59話 両陣営、戦闘準備
一刀達、徐州側は袁術、袁紹同盟軍撃退に向けて戦闘準備を進めていた。
攻められた影響で砦が一つ落とされ占領されている事以外、特に被害は出ていなかった。
一刀達は砦の数km離れた場所に陣を取り、作戦会議をしている。
しかしどこか暗い。
その理由は敵の戦力差にあった。
一刀達が準備出来た兵士は使える者達と義勇兵を集めて6万人。
対して、袁術、袁紹同盟軍は24万人。
つまり、兵士1人につき敵を4人殺さなければ勝ちはほぼ無い状況だ。
けど戦うのは6万の内、前線の一部だけだ。
先頭を繰り広げるのは前線だと考えると、かなりな数を相手にすることになる。
前線が崩れた瞬間、20万の軍勢が本陣へと押し寄せて殺戮の限りを尽くすだろう。
つまりは策を弄さない限り負けは確実に近い。
「では、こうしよう」
朱里と雛里、音々音が必死に地図を見ながら使える案を絞り込むなか、ローンウルブズの隊長ことファントムが口を開いた。
「戦闘準備が整い、お互いが睨み合いになった頃合いに我々が強襲を仕掛け敵を混乱させる」
「ちょっと待て。それでは卑怯者では無いか!」
ファントムの意見を否定したのは愛紗だった。
まだ戦闘へ発展してない状態で、一方的に攻撃を仕掛ける事は卑怯者だと武人ならではの考えだった。
「俺も愛紗に賛成です」
「カズ君が反対なら僕も反対だよ」
「ああ、私も愛紗に賛成だ。卑怯者になるならぐらいなら堂々と戦って散った方が武人の誇りと言うもの」
「鈴々もそれはやっちゃいけないと思うのだ」
「………コクコク」
一刀達が揃ってファントムの意見に反対した。
それに対してトッグは「ふーん」と小さく言う。
「悪りぃが、スポーツと違って戦争にルールなんて無いのさ。死人に口無し。卑怯なんて所詮弱者の戯言。勝った者がルール。それが、世界の常だ。所詮ルールなんて暗黙の了解でしか無い。だから敵も宣戦布告無しで攻めて来てんだろ?」
「でもそれじゃ、あいつ等とやってる事が変わらない」
「いいか、それは強者の言う台詞だ!」
ドッグには珍しく声を荒げた。
それに気付いたドッグ自身は咳払いをして続ける。
「今のお前達は俺達が今ここで暴れた瞬間潰れちまう弱者だ。ソラ一人にすら勝てないぐらいにだ。生き残る為にはなんでも使え。なんの為に俺達がいる?俺達はただの置物じゃ無い。使い方次第ではあらゆる敵を食い殺す一匹狼だ。命令しろ、敵を殺せ、潰せと」
「そうだ北郷。この戦いで兵より先に切り捨てるものがあるとするなら、俺達だ」
珍しく空の隣にいるゴーストが口を開いた。
「太守なら太守らしくしてみせろ」
次に言った一言が一刀と桃香の胸にグサッと突き刺さる。
ただでさえ一刀は太守としての自覚が薄い。
それは今までの一般人として生き方がそうさせているのだろうが、ここではその生き方は通用しない。
「そうっすよ。俺達なんの為にいると思ってるんすか?傭兵っすよ、傭兵。けしてyo!hey!とかじゃないっすよ」
「つまりは使いこなして見せろってことですよ」
「でも、それで良いんですか?」
ハルトマンに言われ聞き返す一刀。
ハルトマンは聞かれる事が予め分かっていたのか、落ち着いた雰囲気で答える。
「ええ、私達は戦う事の為に生きてると言っても良いぐらいです。 何時でも死ぬ覚悟は出来てます。と言っても私は一度死に損なって生きてるんですがね……」
「…………」
「そろそろ決断しろ、時間が惜しい」
話の展開の遅さに苛立ちを覚えたゴーストが催促する。
すると、今黙っていた桃香が口を開いた。
「じゃあ、愛紗ちゃんが突撃の号令を出した時に突っ込んで貰うってのはどうですか?」
「無茶言うな……まあ、出来なくは無い。問題は誰がやるかだが……」
無茶な要求に苦い顔をするファントム。
そんな無茶な作戦とも言えるか怪しいものをこなせるのは数限られて来る。
ファントムの視線に気付いたゴーストが鼻で笑う。
「強襲は俺とソラの2人でやる。俺とソラなら失敗する事は先ず無い。一定の結果を上げる事が出来る。いけるなソラ?」
「もちろん」
「そういう事だ」
あっという間に強襲部隊が決まった。
しかし、一刀は腑に落ちない様子。
それを見た空は一刀へと向けた、冷徹とも言うべき言葉を投げる。
「俺は傭兵だ、一刀。使い捨てろ」
「そんな事は絶対に駄目だ、空!お前を使い捨てるぐらいなら他の案を考える。その方が絶対に良い」
空自身を大事にし無い事に一刀は怒った。
少しの間とは言え友達と思い過ごした日々を簡単に切捨てようとする空に対して、一刀はその繋がりを大事にしたいと思ってる。
