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真・恋姫†無双-獣達の紡ぐ物語-  作者: わんこそば
第三章 戦乱の目覚め
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54話 政務をする筈が……

生まれるべきではなかった

これに魅力を感じてしまうのは何故だろう

ギャング襲撃から一週間が経った。

一刀達に怪我は無く終わったのだが、襲撃者全滅と言う結果になった。

一件落着なのだが、納得のいかない人物が2人。



「もう!なんでこんな事してるのさ!」


「文句なら隊長に言え」



レインと空の2人だ。

彼等は店を半壊させた挙句、襲撃者を全員射殺すると言う暴挙に出た。

応援を呼ばなかった事と、襲撃者の勝手な処理、更に護衛対象を危険に晒したと言う名目でローンウルブズの隊長ことファントムにこっ酷く説教された上で、ペナルティを課せられた。

そのペナルティとは一刀達と共に政務の事務処理だった。

レインにとってはそれは苦痛でしかなく、認可のハンコを押すだけなのに根を上げていた。



「もう嫌〜……」



項垂れ、力尽きるレイン。

対する空はレインの隣で一刀から適当に奪った案件を片付けていた。

しかし、無言で着々と片付けていってる。

すると、急に立ち上がり一刀の元へ歩いた。



「一刀、政務官にこことここが合わないと伝えて」


「お、おう」



そう言って空は一刀に書簡を渡す。

書簡を受け取った一刀はその問題の箇所に目を落とした。

問題の箇所に、付箋紙でここがおかしいなどと丁寧に書かれる事に一刀は驚く。



「それと、これは終わったから」



一刀がまだ書簡の確認をしてる途中に、空は別に終わったか書簡の束を一刀の机に乗せた。

これでもか!って位の量に一刀はもうどう反応すべきか困り果てた。

量って言っても少なくない。

一刀が半日掛けて片付けていた量をたった2時間足らずで終えていた。



「で、他のノルマは?」


「え、えっと、今日はもう終わりだ」


「それはどうする?」



一刀が呆気に取られて答えていると、空は一刀がまだ片付け終わってない書簡を指差して言った。



「流石にこれは俺がやるよ。もう、先に上がって良いよ」


「いや、隊長に疑われると困るからここで待機してる」


「そう」



一刀に色々と言っている空は文官にも見えなくない。

ただしこの男、れっきとした傭兵だ。

更に切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)などと言う二つ名まで存在している。

この世界に来てからも既に多くの犠牲者が出ている。

だが、今は一刀達がその獣とも言うべき強さの空の手綱をにぎっている。

周りの文官、武官達からは危険だと言われながらも一刀は聞かなかった。



用件を終えて空は作業していた椅子に座った。

隣では未だにレインが、気の抜けそうな声で認可のハンコを押し続けていた。



「てかさー、ソラの言ってる事が全く理解できないね」


「俺もなんでこんな事やってるのか理解出来ないよ」


「なんで、そんな速さでこの量片付けれるの?なに、コンピューターか何かなの?」


「人間だ」



レインに言われ、少し不機嫌そうに答える。

しかし、レインは空が言った発言があり得ないって表情になった。



「自覚無さ過ぎでしょ!そう言ってるけど、もう人外に片足どころか、胸まで浸かってるからね。ここ来る前に発表された人外に突入人間ランキング。何とかスキルランキングたっけ?それで59位とか地球最強生物真っしぐらだよ!」


「俺より強い奴ぐらい居る」


「何処に?ソラの上に58人しか居ないんだよ?それで世界危険人物ランキング1位なんだから手の付けよう無いよ」



レインの言った事に空以外が構った。

一刀、一刀に用があり入って来た朱里、雛里。

後、セキトを連れて通り掛かった陳宮こと音々音。

恋は相変わらずだった。

世界、危険人物、などと言う単語に雛里は既に涙目。

部屋に入って来て直ぐ一刀の後ろに隠れてしまった。

朱里は書簡を落として空をまん丸にした目で見つめてかたまっていた。

音々音の方は身近にいた人物がここまで危険だったと初めて知った様子だった。



「あの〜、レインさん?その世界なんとかランキングってのは?」


「えーっと、確かアメリカが勝手に付けたランキング。軍やPMCが戦った相手を元に、今までに起こった出来事にポイント付けてランキング化したって感じかな?危険人物の方は単純、1年でどれだけ世界に影響与える事をやったかで決まるランキングだよ」


「へ、へぇー………」



冷や汗を大量に流しながら一刀は反応した。

つまり、空は自分の居た世界で相当な”やんちゃ”な事をして来たという事が一刀の脳裏を突き刺した。

下手したらそこら辺の殺し屋よりも危険極まりなく、まさに時限式の爆弾を腹に抱えた気分だ。



「因みにソラは1年で350位から59位になってるから。もう、向かうとこ敵なしみたいな。1年でオーストラリアの特殊部隊からアメリカのシールズとか相手に単騎殲滅しちゃうからね。あちこちの国から入国禁止って言われるレベルだよ」


「とかと言うと……」



恐る恐る聞く一刀。



「もちろん、イギリス、イタリア、フランスなどなど。多くの特殊部隊に被害出したからねー、アメリカなんかは空を捕まえて研究しようとしてるぐらいだよ」



一刀は心の中で「うわぁ……」と呟いた。

目の前にいる空。

彼は世界中の人気者だった。

ただし、捕まると研究所行きの。



「でも、隊長が指示しないと殲滅はしないから大丈夫だよ。世界からは最強の番犬とか言われてるしね」


「それくらいにしろ。俺を人じゃないみたいに言うのをやめろ」


「まぁまぁ」



色々好き放題に言われてる事に気分を害した空は、レインを威圧する。

一刀も空を宥めに掛かっていた。

すると、恋が廊下で固まっている音々音を連れて一刀の元へ歩いて来た。



「ご主人様……お腹、減った……」


「そう言えば、もう昼か」


「……コクン」


「どうする?どこかに食べに行くか?」


「……コクン」



一刀の質問に全て頷きで返す恋。

一刀は次に空達に一緒に行くかどうかたずねた。



「空達はどうする?」


「俺はいらない。護衛はレインに任せる」


「ちょっ⁉︎どこ行くの!」


「お前といると俺の話しばかりで嫌だ」



不機嫌な顔で席を立つと出て行こうとした。

ドアノブに手を掛けた時、空が開けるよりも早く別の誰かドアを開いた。



「ソラ坊居るか?…おっと」



空を探していたらしくちょっと焦った様子のドッグ。

目の前に探していた人物に少し驚くが、直ぐに用件を伝えた。



「丁度良い、一緒に来いソラ坊!下の地下牢で例の嬢ちゃんが暴れているらしい。メンバー何人かで止めに掛かってるが武器を持って興奮してる所為で手が出せん。手を貸せ」


「分かった」



走り去って行く2人。

レインは頭を掻きながら置いてかれたかなと言う表情していた。



「ありゃりゃ、大変そうだ」



しかし、内心とは別にまるで他人事の様に言うレイン。



「行かなくて良いんですか?」


「俺はカズっちの護衛。ほら、どこ行くの?ちょっと楽しみなんだけど。あと、あの赤髪の小ちゃい子も連れてこう!」



そう言ってレインは一刀の手を引きながら、部屋から連れ出すのだった。

この後、大食い2人によって一刀の金が吹き飛んだのは言うまでも無い。

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