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44話 尋問なのか拷問なのか

奇襲を乗り越えた一刀達は徐州にやっとの思いで到着した。怪我をした兵士達は仲間の兵士に肩を借りながら徐州へと入るなど、映画の最後の様な場面を再現でもしているのかと感じる程。一刀達も全力で徐州に向かったので、息は上がり切っていた。

そして、当事者である義賊100名は一匹狼達により拘束され、銃を突き付けられながら徐州へと入った。奇襲に使用されたAK-74は全て一匹狼達の銃撃によって破壊され二度と使える状態ではなく、撃った義賊達もAK-74の破壊時の衝撃を受けて負傷した者が多数いた。



捕まった義賊達100名は、早速徐州の城の中の牢屋に入れられ、尋問が敷かれていた。その尋問を行うのは言うまでも無く一匹狼達。尋問用に用意された部屋に義賊一人に対して、尋問を行うのはファントム、ホーネットの2人。

ファントムが普通の尋問を行おうとするのに対し、ホーネットは薄い木べらや麻袋に水で満ちたポリバケツ、釘などを準備しており拷問する気満々だった。尚悪い事にホーネットはニコニコとしているが、肝心の目が本気で、ファントムの気を抜けない状態だ。

そして、これから尋問される義賊のリーダー格の男、(リー)はホーネットに恐れて震えている。



「あー……俺はファントムだ。あんたの尋問を担当する事になった。まぁ、横で何かしようとしている奴は気にしなくて良い」


「はぁ」


「それでだ。先ずはあんたの名前を知りたい」


「……自分は(リー)と申します」


「そうか。なら李、これは何処で手に入れた?」



そう言ってファントムはバラバラに壊されたAK-74を机の上に置く。



「…………」


「だんまりですか?嫌でも喋らせる様にしても良いのですが、どうします?」


「止めろホーネット。この手の奴に拷問しても効果は薄いぞ。なんせ、仲間の為にとか言いながら黙るタイプだ」


「なんなら試してみますか?」


「やめておけ」



李はホーネットの発言に顔色を青くして行く。しかし、ファントムは直ぐ様ホーネットを制止する。



「なら質問を変えよう。何故、君達は奇襲をしようとした?俺達を狙っての奇襲だったと思うのだが」


「…………」


「これも答えてくれないか……なら、誰かに命令された?」



ファントムの質問に一瞬だが李の眉毛がピクリと動いた。その李の反応をファントムが見逃す筈も無く、ある推測がファントムに浮かぶ。



「悪いな。カマを掛けさせ貰った。ある程度は掴めたか。李、君達は誰かに命令され、天の御使いを殺そうと暗躍した。違うか?」


「……違う」


「そうか。だが、誰かに命令されたのは間違い無いな?」



李は黙ったままだが、ゆっくりと顔を動かし肯定を示す頷きをする。この事に自分の推測が上手くいかなかったファントムはさらなる推測を独自に展開していく。そして、それは口に出ていた。



「命令が違うか……どうしても何かを遅らせたかった?……いや、それなら足止めの為にブービートラップを敷く筈……なら、天の兵士である俺達の排除?これも、素人過ぎる奴に銃を持たせても上手く行かないのは分かってる筈。何かを試す為なのか?……それなら別に銃を持たせる必要が無い」



結論を出せないファントムは唸る。それからまた考え初めてしまう。



「じゃあ、何故命令された? 金か?いくら金に目が眩んでもここまでの無茶な事はやらない筈だ。そもそも、飢えてる様には見えない。なら人質?そもそも、賊に人質に取れる奴がいるのか?」


「このままですと、この推測の独り言を永遠と聞く羽目になりますが……どうです?話す気はあります?」



流石に数分もこんな事をやられては堪らないホーネットはファントムに変わり、李へと催促する。

しかし、黙ったままの李。



「なら、あまりやりたくありませんが、脅しを使ってみますか。リー、貴方が話さないのは自由であり権利です」



そう言うとホーネットは真っ黒のコンバットスーツからGlock18Cを取り出してコッキングする。チャンバー内へと9mm弾が装填されると、ホーネットは不敵な笑みを浮かべた。



「これから貴方が10分間有力な情報を言わない事に1人ずつ目の前で撃ち殺します。君のお友達は99人いる訳ですから990分、16.5時間。貴方達に分かり易く言うと約半日ちょっとの時間が猶予です。ですが、単に撃ち殺すのでは詰まらない。そこで、1人毎に惨殺さを増します」



