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真・恋姫†無双-獣達の紡ぐ物語-  作者: わんこそば
第三章 戦乱の目覚め
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61話 質 V.S 物量

さて、モノを言うのはどっち?

「撤退するぞ!」


「こっちも撤退なのだ!」


「こちらも撤退だ。後退しろ」


『応ッ‼︎』


「追えー!袁紹様の元に首を届けろ!」


『ウオォォォ!』


「袁術様の為に戦果をあげろ!」


『応ォォォォォォォォォォ‼︎』



愛紗、鈴々、星の三者三様の言葉で前線は撤退を始めた。

しかし敵は数を減らしながらも追撃を開始する。

戦闘を始めて半日が経つ今、袁紹、袁術連合の戦力はジリジリと削られている。

24万いた兵士達は既に2万ほど減らして22万になっていた。

数だけで見ればそうでも無い……のだが、一刀達が削られた戦力は恐ろしくなるほど少なかった。

その功績を挙げているのが、やはりローンウルブズである。

機械仕掛けの150連迫撃砲から、ソラ、ゴーストの開幕強襲。

開幕から出鼻を挫かれた敵にとってローンウルブズはかなり脅威になっていた。



遠くで戦いの戦況を静観しながら、黙々と準備を進める部隊。

恋とローンウルブズのファング、レイン、ドッグ、ファットマンの遊撃部隊だ。

ファントムの指示により彼等は愛紗達が釣った敵と本陣を分断する役割を持っている。

しかし、この遊撃部隊からは戦う前の殺気など微塵も感じられなかった。



「まるで獣だな……」


「あれは野獣だ、野獣」


「猛獣の類だろ、アレ」



双眼鏡で追撃を掛ける敵を見ながら、それぞれ思った事を口にするドッグ、ファング、ファットマンの3人。

この3人からは殺る気など一切感じる事が出来ない。

レインと恋もぼーっとしており、この部隊やる気あるのか?と兵士達は呆れていた。



「さて、と。じゃ、そろそろやりますか」


「アレ分断させるの?かなり怠いよー」



どうやらレインには双眼鏡がなくとも見えているらしく、心底面倒そうに言った。

しかし出来ないと言わないところが、腐っていてもローンウルブズである。



「ソラ坊も頑張ったみたいだし、こりゃ俺達も頑張んないとボーナス出無いかもな」


「そりゃ困る。ならソラより戦果を挙げる!」


「てかよー。俺達、ボーナス出ても何に使うかって話になるんだが」


「娯楽……と言ってもこの世界じゃ限られるか。じゃ、何に使うか……アレだな、老後の為の貯蓄だな」


「おいおい。俺達、老後まで生きてんのかよ」



ファットマンの冗談に笑いながらツッコミを入れるファング。

けど、このジョーク一般人にとって笑える要素は一つも無い。

早死にする前提での冗談だ。



「ほら、それより早くしないと挟撃部隊が大変な事になるよ。前衛をどこで分断させる?5万、それとも10万あたり?」


「じゃ、8万前後を孤立させるとしますか」



レインに答えたのはドッグだった。



「で、8万ってどの位だ?こんな大人数相手にするの初めてだからな。数の感覚が分からん」


「そんなもの、テキトーで良いんだよテキトーで」


「まっ、どうせその8万と戦うのは本陣と挟撃部隊だし、少し多くても大丈夫だろ?」


「まっ、何かあったら隊長達が何とかしてくれるさ」



かなり他人任せな発言に兵士達はこれで良いのか?と思ってしまう。

しかし、何か言えば返ってくるのは鉛弾だろう。



「良い加減始めよう。じゃないと、ファントムに何言われるのか分からん」


「そうだな。じゃドッグ、頼んだ」


「こちら、遊撃部隊。これより作戦を開始。敵を分断する」



ドッグがファントムへと無線を入れる。



「じゃ、始めようか恋ちゃん」


「………コクン」



こうして、やる気の無い遊撃部隊の攻撃が始まった。






「ウヒョヒョヒョ!そんなんじゃ、俺達はやれないよ」



レインは気味の悪い笑い声をあげながら、設置されたM2重機関銃を撃っていた。

発射される.50BMG弾は、兵士1人の鎧どころか2、3人を平気で貫いていった。

愛紗、鈴々、星の部隊に追撃をかけていた袁紹、袁術連合軍兵士は横からの不意打ちに対応出来ず、被害が大きくなる。



「装填完了、いつでも撃てる」


「じゃ、撃つぞ」



更にレインの隣ではファングとドッグがH&KGMG(グレネードランチャー)を撃っていた。



「ほらほら、さっさと道空けないと死んじまうぞー」



ファットマンが無人で走るダートバイクに目掛けて対戦車ミサイル(ジャベリン)を撃った。

ダートバイクに命中し、ミサイルの信管が起爆。

更に、ダートバイクに括り付けられたRDX爆薬に誘爆し、大規模な爆発を起こさせた。

熱波と衝撃波で兵士は焼けるか、吹き飛ばされる。

