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43話 義賊の奇襲

皆さん!

明けましておめでとうおめでとうございます!

新しい新年がやってまいりました。


今年も頑張って行きますよー!

桃香は先日、州牧として任命され徐州に移る事となった。州牧として任命されると言う事は、今までに内政をして来た街とはお別れ。徐州へと向う為に一刀達一行は大名行列の様な行列を作りながら歩を進めていた。



空達一匹狼達(ローンウルブズ)は、一刀達の護衛と言う形で、行軍に加わっている。しかし、人数が人数だけに最前列から最後尾までの距離を14人で見るのはとても難しい為に、一人一人の護衛する範囲がとても広い。その為、連絡は全て無線で行われていた。そして、後一人はIFVであるストライカーの運転をしている。言うまでも無くヘルメスなのだが……

軍の行軍速度の遅さで、運転に神経を使わないが為に前の行軍している軍人にストライカーで近付いて煽って遊んでいた。



3日も経ち徐州も間近に迫って来ると同時に、一刀達と共に行動しているファントムの下に定時連絡が次々と入って来る。



〈定時連絡〜、こちらレイン。異常無〜し〉


〈こちらハルトマン。こちらも異常は無し〉


〈こちら、バイパー。こっちも異常無しだ〉


〈ファング、こっちも異常は見受けられん〉


〈こちらイーグル。異常は見られない〉


〈ストームだ。こっちも異常は無い〉


〈こちら、ファング。何も無い〉


〈こちらジョーカー。今のところ何とも無いっす〉


〈こちら、ホーネット。特に何もありませんよ〉


〈こちらドッグ。異常無し〉


〈こちら、コブラ。空は青い……〉


〈おいおい、何黄昏れてんだよ。暇なだけだろ〉


〈…黙れ。ゴースト。特に無し〉


〈こちら、最後尾のヘルメスとソラ坊。ストライカーに揺られている所為かちょっと、ソラ坊が眠そうにしてるが、何の異常も無い〉


「了解した。総員、何が起きるか分からん。現状の警戒を維持。それと、コブラとファング。遊ぶな。ヘルメスは空に警戒しろと言っておけ」


《了解》


〈はいよー。ソラ坊!眠いかもしれんが、頑張ってくれよ〉



最後は連絡かどうか怪しい定時連絡を済ませた一匹狼達は再び警戒に尽力する。ファントムも無線を切ると、手にしているL85A2を持ちやすそうな場所へとずらしながら正面の警戒をしていた。

そして、ファントムが手にしているL85A2。元のL85は不良品で有名な銃だ。排莢不良でジャムを起こしたり、銃を撃つと弾倉が勝手にスラリと落ちていったりと、まぁポンコツ銃だったのである。H&K社の改修によって解消はされ、世界のアサルトライフル並みに近づいたとは言え、なんとも怪しい銃である。



そして、最後尾のヘルメスと空の2人。前の行軍している兵達を追従するかの様に運転するヘルメスに対し、最後尾の警戒を担う空は、ストライカーの上で自身の愛銃であるマグプルMASADAを持ちながら遠くの山々を警戒していた。これは、前の自分の世界で狙撃を警戒していた頃の名残りなのだろう。しかし、ストライカーの上で警戒してるとなると、少々……いや、かなり目立つ上に、いい的だ。しかし、そこは警戒心の塊である空。以前洛陽で狙撃にあった時は銃で迎撃して、威力を弱めながら軌道をずらした程である。



