35話 冥府の魔物
すいません。番外編のつもりがこうなりました。
空達が徐州に行っても無いのにこれは早いと思ったので延期です。多分、12月31日
そして、今回はオルカの魏編です。
「クソッ!…なんでこんな事に……」
森を抜ける為にひたすら歩いていたオルキヌス・オルカは開口一番に愚痴る。オルカの横にいる戦斧を担いだ美少女はオロオロしていた。
「あ、あの……」
「ああ?」
「ひゃぅ……」
「あっ、悪い。考え事をしてた。それより、どっちの道がキョショーなんだ?」
オルキヌス・オルカが知らない美少女と共に森の中を歩いている理由。
それは一週間前にさかのぼる。
─ 一週間前 ─
許昌の南西35キロ 、上空。一見変哲のない空だが、この時だけは違った。何かに歪められた様な穴が開く。そして、そこから降ってきたのは1人の男。言うまでも無くオルキヌス・オルカだ。
彼はカーチスとの戦闘中、カーチスと共に白い光に飲み込まれてしまった一人だ。
「嘘だろぉ⁉︎ おいぃぃ‼︎」
残念な事に上空1000メートルぐらいの上空で目を覚ましたオルカはその光景に叫んだ。真っ逆さまに落ちて行くオルカは、正に生死を問われた状況だ。頭から地面に叩きつけられれば、ただじゃ済まない。仮に上手く着地出来たとしても、普通なら病院の一生入院コース真っしぐらだ。そして、オルカが叫んでいる間も着実に地面が迫っている。更に重力加速が増して自身のスピードは測りしれない。
「ヤバイヤバイヤバイ!考えろ俺!このままじゃ、あの世行きだ!」
空中でどうにか姿勢を逆さまから態勢を戻すと、かなり慌てて打開策を思考する。しかし、空中で出来る事など限られている。下が水の無い、硬い地面なら尚更だ。いや、下が水に満ちていても高さによってコンクリート並みの硬さになる為に絶望しか無いが……
しかし、オルカは隻眼の死神と呼ばれた存在。普通の考え方はしてなかった。
「何か手は……有るじゃねぇか。終焉者モード。…ダブル、衝撃波!」
地面まで残り十数メートルを切った辺りで、オルカは叫びながら両手に力を込めると、右目が赤く濃く輝き始める。そして、その両手に込めたのを一気に突き出した。両手の勢いは音速を軽く超え、空気の壁を突き破り、減速する事に成功する。減速したオルカはギリギリで木の枝にぶつかり、更に速度を落として行く。しかし、オルカは生身。音速を超え、空気の壁を突き破った為に、外套だけでは体を守る事が出来ず、手に大量の切り裂き傷が出来る。
「くっ……痛って…。久しぶりに…腕が裂けた……」
無事、地面に着地出来たオルカだが、久しぶりに負った傷を抑える。傷は生々しい程の血で濡れていた。しかし、オルカはその傷を止血しようともせずに放って置く。すると、傷はあり得ない速度で回復して、傷は跡形も無く消え去っていた。そして、右目の輝きも消える。
「ここは……何処だよ?先ず落ちるって、どうなってんだよ……」
着地する事は当然の事の様に受け止めると、オルカは初っ端からため息をつく。
いきなり、知らない土地で想像も付かない場所に飛ばされれば、誰しもながら当然の事なのだが。
「おっと、それより武器はどこだ?」
気をとり直してカーチスと戦闘に使ったイズマッシュ・サイガを探し始める。しかし何処にも見つからず、オルカはいきなり頭の痛い悩みが出来る。
このままでは身を守るのは自分の拳自身になってしまう。まあ、隻眼の死神と呼ばれた彼にとってそれは造作も無いのだが……
先程から出て来る単語、隻眼の死神。
隻眼の死神とはソラの居た世界に存在したテロリストと別の存在。反動勢力、血塗られたダイヤモンドが作りだした人成らざる存在。その力はあまりにも凄まじく、1人で軍と渡り合って殲滅出来るほどの力を有している。特徴的なのは右目が赤く輝く事で、その事から赤眼の隻眼と、敵の死を司る強さから死神を掛けられて隻眼の死神と呼ばれた。
しかし、勢力内部で内乱が起きて壊滅。アメリカやイギリスなど、先進国が目を付けて駆けつけた頃には血塗られたダイヤモンドの施設と思われる場所は物抜けの殻と化していた。その為、隻眼の死神は伝説の存在とされている。ごく一部を除いて。
そして、唯一世界中に知られているのは施設にいた少年兵達があちこちで今も、銃と”奇妙な技”を手に戦っている事だけである。
そして、その伝説の存在の1人、オルキヌス・オルカは今も尚頭を抱えて、「ヤバイ…どうしよ、このままじゃ……」などとブツブツ呟いている。
カーチスと戦っていた時の高圧的な雰囲気は何処にも無く、今は唯の迷子の少年に見えなく無い。
そして、彼は18歳数ヶ月の未成年の少年だ。
普通ならまだ学校に通っていたりする年なのだが、彼はイズマッシュ・サイガを手にして戦い続けている。
一時間が過ぎ、日が傾き始めた夕刻。
彼はまだうずくまって木に腰掛けている。
「もうヤダ……帰りたい……」
もう、絶望しか無いと言った顔で空を見上げるオルカ。あれから動く事が一切出来ずに時間だけがどんどん過ぎていた。
過去の記憶を失って、謎に満ちている主人公、空は一時間で宿を見つけるのは無理だったが、それでも淡々と考え、行動を起こしていた。
それに比べるとこっちのオルカはどうも頼り無さそうだ。名前の意味である冥府の魔物とはとても思え無い。