本気で言っているホーネットに対し、李は唖然。

李の気持ちは分からなくも無い。いきなり武器を出したかと思うと、天の世界基準での全滅させられるまでの時間を告げられたのだから。更に、1人毎に悲惨さを増すと言われても理解なんて到底出来ない。

だが、李の本能的にはこのままじゃヤバイと言う事は十分に伝わっていた。



「ま、待ってくれ!仲間に手を出さないんじゃ無かったのか⁉︎」


「隊長、ファントムに言われた事を真に受けているとは……良いですか、貴方達は只の捕まった哀れな賊です。当然貴方達は奇襲での複数の殺人未遂など、律法で裁く事も可能ですよ。まあ、当然貴方達の過去にやって来た事を調べ上げたら牢獄での強制労働じゃ済まないのは確かです。死刑を早めたのか遅めたのか違いですので気にせず」


「なっ……聞いて無いぞそんな事!」


「ええ、言ってません。例え知ったところで何か変わるのですか?」


「ぐっ……………」


「まあ、良いでしょう。時間潰しにいい事を教えあげます。私は天の世界に居た頃、CIAと言う諜報組織に在籍していた事がありましてね。得意なんですよ、拷問の類。情報を吐かせる為に色々やりましたよ、ええ。爪の間に薄い木べらを突っ込んで痛ぶってみたり、顔に麻袋を被せて水を掛けてみたり。もう、泣き喚いてましたよ、大っきい男が。さて、残り8分ですよ」



既に10分のカウントを始めたホーネットはニンマリしながら、李の前の机に腰を掛けた。

そして、首に付いている無線機に手を伸ばすと



「ファング。適当に威勢の良い人を1人連れて来て下さい」



ファングへと連絡を取り、捕虜となっている義賊を連れて来る様にと伝えた。ファングも適当に返事をすると直ぐに無線を切ってしまう。

李のだんまりが続き、ファントムの独り言が響く事3分。部屋のドアが開かれた。

ドアから入ってくるのは縄で縛られた義賊の1人とファングだった。



「ほら、連れて来たぞ。こいつで何をする気だ?」


「なら、丁度良いので見て行ってはどうです?どうせ暇なのでしょう?」


「うわぁ……嫌な予感しかしねぇ」


「縄を解いちゃって下さい」


「良いのか?」


「ハイ♪」



この時一番の笑顔を見せたホーネットに寒気を覚えながら、ファングは義賊の縄を解いた。

すると、ホーネットはGlock18Cを構えると、縄を解かれたばかりの義賊に向けて発砲。一瞬で膝と肩を射抜く。

これには周りが唖然。

撃たれた義賊も地面に倒れ込む。



「ぐあぁぁぁぁあ‼︎」


「まだ時間が⁉︎」


「10分丁度で1人が死ぬ様に撃っているだけですが?」


「ぁあがぁ……はぁ…ぁぁあ」


「どうです?お仲間さんの苦悶の表情は?」


「話す!話すからこれ以上は止めてくれ‼︎」


「グッドです。では聞きましょうか」



ホーネットは大胆不敵に李の向かい側の椅子に座るとニッコリ。嘘を付いたら、容赦無く味方を殺すと言う意思表示をしていた。

完全に騙せる相手では無いと理解した李も数日前に隻眼の死神の1人であるアテナと名乗る少女に命令されたと言う事から、これからやろうとしている事、そして、まだ生きている仲間の助命嘆願まで全て言った。

これを聞いたホーネットとファングは顔を見合わせながら、やれやれと手でオーバーリアクション。



「これはこれは、また一段と」


「面倒な事になったな」


「おい、これはどう言う状況か?」


「おや?もう推測は諦めたのですか?」


「いや、纏まらないからもう一度話しをと」


「なら、既に時遅しですね。全て吐かせました」



ファントムが我に返って、辺りを見渡すと何か色々あった状況に頭をクエスチョンマークにしていた。倒れる血塗れの義賊、それに寄り添う李。Glock18Cをクルクル回しているホーネット。そして、縄を持ったままのファング。これだけでも十分なカオスな光景だ。

