50話 暇を持て余した狼の遊び
「……ここは?」
空は目を覚ましたが、視界に映るのはボロボロに破壊された炭鉱跡のゴツゴツした岩肌の天井では無く、建物内の天井だった。
寝かされている事に気付いた空は起き上がるが、激しい怠さに襲われる。
更に自分の服もコンバットスーツでは無く、私服の黒いパーカーとタイガーストライプ柄のボトムに着替えさせられていた事に余計に混乱を覚えた。
「止めておけ。今動くとその体に堪えるぞー」
寝かされていたベットから立ち上がろうとした空を止めるファング。
格好は真っ黒のコンバットスーツなのだが、その上に胡散臭そうな白衣を着ていると言うなんともカオスな格好をしている。
「ファング⁉︎」
「そんな驚く事か?」
「それよりここは?まだ、終わって__」
「何を言ってんだ?もう2日経ったぞ。お前はその間ずっと意識は無かったから分からないがな」
「2日⁉︎」
空は自分の意識が無かった時間を聞いて、最初のファングが現れた時よりも大きく驚いた。
今まで長い時間意識を失った事が無い空は冗談じゃ無いのか?とも考えるが、そんな空を気にせずファングは空の” 貫通銃創があった ”二の腕を診始める。
「それにしても不思議だ。数日前に撃ち抜かれた筈の二の腕は完治。しかも、あの破壊された場所にいた筈のお前は、血だらけのボロボロだったが無傷。人間かお前?」
「多分……人間…?」
「そこは自信持って答えろよ!」
空の自信無さげにドッグは勢い良く突っ込みを入れた。
しかし、自分でもその回復力を信じられない空は自信なんか持てなかった。
「まあ良いが。お前の気を失った原因は不明。後半日は安静にして置くように。以上だ」
「ファングが医者やってる⁉︎」
空に診察の結果を伝えるファング。
しかし、医務室の窓から現れた自由人はそのファングの姿に驚きを隠せず驚いている。
「おいレイン!俺は元々軍の衛生兵部隊所属だったんだぞ」
「何処を間違えたらこんな大人になってしまったんでしょうねぇー」
更に窓から顔をだしたのはホーネットだった。
ニコニコしながらファングの悪口を正面から言うホーネットに、ファングも応戦する。
「一番マトモじゃ無いお前だけには言われたくないな。ホーネット」
更に言い合いはヒートアップして行き、どちらかが手を出す寸前まで行ったところで他のメンバー達が医務室に顔を覗かせた。
「おっ、集まってんじゃん」
「本当っすね。何の集まりっすか?」
「ジョーカー。ここは医務室…」
「それもそうだったすね。まっ、馬鹿だったから仕方無いっすけど」
医務室に現れたのはファットマンとジョーカー、ハルトマンの2人組。
次々現れる一匹狼達のメンバーにやれやれと溜め息を吐くファング。
「それにしてもお前等。医務室に何の用だ?」
「えっ?勿論、本当に医者やってるのか見に来ただけだけど?」
「この格好を見て分からんのかおのれは……」
「だって、向こうの世界じゃ殆ど専属の医者に任せてたじゃん」
「って、それもそうだったな」
自分達の世界にいた事を思い出して納得するファングを他所にレインはズボンのポケットに手を突っ込んで何かを取り出した。
「それよりも、ポーカーやろうよ!折角トランプだしたのにやらないとか勿体無いでしょ」
「おっ、賛成。丁度暇を持て余してたんだよ」
「イイっすね。自分も参加するっすよ。勿論、ハルトマンも参加するっすよね」
「貴方に言われると断りようも無いので参加しますよ」
「勿論、ソラもホーネットも…って、ホーネットは?」
「あいつは放っておけ。いつも何を考えてるのかよく分からん。ほら、ソラ坊こっち来い」
こうして朝からポーカーなどで遊び始める空、ファング、レイン、ファットマン、ジョーカー、ハルトマンの6人。
時間も忘れてトランプゲームをしていた6人は昼になった事すら忘れて盛り上がっていたが、1人の来訪者で崩れ去る。
「……お前等。何を……している?」
『………あっ』
隊長に見つかったメンバー達はイタズラがバレた子供の様な反応をした。
ファントムの眉間には血管が浮き出て、今にも怒ると意思表示にメンバー達は顔色を悪くしていった。
こうして昼時に医務室から響く怒鳴り声に侍女達は驚いたと言う。




