表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/117

36話 隻眼の女神

─ オルカ許昌到着から5日後 ─


許昌、華琳達が拠点としている街の玉座の間に、魏の武将達を含めオルカと香風がいた。

香風は春蘭達の横に控えていたが、オルカはグルグルに縛られており、詰まらなさそうに縄を見つめていた。

到着の後、オルカを追い回していた警備隊は三日三晩寝ずにオルカと対峙し続けていた。必死に捕らえ様と奮闘したが、オルカの速さについて来れる者はいなく、結局はオルカが面倒臭くなり、折れる形で降参して幕を閉じた。



「で、あなたが3日間逃げてたので間違い無いわね?」


「だからどうした」



なんとも反省の顔色一つ見せずに堂々と答えたオルカに華琳は溜め息を吐いた。

「少しは反省の一つでも見せたらどうなのよ…」と頭の中でぼやくが、目の前にいる極めて例外過ぎる存在に何を言っても通じ無い事はこの5日で理解し、口には出さなかった。



「全く……私の警備隊の面子が丸潰れよ」


「それは残念だったな」


「あなたの所為なのよ!それに、地下牢に放り込んだのに、なんでウロウロしてたのよ!」


「俺を縛り付けていられる物は無い」


「誰か……この男に常識ってものを教えれる者はいないのかしら…」


「せいぜい俺を縛っておきたいなら6万ぐらいの兵で見張るんだな」



悪びれも無く堂々と答えるオルカに華琳は再度溜め息を吐く。

華琳が言った通りオルカは一時、手枷、足枷をつけられ牢屋に放り込まれた。


ここまでは良かった。


しかし、数時間後には堂々と城の中を散歩するかの如く歩いていたのだ。

武将達を含め警備隊が必死に捕縛を試みたのだが……生憎、オルカを捕らえる事は叶わなかった。

しかし、何故今縛られているのか?

それは香風の存在だ。

初日に捕縛された香風は臨時として華琳に命令され、ほっつき歩いているオルカを止めに行った。それが上手く行ってしまい、臨時としてオルカの監視役として今も従事している。

その証拠に香風はオルカを縛り付けてある縄を持ちながらオドオドしてるし、他の春蘭や秋蘭など、魏の武将はゲッソリとしていた。

香風がいなければあの春蘭ですら根を上げていたのは確かだ。



「あなた、一体どこの者なの?」


「俺か?」


「あなた以外に誰がいるのよ!」


「さぁな。俺は無国籍だから国なんてとこに所属してない」


「違うわよ!私が聞いているのは天の世界のどこから来たのかよ!」


「天の世界?俺の世界がか?」


「はぁ……もう良いわ。入って来て良いわよ」



本日3度目の溜め息を吐いた華琳は誰かを呼んだ。

すると、玉座の間の扉を開け、一人の女性が入ってくる。

しかし、格好はこの時代とは別物だ。

白く長い長髪は後ろで編み込む様に纏められ、色白の肌。青い瞳を持ち、背丈も平均よりも高い。が、歳は華琳達と然程変わらない。

所謂、ヨーロッパ系の美少女だ。

そして、オルカと同じ真っ黒の外套を身に纏っている。



「お、お前⁉︎」


「ふふっ、久しぶりね」


「何故、ここにいるアテナ⁉︎」



入って来た美少女にオルカは驚きを隠さずに叫んだ。

そして、白黒対比した美少女はオルカにアテナと呼ばれた。



「なによ。私がここにいちゃいけない?」


「やっぱり知り合いなのね……」


「ええ。ある施設での同期よ」



2人の会話から察した華琳は本日既に4度目の溜め息を吐く。何があったのかはアテナと華琳達しか知らない。

もし、仮に聞いたとしても良い答えは返って来ないのは確かだ。

と、この12日の間のオルカを見て確信した香風はなるほどと言った感じで自己完結していた。



「それにしてもあなた、随分と滑稽な姿ね」


「言ってろ。それより、なんでお前がここにいる?」


「飛ばされたのよ。外史の管理者とか言ってた少女に」


「飛ばされた?ガイシって何だ?」


「あなた、バラバラになってから5年間何やってたの?ちょっと頭弱いわよ……」



オルカがアテナに分からない言葉を聞くが、アテナは呆れてしまう。



「ずっと戦ってたんだよ…それより説明してくれ」


「しょうがないわね。この世界は私達のいた世界とはちょっと違うわ。時代、歴史、習慣も私達の世界とは全て違う。頭の弱いあなたに分かり易く言うと、自分のいた世界にちょっとだけ似た異世界に飛ばされました〜ってわけ」