しかし、一刀が怒りを露わにしたところで空には一刀の気持ちなど響かない。
「この程度で死ぬとでも?笑わせないでよ。認めたく無いけど、俺は切り裂きジャックと呼ばれた傭兵。殺す事だけは何よりも優れてる。それに今、他の案を出す余裕も無い。彼女達3人が考えてる案を無理矢理変更する方が駄目だ」
「なら、お前はそれで良いのかよ!」
「俺は……」
「やめろ空。それ以上は言うな」
「……了解」
空が「俺はそれで良い」と言おうとしたが、ファントムに止められてしまう。
渋々頷き、言う事を諦める。
空が数えるしか居ない友達を簡単に捨てようとする事を阻止したファントムはホッとしつつ、時間があまり無い事もあり別の卓で案を練り出している朱里達へと向く。
「出来そうか?」
「ある程度は固まりましたが、被害をもう少し減らせるように案を改善しています」
「今固まってる具体的な案を教えてくれ」
いつ敵が動き出すか分からない為、ある程度先に準備をしてしまいたいファントムは朱里に現時点での案がとうなのかを尋ねた。
「はい。先ず、前線部隊が敵部隊と交戦。その後、隙を見せながら撤退、付近にある渓谷に誘い込みます。そのまま押し込まれたフリをしつつ敵後方に部隊を展開、挟み撃ちにしちゃいます」
「これだけの案なら十分だ。ここに山があるな、後ここ。ここにイーグルとストームを配置する。それとさっきも聞いた通り空、ゴーストを開幕突っ込ませる。この案とは相性は良く無いが、敵を誘導するぐらいなら出来るだろう。挟撃隊は我々に任せてもらう。それで良いけるか?」
「はい。問題は無いですが……2人を5里(2.5km)離れた山付近に配置する理由は何でしょうか?」
ファントムと意見を交換している中、イーグル、ストームが別行動をする理由が気になる朱里。
こんな敵もろくすっぽ見えない場所に配置しているのだから、疑問に思って当然だ。
それに対してファントムは愚問だなと心の中で言う。
「狙撃だ。山に陣取る理由は狙える距離を増やす事、敵を視認し易くする事の2つだ。普通この時代の敵に対してこんな距離を取らなくても大丈夫だが、念の為の天の兵対策だと思って良い。狙撃組2人には敵の将を潰して貰う。これで敵の士気を落としつつ混乱させる。勝ちは間違いは無いだろう」
ファントムに説明され、洛陽で空が行なった狙撃を思い出す。
あの時に聞いた発砲音の轟音なら確かに離れていても大丈夫だろうと推測すると、雛里と音々音と最後の確認を終える。
地図を畳み、案を伝える為に3人は一刀達の下へやって来る。
「では、改めて作戦を伝えます」
「先ず、愛紗さん星さん、鈴々ちゃんが敵部隊と交戦し敵を釣って貰います……」
「鈴々が先陣やりたいのだ!」
「落ち着け鈴々。あくまで敵を釣るのだぞ。無闇に突っ込むのは駄目だ」
「そうだぞ鈴々。突っ込むのは愛紗の乳ぐらいにしておけ」
「せ、星‼︎」
星のジョークに愛紗は声を荒げながら叫ぶ。
また顔も赤みがかっている。
しかし、顔が赤くなっていたのは愛紗だけじゃなく一刀も突然の事に驚きつつも顔を赤くしていた。
「しょうがないから、先陣は愛紗に譲るのだ……でも絶対勝つのだ!」
「決まりましたか。愛紗さんが先陣。鈴々ちゃん、星さんは愛紗さんの援護で大丈夫ですか?」
「ああ」
「大丈夫なのだ」
「ああ、大丈夫だ」
「恋さんには開幕遊撃隊として展開して貰い、その後挟撃部隊に加わって頂きます」
「………コクン」
将全員の確認が取れた事で、ついに戦が始まる直前の空気となる。
「じゃあ皆んな!勝つよー、おー!」
『おー‼︎』
桃香が喝を入れると、それに賛同し気合を入れていく。
その一方で、ゴーストはファントムに近づき、他の誰にも聞こえない声でファントムに話す。
「隊長、ブラッド・ダイヤモンドの技の使用許可を」
「許可する」
隠し玉の許可を貰うと、ファントムの隣にいる空の肩に手を置くと確認を取る。
「やれるなソラ?」
「問題は無い……だけど、使いこなせるかは分からない」
「あの時のお前は全て完璧にこなしていた。大丈夫だ」
空の心配を払拭するゴースト。
また、その横では
「では、私は偵察してきますので、血の気の多い皆さんは戦闘でも楽しんでてください」
「おいおい、今頃何しに行く気だよ」
「敵部隊に細工するに決まってるじゃないですか」
ホーネットが今頃になって敵部隊に細工しに行くと言うと、直ぐに天幕を出て行った。
ホーネットが行うであろう小細工を知ってるバイパーは心なしか顔が青い。
「怖ェー。アレぜってぇヤバい事だぜきっと」
「まっ、楽になるんなら良いじゃないっすか?」
「期待はしておこう」
