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48話 目覚めてならぬ悪意

ナニカサレタヨウダ

これであるゲームが浮かんだら同志

旧炭鉱跡から少し離れた場所で一刀達は固唾を呑んでモニターを見ていた。

しかし、ある一部の映像がノイズで見れなくなった。



「あ、あれ?」


「どうしちゃったの、ご主人様?」


「ファントムさん」



一刀はファントムを呼ぶと、ファントムはその見れない映像を見やる。

すると、顔色を悪くした。



「マズイぞ、ジャミングだ………『ドッグ!ポイントFの1へ向かえ。空が何かに巻き込まれた可能性がある。それと、ゴーストには絶対行かせるな』」


《ラジャー》



ファントムの顔には焦りが浮かび、すぐ様無線のスイッチに手を掛けた。

あまりの焦り具合に無線の応答主であるドッグも素直に受け応えた。

しかし、ファントムの言った単語の中の一つに一刀は疑問を浮かべる。



「ジャミングって、どう言う事ですか?」


「何者かが、意図的に空に接触した可能性がある。電波障害でこのポイントだけがノイズが起こるのは有り得ない」


「それってヤバイんじゃ……」


「いや、腐っても空は空だ。負けるとは思わん」


「な、なら」


「問題はそこだけじゃない。侵入口はさっきまで俺達が塞いでいたはずだ。それを掻い潜り空に接触出来る奴は相当の手練れだろう」



「ヤバイんじゃ……」









「ターゲット確認、排除開始」



人間味を感じ無い程の無機質で冷淡に呟いた空はコンバットスーツの上や、ホルスター、グレネード、邪魔になる物を脱ぎ捨て、黒い長袖のインナーになると、ブレードをルーラーへと向けて構えた。

そして、以前の奇襲で銃弾を受け、包帯を巻いていた箇所は何事無かったかの様に回復をしている。




「まさか覚醒の前にこんなのを残して来るとは……あの博士め、どこまでこうなる事を読んでいた!」



ルーラーは毒付くと、死神鎌(デスサイズ)を空を薙ぐように振るった。

音速を超えた死神鎌は空気を切り裂く音と共に空に迫ったが、空はブレードだけで受け止めた。

ブレードと鎌がぶつかり合った事で火花が散り、金属音が響く。



「やはり受け止めるか!なら、支配者(ドミネーター)モード」



ルーラーはそう言うと右目を赤く輝かせる。

それと、同時にルーラーの放つオーラも変わる。

一言で言うなら、殺意だけ人を殺せるぐらいのプレッシャーを放っていた。

そのルーラーの姿を見た空は無機質な声で喋り始める。



「敵の状態変化を確認。支配者モードと断定。非活性状態(ディアクティブ)では不利と判断。最適モードを選択………完了」



空であって空で無い声音でそう言うと、空の右目が赤く不気味に輝き始める。



「アンチモード、反逆者(ファアレーター)モードを起動します」


「なに⁉︎」



空に起きた事が予想外過ぎたルーラーは驚き、鎌を振るうのを止めると一度距離を取る。



「ここまで、準備していたとは……ククッ、ハハッ!面白れぇ!目覚めて無いとは言え、本気の兄さんの力を久しぶりに見れる。楽しませて貰うぞ!」


「…………」



今度は空がルーラーへと迫った。

風切り音と共に一瞬で真横に移動すると、ブレードを有り得ない速度で振るった。

その瞬間、ボンっ!と言う音を上げ、ブレードを持っている腕に切り傷が生まれる。

しかしそんな事など、どうでも良いかの如くブレードは迫った。

ルーラーは鎌をブレードにぶつけ、防ぐと、お返しの蹴りを空に放つ。

しかし、空も同じく蹴りを放ち、足がぶつかり合う。



「強くなり過ぎだろうよ。まだまだぁ!」


「…………」



空とルーラーの攻防は相殺し合い、これと言ったダメージを互いに与える事が出来ない。

そして驚きなのが、空の回復力だった。

音速を超え、ソニックウェーブで傷付いた体を一瞬で治癒してしまう。

その結果、空の体は無傷だが、黒いインナーがボロボロになっていた。

そして、それを見る賊の頭はそのあり得ない速度の戦闘と、自身の斬られた傷に頭を真っ青にしていた。



(なんなんだアレは⁉︎ これじゃまるで悪鬼だ)