大規模な爆発により半径100メートル程は何も残らない焼け野原となった。

まさに、即席の走る爆弾である。



「ヒュー、熱いね。じゃ、もう一台いってみますかっと」



そう言いながら、もう一台あるダートバイクを走らせると、ジャベリンのミサイルを装填、再びダートバイクに狙いを定める。



「それにしても運がなかったなお前等。そもそも俺達に挑むってのが間違いなのに」



ファットマンはジャベリンのトリガーを引いた。

カチンッ!と音を立てると、ミサイル本体が発射させる。

ダートバイクに命中すると同時に再び大爆発。

大勢の兵士が空中を舞った。



「弾が切れた。恋ちゃんに合流するぞ」


「オーケー」


「じゃ、やりますか」


「面倒だが、いくか」


「一撃与えて離脱を繰り返す。馬を借りるぞ」


「「「了解」」」










「お客さんだぜ、隊長」



双眼鏡を手にバイパーは言った。

ファントムも双眼鏡で後退してくる部隊と追撃して来る敵を確認すると、ヘルメスを呼ぶ。



「ヘルメス!ストライカーのエンジンを始動させろ。M61バルカンはストライカーに設置したか?」


「もちろんだぜ、隊長。発射速度は抑えてあるから弾の心配は要らない。心配するのは敵に味方がやられない事だけだ」


「敵が通り過ぎた後に部隊を展開。銃撃するときはいつもより下を狙え。離れているとは言え流れ弾はマズイからな」


「どれ位下げる?3度くらいか?」



ファントムに射角を聞くバイパー。



「各自好きにしろ。頭狙わなければ当たらない距離だ」


「了解、なら心臓を狙うか」



返って来た答えに頷くと、挟撃隊のメンバー達はアサルトライフルのチャージングハンドルを引いた。

ガシャンッ!シャキンッ!などの金属音を立てて初弾が装填される。

セーフティーをかけ、追撃部隊が通り過ぎるのを待つがその多さに眉が眉間に寄ってしまう。



「おいおい、お客さんが随分多いな」


「あいつ等……わざとだな。仕方ない、こちらで対処するぞ」


「面倒臭い仕事を早く終わらせるっすよ、ハルトマン」


「分かってますよジョーカー」




そう言うと、臨戦態勢を整え敵が通り過ぎるのを待った。









愛紗、星。鈴々の部隊は無事敵を釣ることに成功、ドッグ達による分断にも成功した。

ただし、分断され孤立した敵部隊の数はおよそ8万。

純粋な数だけで見ると2万程敵の方が多い。

前衛部隊は後退しながら敵を減らしてはいるものの数が数だけに減らしきれない。

渓谷に展開している本陣へとまじかに迫っていた。




「来たよカズ君」


「ああ。……総員抜剣」



一刀の号令により兵たちは剣や槍、斧を構えていく。



「関羽、張飛、趙雲と合流後、敵を殲滅する。いくら挟撃とは言え気を抜かないでくれ」


「応ッ!」



兵士達の士気も十分で返事にも覇気が伝わってくる。

その間にも前衛は後退してきて、敵も追撃してくる。



「総員迎撃用意!」



整えられた動きで敵を見据える兵士達。

前衛部隊は邪魔にならないように左右に分かれ合流を開始。

敵との距離も残りわずかになる。



「迎撃開始!」



一刀の合図と共に、武器を構え迎撃を開始。

敵との交戦が始まった。



「こんな狭いとこなんてどうって事ねぇ、押し込めぇ!」


「死ねぇ!」




袁紹、袁術両軍は勢いを強めて北郷達が率いる部隊と交戦を開始した。

圧倒的な兵数でゴリ押しする袁紹、袁術軍に対して、一刀率いる本陣は徹底的な防御で迎撃をする。

渓谷だけあって双方の兵が戦う場所は狭く、一度に戦う人数も少ない。

その甲斐あって質で勝る一刀達が優勢だった。



「クソが!もっと押せ!」


「数で押し込め!」


「死体を踏んででも進め!」



しかし、袁紹、袁術軍のゴリ押しは更に増す。

絶え間なく敵を倒し続けるが、袁紹、袁術軍の猛攻に兵達は疲弊し始める。

その疲れが隙を生み、物量に押されだした。



「開けた!進めぇ!」


「敵を踏み潰せ!」


『応ォォォォォ‼︎』



物量で押せるとなると、兵の士気は瞬く間に向上。

袁紹、袁術軍の勢いが上がった。



「邪魔だ!」



一刀は自身の刀を振り、敵を切り倒す。

しかし、押し込まれ陣形が乱れた為か乱戦へとなっている。

気付けば一刀の回りは敵だらけになっていた。



「死ねぇぇ‼︎』


「後ろだよ!」



一刀の後ろに回りこんだ敵からの攻撃を優二がガードする。

ガードと同時に攻撃を弾かれ硬直させられる兵士。

優二はその隙を利用して敵を袈裟斬りで倒す。



「すまない、優!」


「大丈夫だよ。それよりまだ来るよ」



一刀と優二の周りには既に兵が取り囲んでいる。

物量で攻めれば勝てると分かった兵達は同時に攻撃を仕掛けた。



「死ねやぁぁ‼︎」


「「くっ⁉︎」」