「どうだソラ坊?」


「今のところ何も無い」


「そうか。何かあったらその上の機銃を使えよ」


「分かってる」


「もう少しで徐州だとさ。気を抜くな」


「了解」



他愛も無い会話をする2人。

その一方、空達から数里先の山の中腹。そこに、100人のAK-74を持った義賊達が、待ち伏せをしていた。

彼等は数日前にアテナによって飼いならされた犬となっていた。そして無茶な命令をされ、これから奇襲を仕掛ける為に準備を進めているところだった。



「もう直ぐ現れるらしい。準備出来てるか?」


「ああ。やりたく無いが、家族の為だ。心の準備は出来てる」


「こっちも大丈夫。最後に美味しい飯を食いたかったのが心残りぐらいだ」


「使い方は覚えたよな?」


「あの女に叩き込まれたんだ。嫌でも覚えてる」


「そうか……俺達100人はここで天の御使い達を足止めする。死ぬかもしれないが、家族の為だ。柊達の為にも全力でやるぞ‼︎」


『おう!』


「可愛い義妹の為に!」


『家族の為に!』





何かを感じた空は、ストライカーをゴンゴン叩いた。



「どうしたソラ坊?」


「隊長達のところに移動して。何か来る」


「何かって?」


「分からない」


「分かった。急行するぜ」



そう言うと、ヘルメスはストライカーを列から離れさせ加速させると、行列を次々に追い抜い行く。

あっという間に最前列に追い付くと、ファントム達の横にぴったりと横にくっ付けて並走する。



「どうした?」


「警戒して。殺気が強い」


「殺気?まだ何も………」



ファントムには何も感じられずにいると、空は正面から右側の山の中腹に目掛けてMASADAをぶっ放し始める。



「お、おい!」


「炙り出す」


「そ、空⁉︎」



ファントムの制止を無視して空はマガジン内の弾を全て撃ち切ると、かなりな速度でリロードし、再度山の中腹を狙って連射が始まる。

つん裂く銃声に一刀は耳を抑えながら、空に何か言おうとするが、空には聞こえて無かった。



「なんで⁉︎」


「まだこっちは何も…」


「おい、こっちに気付いてるぞ⁉︎どうする、(リー)?」


「こ、攻撃開始!」


『おう!』




耐え切れなくなった義賊達が、リーダー格の李へと指示を仰いだ。李もこんな状況は初めてなのか、慌てた様子で攻撃を始めろと言ってしまう。

義賊達は気付いていなかった。空が炙り出す為に適当に撃っていると言う事を。この合図の所為で奇襲のタイミングがずれてしまい、一匹狼達により即時反撃が始まった。



「ナイスソラ坊!見事に奇襲を外させたな」


「気を抜かないで。撃ってるの30人かそこらだけど、まだ隠れてる」


〈奇襲か、隊長?〉


「そうみたいだ」


〈なら、遠慮無く撃滅させてもらうぜ〉


「待て、相手は素人達だ。情報を聞き出す。殺さずに無力化をしろ」


《了解》


「イーグル!スコープを使ってどんな奴が撃っているか特徴を調べろ」


〈了解。特徴は……俺達の様な傭兵じゃ無い。格好がお粗末だ。それと、煤だらけだ。おっと、そんな撃ち方じゃ素人だぜ〉



イーグルはスコープに映った義賊の一人が構えるAK-74の銃口目掛けて、M200を撃った。銃弾は見事AK-74の中へと飛んでいき、内部からバラバラに破壊する。


「ぐっ⁉︎」



AK-74を壊された義賊の一人は驚きと同時に銃弾の衝撃で後ろへと飛ばされる。幸い直ぐ後ろに木があったお陰であまり飛ばされる事は無かったが、頭を打ち、気絶してしまう。



「ちくしょぉぉぉ!」


「よくも‼︎」



仲間が一人倒れた事で、義賊達は激昂。AK-74を行軍している一刀達や兵士、一匹狼達へと乱射し始めた。



「一刀君、ストライカーの影に」


「はい!桃香、鈴々、愛紗、星……って、愛紗?」



一刀は近くにいる桃香達に隠れる様に言おうとするが、一人だけ足りない事に気付く。一瞬、唯の見間違いかなとも考えた一刀だったが、それは直ぐ朱里によって破られた。



「大変ですご主人様⁉︎」


「どうした、朱里?」


「愛紗さんが見当たりません」



キョロキョロしながら愛紗を探す一刀だったが、少し離れた場所からその愛紗の声が聞こえて来る。



「隠れてるなど卑怯千万!大人しく出て来て戦え!」


「おい、あの馬鹿⁉︎」



ストライカーの上で戦っていた空は、愛紗の行動を理解出来ないと言う表情で驚いていた。そして、愛紗の叫びへの答えは鉛の銃弾だ。このままじゃマズイと判断するや否や、空はストライカーから飛び降りると愛紗の下へ走る。