「だな」
場所は変わり、袁紹、袁術連合軍の天幕。
そこでは巨人の雷槌とカーチス・ランバートが作戦会議をしていた。
「ここと、ここ。後は、ここ。狙撃ポイントだと思うから気を付けるように。たぶん狙撃手は、ローンウルブズ主力のイーグルだ。彼は以前、ロシアの特殊部隊で有名なスナイパーだった。遠距離からの一撃は確実に頭を射抜く。狙撃に必要な計算を全て暗算してるのにも関わらず、敵を視認してから撃つのに掛かる時間は3秒も無い。狙撃ポイントに入った際は不規則な動きで5秒までが限界と考えて良い。それ以降は生死に関わるから直ぐに離脱する様に」
「オーケー、ネ」
「視認してから撃つのに3秒とは、化け物だな」
カーチスはイーグルの化け物っぷりに心底驚いていた。
カーチスの知り合いでも超長距離を視認から3秒で撃てる狙撃手など聞いた事がなかった。
「そう、彼は間違い無く化け物だ。軽迫撃砲を肩に担いでヘリを落とすぐらいに、だ。たが、それより警戒すべきなのが……」
『切り裂きジャック』
全員が声を揃えてその名を口にする。
「他のあだ名は特殊部隊キラーなど……彼は圧倒的とも言うべき実力を持っている。因みに、彼が切り裂きジャックと呼ばれる原因となった事件を俺はまじかで見ている。で、確認されている中で最もヤバいのが、銃弾落としだ。こちらの撃った弾を弾でぶつけて落としてくる。イーグル並みにヤバいか、それ以上にヤバいかもしれ無い。確実に前線に出てくる筈だ。考えられる位置は前衛か遊撃、このどちらかだろう。だから最初は、彼を避けつつ様子を見る。敵が隙を見せた時に、武将の1人や2人、とらせて貰うとしようか」
『了解!』
「今回の戦い、数ではこちらが有利だが、質はあっちが圧倒的だ。狂った猟犬から道化師、タフガイ……それから亡霊に蜜蜂、大蛇や大嵐などなど……名前からしてヤバい奴等ばっかりだ。確実に勝つ為には、策を使う。上手く味方を隠れ蓑にしつつ敵の背後に移動、奇襲を仕掛ける。殺人鬼が気づかなければ、我々の勝ちだ」
全員が作戦の確認を終えると天幕を出て行く。
1人最後に天幕の出口に差し掛かると
「とらせて貰うぞ、ファントム」
と、呟きファントムへ下剋上を宣言した。
両陣営の作戦会議を世界の歯車のアドミニストレーターは見ていた。
「うーん、楽しみだ」
「どうしたアドミニストレーター?」
今まで黙って見ていたアドミニストレーターがいきなり口を開いた事に疑問に思うルーラー。
「いや、彼がどう選択するのか気になってね。もう一度全てを奪う死神となるのか、戦士として仲間と共に戦うのか……楽しみだ」
「答えは分かってるんだろう?」
「ああ、勿論さ。彼にはシエルをぶつけさせる。一度……事故とは言え、手にかけた弟だ。シエルを見た時、ソラの記憶が無理矢理開かれるだろう」
「止めはし無いが、たぶん混乱するぞ。暴走の可能性だってある。それに俺を見ても反応は薄かった」
「その時はシエルに薬を打ってもらうように言ってあるよ。空の記憶を縛っているナノマシンを不活化させる薬だ。どうなるかは分からないけど、やってみる価値はあると思うけど?」
「初めからそっちが狙いか……」
「僕も見ただけで覚醒するとは思ってないよ。この薬を打てばナノマシンは不活化し、いつかは元のサイファーに戻る。計画変更も必要無いってわけだ」
「俺にはお前の計画なんてどうでも良い。俺の目的は殺戮だけだ。……次の正史に近い外史へ行く」
そう言ってルーラーは出て行ってしまう。
「戦うためだけに造られた君の運命と言うべきか。君もサイファーも戦う事しか知らない。まるで誰かに植え付けられてるみたいに……」
ルーラーの後ろ姿を見ながらポツリと呟いたアドミニストレーター。
ソラとルーラーを良く知る彼は、何故2人が戦いを求めるのかを作った原因である人物の事を考え始める。
そして、いつしか不気味な笑みが零れ始めた。
「ハハハッ!さて、あなたの掛けた呪いを解かせて貰いますよ、シム・バートニー博士」
不気味に嗤うアドミニストレーターの声が、部屋全体へと響き渡っていた。
「斬らせずして斬る!撃たせずして撃つゥ!!卑怯ぉなどと所詮弱者の戯言ォ!!勝った者が強者!それが全てよぉっ!!!」
と言いながら僚機に攻撃を仕掛けましょう。
「下衆が、報酬に目がくらんだか」
と言われ敵対しますが、このゲームシリーズの僚機に攻撃を仕掛けるのは伝統です。
faは少し特殊ですが、スティグロさん潰せるし……
騙して悪いがサブクエ達成の為なんでな、死んで貰う。
初めてプレイしたのはAA。
どうでも良いけど、最近になってVD買いました。