内心そう呟いた頭の近くにルーラーが放った鎌の衝撃波が飛んで来る。

衝撃波は壁に突き刺さると、一部を破壊して破片を飛び散らせる。

頭は横で気絶している少女、柊を守る為に傷ついた体を動かし柊に振りがかかる破片をその身で受ける。



「ぐっ!」



破片が体のあちこちに刺さり、痛みによる苦痛の声を上げながらも、頭は柊を全力で守っていた。

しかし、そんな頭の頑張りは他所に空とルーラーの2人は炭鉱を滅茶苦茶に破壊しながら戦闘を繰り広げていた。

炭鉱を支える支柱はバキバキに折られ、壁には大穴が開き、地面は衝撃波などで抉れている。

それこそ、崩落するレベルの破壊行動だ。



「チッ!埒が明かない」



ルーラーは毒付くと、懐からコルト・パイソンを取り出した。

パイソンをクルクル回すと、持っている手がブレる。

その瞬間、マズルフラッシュが6回現れる。

速射、不可視の弾丸(インビンシブルバレット)と呼ばれるその技は相手に気付かせる事無く殺す技なのだが、空はブレードを振り回し6発全ての弾丸を弾いた。

そして、地面に落ちているM9を拾うと今度は空の腕がブレる。

15発のマズルフラッシュと共に放たれる弾丸はルーラーの急所を的確に狙って来ていた。

それを鎌を振りながら防ぐが、一発がルーラーの肩を掠る。



「面白れぇ!面白れぇよ、兄さん!ここまで高ぶるのは久しぶりだ!なぁ、後どれだけ傷付ければ死神として目覚める?半殺しか?」



ルーラーは狂気の笑みを浮かべながら空へと迫った。

空もルーラーを斬りつける為に走り出す。

2人の距離が残り2メートルと迫った瞬間、2人の中心で一発の炸裂弾が炸裂する。

ルーラーと空は咄嗟にガードするも炸裂した破片のダメージを負う。

そして、その弾を撃った人物は片手にはM82A2バレットライフルが小さく見えてしまう程の大きさの対物ライフル持っていた。



「ルーラー、ここまでだ」


「邪魔をするなスコルピオ!」



炸裂弾を放った人物、スコルピオに激高するルーラー。

ルーラーが炸裂弾を喰らってもピンピンしてる事にスコルピオはやれやれと手でリアクションをした。



「何お前熱くなってるんだよ。お前の行動にシエルは激おこだぞ」


「…………チッ」


「まあ、空虚な殺戮者(ジェノサイド・サイファー)が相手なら熱くなる理由は分かるが__」



スコルピオとルーラーに呼ばれる男は一息つくと、更に続ける。



「時と場合を考えろ。復活して間も無いお前では出せる力に限界がある。あの胡散臭い博士が残した遺物だ。オリジナルナンバー相手に戦える様に戦闘プログラムが組まれている。ここは一旦立て直しだ」


「……わーったよ」



渋々納得したルーラーはスコルピオの後ろへと歩いて行くと、ふっと消えた。

ルーラーが消えるのを確認したスコルピオは、意識が朦朧としている空へと向く。



「よっ!サイファー、久しぶりだな。いや、今は切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)だったか?」


「……ゴフッ!ぐっ…お前は誰だ?」



普段の空に戻っていたが、蓄積したダメージで血を吐き出しながら、スコルピオを睨みつける。



「俺か?俺は猛毒の尻尾を持つ蠍(ポイズンテイル・スコルピオ)。お前と同じくオリジナルと呼ばれた1人だ」


「……血塗られた(ブラッド)ダイヤモンド?」


「へぇー、覚えてるじゃんと言いたいところなんだが、お前が失っているのは11歳からの一年、隻眼の死神としての記憶だったな」


「……ゴホッ!ゴホッ!」


「まっ、いずれ全部思い出す。しかし、これだけは覚えて置け。お前は表、ましてや裏の世界の住民でも無い。オトモダチとお仲間ごっこも良いが、サイファー、お前は闇の世界の者だ。何がお前を変えたかは分からないが、表の奴等と関わると身の破滅を呼ぶぞ」


「動くなっ!動いたらそのド頭を撃ち抜く!」



空に向けて話していたスコルピオに銃を向けて警告する者が1人。ドッグだ。

ドッグは警戒しながら近付いて行くが、スコルピオは全く警戒すらせずに笑っていた。



「おっと、ここでローンウルブズが登場とは」


「動くなと言ってる!」


「今はお前達と事を構えるつもりは無い。こっちも多忙の身なんでね、フフッ」


「やめろ、ドッグ!そいつに勝てるのは同じ死神だけだ!」



ドッグがスコルピオを警戒する中、後ろから叫びながらゴーストが現れる。

ゴーストはかなり焦った表情でMP5kを構えていた。



「懐かしいなお前。いつもサイファーと共に行動していたロイか」


「黙れ‼︎ 俺はその名はあの時に捨てた!俺はゴーストだ!」


「そんな激高するなよ、ロイ。昔の仲間だろう?」


「何が仲間だ‼︎ お前の所為で皆んな散り散りなった!ソラだって記憶を失った!」


「試してみたかったのさ、死神の実力を。オリジナル同士で殺し合いなんて楽しくて仕方無かったのさ。まっ、結果はサイファー以外が一度死んだがな」


「……狂ってやがる。やはり今ここでお前は殺すべきだ」



そう言ってゴーストはトリガーに指を掛けるが、遠くから足音が聞こえて来て、一触即発の空気は消えた。

足音はだんだん近付いて来て、現れたのはストームだった。



「おいおい、これはどう言う状況だ?」


「「ストーム⁉︎」」


「隊長から危ないかもしれんって聞いて来たら……誰だお前?あっちで見た事も聞いた事も無い奴だな」



空の周りが血だらけなのを見たストームは怒気を含んで、静かな怒りをスコルピオへとぶつける。



「ストームだけじゃ無いぜ!」



そう言って出てきたのはレイン、ホーネット、ハルトマンの3人。

流石に6人もの増援にスコルピオはバツの悪そうな顔をする。



「おー、国が忌み嫌った奴等がゴロゴロ出てくるなんてな、怖い怖い。殺されたく無いんで、帰るわ」



スコルピオは悪ふざけの感じで言いながら、壁に手を当てると空間が歪む。

そして、片足をその歪んだ空間に突っ込むと、そのままスルッと入って行く。



「じゃあな、サイファー。次は覚醒して強くなって来い。そして、殺し合いをしよう。グッチャグチャになるまでさ…………それとロイ。お前、いつまで逃げるつもりだ?この世界ではもう逃げられねぇぞ。サイファーの覚醒の準備も整い始めた。前の様にサイファーを連れて逃げるのは難しいぞ」


「ま、待て!お前は何故生きてる⁉︎」


「さぁな?どっかの誰かが復活させたとだけ言っておく」


「待てぇぇぇぇぇ!」



ゴーストは叫びながらMP5kをフルオートでぶっ放すが、スコルピオは歪む壁へと消えてしまう。

虚しく銃声の反響と、地面で跳ねる薬莢の音だけが響くだけだった。

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