40話 空と星
時間かけたわりにかなり短い……
調練場での出来事。
今日の調練場は何時もと少し違う。
一匹狼達のメンバーが集まり、それぞれ射撃、狙撃などの、武器を使った自主訓練が行われていた。
「よし空、次行くぞ」
「了解」
その中で、空とイーグルは狙撃を主体とした訓練をしていた。イーグルが放つフリスビーを空中で空がマグプルMASADAの狙撃で射止める。しかし、制限があり、その条件はアイアンサイトで初撃で仕留めると言う内容だった。しかし、空は難なく投げられたフリスビーを狙撃で撃ち落としていた。
「ナイスショット。1000発中、命中弾は968発か。悪く無いが、まだまだだな」
命中率で言うと96.8パーセントなのだが、イーグルは更に上を要求する。ライフル弾を使用するクレー射撃だが、普通の人がこれだけ撃てば集中力が切れてこんな命中率は叩き出すのは難しいだろうし、1000も撃つのは難しいだろう。しかし、空は疲れた表情は見せず、少し悔しそうにする。
「もう一回頼む」
「少し休憩だ、ソラ坊。これ以上やっても集中力が保たないだろ?最初は一切の外れは無いが、後半がガタ落ちしている。15分の休憩だ。そこら辺で自由にしてろ」
「分かった」
根気強さは伝わり、休憩が必要とイーグルに説得さると、渋々空は頷いた。
自由にしてろと言われた空は、調練場の隅に行くと火照った体を冷やす様に水筒の水を頭から被る。水筒に入れられた水の冷たさは火照った体には充分効くようで、ホッと空は溜まった疲れを落とす様に溜息を吐いた。
「誰だ!」
しかし、不審な気配に気付くと、先程までクレー射撃に使用していたMASADAを近くの木の幹に向けた。
すると、隠れていた人物が華麗に降りて来た。
「なんだ、趙雲さんか…」
「なんだとは心外ですな」
華麗に登場したにも関わらず、空の冷たい反応に趙雲こと星は不満な顔をする。しかし、空の冷たい反応はこれだけじゃ無い。
「何の用?一刀達を弄るみたく接するつもりなら無視するけど」
鬱陶しそうに星の顔を見ずに言うと、MASADAを肩にかけると水筒の蓋を閉める。
「お主は、どうして我々と関わりを持とうとし無いのだ?」
「趙雲さんには関係無い」
「女子は苦手か?」
「苦手では無い。あんたと話す気が無いだけだ」
大分鬱陶しくなった空は会話を切ろうと、素っ気なく返すと、立ち去ろうとした。
しかし、空を止めようと星は食い下がる。
「愛紗と刃を交えたお主を見た時も思ったが、お主の戦い方は、どこか孤独の様に感じる」
星の言った言葉に、空はピクンと反応し立ち止まる。
「あんたに俺の何が分かる?」
少し怒りを含んだかの様に空の声音は低くなって、星を威圧するかの様に返した。
「戦いから感じた事を言ったまでだ。これも先日愛紗が言っていた事に関け……」
「俺の過去に触れるな。必要以上に俺の事を調べたら殺す」
そこに鬱陶しそうにしている空はいなく、ただ怒り一色に塗り固められた空がいた。この時の空の殺気は本気で、星は一瞬だが背筋が凍り付きそうなぐらいの寒気を覚えたぐらいだ。
しかし、空は直ぐに我に返る。
「悪い……感情的になり過ぎた。けど、あまり過去を詮索されるのは好きじゃ無い」
「済まない。私も少々突っ込み過ぎた様だ」
「趙雲さんが孤独に感じたのはあながち間違いじゃ無い。俺は到底、人に言えない事をして来た。それが俺を孤独にして来たのかも知れない……けど、この事を聞けば趙雲さんは俺を避ける」
「傭兵とは言え、一時的に仲間になったのだ。辛くなった時、私に言えば良い。少しは力になれるだろう?」
「趙雲さんは優しいな……その時が来ない事を祈りたいよ」
「星で構わんよ。」
「えっ?」
星は自分の真名を告げた。しかし、空は何故自分に?と言った表情で驚く。
「なんだ、真名もしらんのか?」
「いや、別にそう言う訳じゃ無いけど……本当に良いの?」
「ああ、構わんさ」
「なら、空で良い。あまり名前で呼ばるのは好きじゃ無いけど、真名を預けられるんだから仕方無い。不知火でも空でも好きに呼ぶと良いよ」
空は作り笑いで少しだけ笑うと星に背中を向けた。
「じゃ、そろそろ時間だから俺は行くよ」
そう言って空は再び訓練の為に去って行った。