「下がれ!死にたいのか!」



空は愛紗の服の襟を掴むと無理矢理にしゃがませた。すると、愛紗の少し上を弾丸がヒュンヒュン言いながら通り過ぎて行く。しかし、当の死に掛けた愛紗はそんな事など気にしてなどいなかった。



「ええい、離せ!」


「黙れ。武将なら死に場所は戦場にしろ」



空は冷徹な口調で愛紗に言うと、愛紗は黙った。黙った愛紗をそのままストライカーの影に隠れている一刀へと放り投げると、その場を離脱しよう動こうする。すると、不意に右の二の腕に痛みを覚えた。その痛みで手にしていたMASADAを離してしまい、地面に落としてしまう。空は目を動かして確認すると、鮮血が自分の私服である黒いパーカーの上から溢れる様に流れ出ていた。



「ぐっ………」



右の二の腕を撃たれた空は、苦悶の表情になり、一瞬動きが止まるが、直ぐにMASADAを拾うとその場を離脱。急いでストライカーへと戻る。



「おい、その血⁉︎」


「撃たれた」



一刀は戻って来た空を見るなり、その血だらけな格好に驚く。しかし、空は痛くないと感じさせる様な答え方をする。実際、空は空いた左手で二の腕を圧迫しながら止血していた。だが、右手にはおびただしい程の血で濡れている。

それを見たファントムやらヘルメスやらファングが駆け寄って来る。




「おい、ソラ坊⁉︎ どうしたその血だらけな格好は?」


「二の腕を撃たれたみたい」


「見せて見ろ」



ファングはストライカーに積んである医療キットから止血材やら、包帯やら消毒液など色々出すと、空の二の腕を診察する。



「あー、綺麗な風穴だな。安心しろ貫通銃創だ。出血の量もそこまで多く無い。だが、これはしばらく右手は使わない方が良いな。とりあえず、鎮痛剤のペンタゾシンを打つぞ」



そう言ってファングは注射タイプの鎮痛剤のペンタゾシンを空の二の腕へと打つ。そして、空の二の腕の治療を始めた。

手際良く治療され、いつしか空の右手は骨折した時みたいな包帯グルグル巻きになっていた。そして、包帯で吊られている。



「ここまでやらなくても……」


「念のためだ。適当に治療して患部が壊死したらたまったもんじゃないだろう」


「こんなので壊死は……」



完全防備の右腕を見た空は呆れて言うが、ファングに言いくるめられて諦める。

治療を終えた空は安静にしてるのかと思いきや、左手でMASADAを持つとストライカーの影から銃撃を始めた。反動で右腕の貫通銃創に響いているだろうに、そんな事はお構い無し。右手が不自由なのに、それを全く感じさせない射撃をしていた。

そして、数分が過ぎると次々に無線で連絡が入って来る。



〈こちらジョーカー。敵の武器だけをあらかた片付けたっすよ〉


〈こちらイーグル。敵の全武器の破壊を確認した〉


〈こちら、ドッグ。あのお馬鹿さ(レイン)んが敵に突っ込んで行ったけど良いのか?〉


「ストーム。援護してやれ」


〈また、あの馬鹿のお守り役か?まあ、いいが〉



無線でレインが独断専行していると入ると、ファントムはストームに援護の指示を出す。しかし、前にも色々あったのか、ストームは渋々了承すると無線を切ってレインの援護へと向かって行く。



それからはあまり時間はかからなかった。

武器を失い逃げようとする義賊達の前にレインが立ち塞がり、やりたい放題に千切っては投げを繰り返し、あっと言う間に動ける者はいなくなった。ストームが到着する頃にはほぼ全員が降参していた。

そして、この戦いによる負傷者の内、軽傷が36人、重傷者は空を含め19人と何とも少なかった。負傷者の大半はファングの荒い治療により、命には別状は無く事を終えた。しかし、ファングの治療により、トラウマを抱える者が多数出たと後に報告が上がった。

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