「まあ、なんとなくだが分かった。で、お前は5年間何やってたんだ?」


「そりゃ、リーダ……ソラを探しながらあちこちの学校に通ったわ」


「お前……ほんとソラ一筋だな」



アテナの5年間の行動を聞いたオルカは呆れていた。一人の人間を5年間も追っていたのだ。普通の精神じゃ無理だ。

更に呆気に取られて聞いている魏の武将達の中でも香風はますますソラと言う存在が分からなくなった。



「ソラほど私を理解してくれたのはいないもの」


「で、ソラは見つかったのか?」


「一応は…ね。でも、確信して直ぐ飛ばされてしまったの」



オルカに聞かれたアテナは少し残念そうに答えた。

それ程、後ちょっとのとこだったのだろう。

そして、アテナはソラの事で知っている事を話し始めた。



「ソラは不明(アンノーン)と言う民間軍事会社に居たわ」


「不明?何とかセキュリティとかじゃ無いのか?」


「不明なのよ。何もかも……実在するかも怪しいわ。でも実在している。依頼出来るのは一部の人間のみ。金持ち、国、企業のごく一部。彼等の要求する金額は異常の一言で済んでしまう。去年起きた革命が起きそうだった国が無くなったのは覚えてる?」



アテナに聞かれたオルカは少し考えはじめる。

そして数秒たった時、何かを思い出したかの様に閃いたと言う顔をしていた。



「一夜で焦土と化したやつか?」


「そう。それをやったのはソラ本人よ。もっと正確に言うとソラと他のオペレーター49人よ。一夜で酷い爆撃と、反政府軍のリーダーを含めた幹部達、政府の要人を500名近く殺害したらしいわ」


「スゲェな……全部調べたのか?」



オルカが出した答えにアテナは補足を入れた。

それを聞いたオルカはソラのやらかした出来事と、アテナの情報に素直に驚いている様だった。

そして、長く続く会話をいつに止めさせようか伺っていた華琳は息を飲んだ。分からない天界語が多数出て来るが、ある程度は理解出来ていた。

そして、ある集団を思い出した。泗水関を防衛していた集団を。一瞬だったが、その中に1人だけアテナの言う名前と凄く似た名前で呼ばれていた人物がいた事を。

だが直ぐに、「まさかね…」とその考えを一蹴した。



「ええ、知り合いを伝って調べたわ。でもおかしいの。ソラは指揮官として行動していない。むしろ、私達みたく実行部隊として行動している」


「いやいや、あいつ元々指示出しながら戦ってたろ!」


「私のリーダーに指示出すなんて許せ無いわ!」


「お前のものじゃ無いからな……」



熱く語るアテナに冷静に突っ込むオルカ。

突っ込みを入れられ、冷静さを取り戻したアテナは「そうだ!」と何かを思い出した。



「あなたに朗報よ。ソラは多分この世界に居るわ」


「本当か⁉︎」


「私の調査が間違っていなければ本当よ。だけど、人違いかも知れないから探りを入れているわ。結果は約1ヶ月後と言ったところね」


「その位にして貰える?話しが進まないのだけど」



オルカとアテナの会話を華琳は無理矢理に止めさせた。止めらたアテナは「それもそうね」と言って納得する。

しかしオルカは、探していた情報がもう直ぐ手に入りそうだったところに、華琳が邪魔をした事で、邪魔をするなと言った目で華琳を睨む。



「話しを戻すわ。オルカとやら…貴方、アテナと戦いなさい」


「何故?」


「貴方の力を見てみたいわ。もちろんタダで、だとは言わないわ。今後貴方を客将として雇うって事も視野に入れるわ」


「ほぉ、そんなに俺の力が見たいか?」


「そんな事言ってられるのは今の内よ」



華琳に戦いをみたいと言われ、得意げな顔になるオルカ。さっきまでの邪魔された事などどうでも良いかのごとく調子に乗るオルカだが、アテナは冷たく返す。



「私のランクは15だけど、オルカと実力は殆ど変わら無いわ」


「言ってくれるぜ。一度も俺に勝ったこと無いくせに」


「あら、そうかしら?リーダーみたく手加減出来ないあなたが?」


「お前こそ手加減せずに敵を殺してただろ」


「その辺にしなさい!これじゃ埒があかないわ……四半刻後に調練場に集合!いいわね!」



今度は舌戦を繰り広げる2人に華琳は無理矢理に叫ぶ。そして、時間と場所を伝えた華琳は秋蘭達を連れて足早にその場から去っていく。

この時の華琳の怒鳴り方は史上最高だと魏内で噂される事になる。

次回!

隻眼の死神の2人が戦います。以上!


ポケモンが懐かしくてつい買ってしまった(後悔はしていない)

ついでにバッチはまだ2つ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