それよりもファングは、ファントムは考えている間は発砲音すら聞こえて無かったのかと突っ込みを入れるかどうか悩んでいた。



「それよりも治療を!(てん)の治療を頼む!このままじゃ!」


「それよりも、この状況を説明してくれ」


「撃っただけですが?」


「おい!あれ程殺すなって忠告したはずだぞ。はぁ…」


「それは残念、隊長がガミガミ言われるところを見てみたかったですね。残念ながらこれはゴムスタン弾の先に血糊ペイント弾で加工したハッタリですよ」


「「「「はぁ?」」」」



てっきり義賊1人を殺したと思っていたファントム達はホーネットの言った言葉を聞き返した?撃たれた本人すら聞き返す程だ。

すると、ホーネットは悪びれた風も無く、事を説明し始める。



「でもどうです?ヘルメスに作らせてみたのですが。撃たれた本人すら気付かない様に上手く血糊が弾ける様に工夫したとのことですが」



ファングは試しに天と呼ばれた義賊の撃たれた場所を試しに見てみると……


「打撲だな。確かに」



と納得していた。

すると、ファントムも安心したかの様に溜息を吐く。



「心臓に悪いからあいつに注意しといてくれ。それと、くれぐれも悪戯には使うなと」


「ええ、忠告しときましょう」


「で、先程の話しをもう一度してくれるか、メモ取りたい」


「……えっ?ええ。あの、俺らの家族はどうなるんでしょうか?」


「安心しろ。うちの雇い主は寛大でな、労働は付くかもしれんが、殺されはしない」


「安心しました」



李が安心してホッと一息ついていると、先程まで倒れていた、天と言う義賊の1人が打撲した部分抑えながら土下座し始めた。



「うっ……お願いいたします、ふわぁんとむさん!俺らの他の家族はまだこの事を知らないんだ!だから、家族を救ってくだせい!俺らは騙されただけなんだ!今回だって無理矢理……うぅ」



土下座しながら泣き崩れる天を見たファントムはどうして良いのか分からず、横にいたホーネットとファングへと向くが、2人もお手上げと手を振るう。



「はぁ…言い分は理解した。だが、俺達にも仕事がある。そんなホイホイ人助けする様な立場じゃないんだ。寧ろ逆のホイホイ人殺しをする。そんな奴等に助けてと助命嘆願は困るぞ」


「そんな⁉︎俺はどうなったって良い!だから家族を!」


「俺からもお願いします!仲間を助ける為なら一時的にそっちの命令に従う!だから頼む!」


「分かった、分かったから。顔を上げろ」



天と李の2人の嘆願についにファントムは折れた。

今回の嘆願、敵を殺さず生け捕りにして欲しいとも言ってるに等しい状況にファントムは頭を抱えたくなる。今まで、殺す、潰すを徹底してきた彼等にとって、敵を生け捕りにするのはそう容易では無いのは確かだ。しかし、2人のこの姿で嘆願され続ける訳にも行かず、ファントムは紙とペンを出して何かを書き始める。



「お前達のそれは依頼で良いか?」


「「やってくれるんですか‼︎」」


「やってやっても良い。しかし、費用はこれ位だ」


「「こ、こんなに……」」



2人にファントムは金額を書いた紙を渡す。

それを見た2人は見た事も無い金額に唖然とした。

さっきまでの天にも登る気持ちは一瞬で地獄どころか、地球の核まで叩き落とされただろう。

しかし、ファントムはそんな2人に追い打ちを掛けるかの如くさらに言葉を並べていく。



「悪いな。俺達は慈善事業する集団じゃ無いんだ。俺達は傭兵。戦い、命を奪い、潰し、全てを破壊する。相手の命を助けろと言うのならこれぐらいが妥当だ」


「「……………」」


「払えるのか?払え無いのか?どっちだ?」


「……払います!一生掛かっても」


「一生?笑わせるなよ。俺は今すぐ払えるのかと聞いた」


「そ、そんな!俺達にこんな金はどこにも無い!」


「じゃ悪いなこの話しは無かった事に」


「「………………」」


「と、言いたいところだが、俺達も人手不足でな。お前達の武力を買おう。ただし、月々の給金から依頼金は引かせて貰う。それで良いか?」


「「……は、はい!」」


「じゃ、お前達が徐州を襲おうとしている計画、人員の人数、武器の種類、陣地としている場所、全て教えろ。話しはそれからだ」



ホーネットの遊びにも似たドッキリの尋問、もとい拷問にも似た行為と、2人の助命嘆願にファントムの気苦労は更に積み重った。こうして、事無くして尋問が進められたのだが、後に血糊スタン弾はレインの悪戯道具として遊ばれる様になったらしい。

一気に1000人規模の人員が手に入るのなら、それは利益かもしれないと考えたファントムは約900人近くを生け捕りにする為の計画を一週間以内にファントムは練り始めた。

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