまま引っ張られる。
「ところで皆さん。これって何か分かります?」
そしてホーネットが差し出したそれは一枚の白く不気味に輝く紙だった。