死角からの攻撃に2人は気付くのが一瞬遅れ、まさに攻撃が迫っているピンチ。

剣戟はもう2人の背中に届くような距離だった。



「ぐはぁぁ⁉︎」



しかし、届く手前で衝撃を食らったように体かくねり、その勢いのまま地面に倒れた。

ギリギリのところでソラがMASADA(アサルトライフル)を敵に撃った事で難を逃れた。



「空!」


「空君!」


「……周囲を良く確認しておけ」



ソラは完全に戦闘状態で冷徹な響きで一刀達に返事を返すと、一刀の後ろから攻撃しようとしてる兵の首を掴み、鎧の中にピンを外したグレネードを放り込んだ。



「ほら、どうする?」



ソラは余裕の表情で敵を捌きながら、グレネードを入れた兵士を集団になっている場所へと蹴り飛ばした。

グレネードを突っ込まれた兵は異物を慌てて出そうとするが、なかなか掴めない。

数秒たった頃にようやくグレネードを掴み取り、鎧の外へと出せるが爆発。

それが仇となり、被害が大きくなる。

敵の心理を突いた汚い戦法である。



「もう少し耐えろ。そろそろ挟撃部隊が殲滅してこちらに来る」


「分かった。皆んな!もう少し頑張ってくれ!」


『天の御使い様の為に!』


『北郷様の為に!』



一刀の鼓舞で兵達の士気が向上し、次第に押し返し始めた。

再び陣形が整え始め、敵は攻めあぐねる。



「隊長?まだ時間はかかる?」


《もう少し待て、敵の量が多い》


「了解……時間を稼ぐ」



ソラは弾切れになったMASADAを自陣へと放り投げると、新たに調達してきたポンプアクションのソードオフショットガンを取り出した。



「装弾数2発……十分だ」



ソラは12ゲージ弾をセットすると、敵集団に突っ込む。



「来たぞ!あの敵だ!」


「何としてでも殺れ!」


「取れば出世間違い無しだ!やっちまえ!」


『ウォォォォ‼︎』



ソラが開幕の危ない奴だと分かるや否や、袁紹、袁術軍の兵士はその首欲しさにソラに向かって突っ込んだ。

ソラは敵の量を確認しながら、ショットガンの他に、ナイフとグレネード2個を取り出した。

ナイフは口に咥えると、グレネードのピンを抜く。



「死ねやぁ‼︎」



一番槍と言わんばかりに攻撃を仕掛ける袁紹兵士。

攻撃をするりと躱すと同時にショットガンを頭に向かって発砲。

兵士は至近距離で散開し始めたばっかりの12ゲージ弾をモロに受けた。

12ゲージ弾により頭が潰れ倒れ、即死する兵士。

更にソラは屍と化した兵士を影にしながらグレネード2個を投下。

爆発により兵士達は吹き飛ぶ。




ソラの猛攻により敵の量が薄くなった場所ができ、ソラはその中心に立つ。

口に咥えていたナイフはグレネードが無くなった事により手に移動し、ショットガンもコッキングされ次弾が装填される。



《後10秒だ》


「了解」



挟撃も大詰めになり、耳を澄ませば後ろから銃声が聞こえて来る距離まで近付いていた。

ラストスパートと言わんばかりにソラが駆け回り戦場を掻き乱す。



「「……す、凄い」」



その暴れる光景に一刀と優二の二人はついてこれなかった。

一刀も優二も幾度となく戦場を戦い抜いたのだが、目の前で戦う戦士(ソラは異常だった。

武器をとっかえひっかえしながら敵をばったばった倒していくのだ。

ショットガンの弾がなくなれば、それを捨てハンドガンに切り替えるし、ナイフを敵に投げつければ落ちている剣を拾って使っている。

敵に囲まれていても顔色一つ変えずに戦闘を続けていた。

それで無傷なのだから異常さが際立っていた。

そして気付けば奥からメガホンで拡大された声が聞こえてくる。



「警告する、お前達の負けだ。今すぐ武器を捨て投降しろ。お前達以外はすべて投降した」



ファントムの声である。

メガホン片手に、将官の捕虜を多数連れてきており、後ろではストライカーが威嚇射撃をしていた。

これには兵もまいったのか次々武器を捨て、投降していく。



「さあ、一刀君。後は好きにするといい」



戦闘が終わり、それまでの疲れが一刀にどっと押し寄せ地面に座りこんだ。

そんな一刀のもとへ余裕の顔で歩いて来たファントムはそう言うと、ソラのもとへ行ってしまう。



「か、勝ったぞ!」


「お、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」



気付けば勝利の言葉を吐き出していた。

兵達も雄叫びを挙げ勝利を噛み締めた。

一日目の戦闘が終わり、ほっとする一刀達。

しかし二日目、三国史上もっとも悲惨な戦いとして有名になる。




1日目の戦況  北郷軍損失1万  袁紹、袁術軍 捕虜を含める損失9万(孤立した部隊は7万)






ちゃんとしていれば物量が強いのは明白です

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