更に日が傾いて行くが、オルカは唯、時間を潰すかのように動かなかった。いや、動く事が出来なかった。
このままどうなるんだろ?、寝るのはどうしよ?と頭の中はパンク寸前まで混乱していた。
「きゃぁ‼︎」
突如聞こえたのは消えそうな程の大きさの悲鳴だった。その人の悲鳴を聞いたオルカは遂に立ち上がる。
このままじゃ、野たれ死ぬと分かっているだけあって、人の存在がオルカに動くだけの勇気を与えた。
無一文、武器は己の体だけのオルカは悲鳴の方へ走った。
「止めなさい!これ以上近づけばタダじゃおきません!」
悲鳴を上げた主である少女は戦斧を構えながら目の前にいる複数の賊に向けて忠告をしていた。しかし、その忠告をする口は少し震えていて、迫力に欠けている。
たとえ、少女が武器を持っていようが、この状態ならやれると思っている賊はニタニタと下衆な笑みを浮かべる。
「へぇー、言うね小娘が。俺たちはお前のようなかわい子ちゃんに追い剥ぎみたいな真似はしない。少しお楽しみしようぜっと言ったんだが、抵抗するようだからな。やっちまえお前等!」
『おう!』
次々に襲い掛かる賊をどうにか手持ちの戦斧で捌いていく。その速度はかなり早く、かなりの手練れだとわかり、賊は怯むが多勢に無勢で、全方位から攻めて来た賊に戦斧を飛ばされてしまう。
武器を失った少女は遂に追い詰められた。
「ウヘヘ、これでやっと大人しく…」
「揃いに揃って女1人に群がるなんて恥ずかしく無いのか?」
「誰だお前⁉︎何処にいる‼︎」
賊の言葉を遮る様に押し殺した声音で聞こえて来る声。しかし、何処にも姿は無く、不気味に思った賊は叫び散らした。
そして、木の上から突如として影が降って来る。
その影はフードを目深にかぶり、手の部分と足元がボロボロな外套を身に付けたオルカだ。
「俺は血塗られたダイヤモンド、隻眼の死神。オルキヌス・オルカ」
「ぶらっと?おるーか??」
「よく分からんがやっちまえ!」
自己紹介的な事を言ったつもりが、相手には何を言っているのかサッパリで、首を傾げてその似た感じの発音でリピートしている。それどころか少女すらも頭にクエスチョンマークが浮かんでそうな顔をしていた。
オルカはその変な発音をする賊達を見て、こいつら馬鹿なのか?と一瞬思うが、襲い掛かってくる賊に視線を合わせる。
「くたばれやっ‼︎」
「へへ、さっき拾ったこいつでやってやる」
「それは⁉︎ 」
賊の1人が出した武器にオルカは驚いた。
それもその筈、自分の無くした武器、イズマッシュ・サイガなのだから。
そんなオルカへ賊が一気に全方位から攻撃を仕掛けたが、オルカはその場から消えた。いや、早過ぎて賊や少女が見失っただけで、オルカは直ぐ横にしか移動していない。そして、自分の武器を持っている賊の首をへし折っていた。
「返して貰うぞ」
「へっ⁉︎ 」
「なんだ今の……」
そのイカれた速さに少女と賊は互い言葉を失っていた。首をへし折られた賊はピクリともせずに地面に崩れ去る中、オルカは取り返した愛銃二丁を大事そうに持つ。
そして、イズマッシュ・サイガ二丁を構えたオルカは賊達を冷徹な目で見下ろす様に睨む。
「お前達、許すと思うなよ。殺戮者モード。……I would talk about speed for you」
英語でぽつりと呟いたオルカは再び消え去る。オルカが消えた瞬間、次々に血飛沫が飛びまくる。それはもう絶え間無く。そして、遅れて劈くような轟音が響く。
少女は目の前で何が起きているのか分からない。
オルカぎ消えた瞬間に次々に賊から血飛沫が上がるのだから。腕に自身がある少女でもオルカの姿を捉える事が出来る速度を遥かに超えていた。そして、聞いた事の無い轟音に恐怖すら覚えていた。
「……大丈夫か?」
「えっ?」
オルカは赤く輝く右目を閉じながら少女へと話し掛けた。しかし、少女には何が何だか分からなく混乱していた。
賊は既に動いていなく、オルカの手には血だらけになった二丁のイズマッシュ・サイガが握られていた。
オルカはたった1人で、しかも20秒足らずで敵を全滅させていた。
「大丈夫か?と言った」
「…は、はい⁉︎」
「なら良い……」
そう言って立ち去ろうとするオルカだったが、ここが何処だか分からない事を思い出し、顔色を青くしながら立ち止まる。そして、ポーカーフェイスを保ちながら振り返った。
「なぁ、ここが何処だか分かるか?」
「豫州の許昌近くだと思いますが?」
「……はっ??今なんて?」
「豫州の許昌近く?ですか?」
「俺はアフガニスタンに居たんだぞ!なんでそんな変な場所にいるんだよ!てか、キョショーって何処だ?」
「あふがにすたん?それはなんですか?」
互いに分からない言葉が出てきてクエスチョンマークで頭が埋まりそうになっていた。オルカは聞いた事も無いような地名で、少女はオルカ言った地名自体が何なのかが分からず。
一瞬、オルカはカルチャーショックか?とも考えた。
あれだけテロリストがいる中東の地名を知らないなんて先進国ではあり得ない。それどころか、こいつらは変な格好している。どっかのコスプレか?などと考えており、”飛ばされている”と言う考えはしていなかった。ここが地球で、しかも21世紀だと断定して会話を進めようとしているのだ。
しかし、少女はそんな断定外に当てはまる世界にいるのだから、オルカの常識は通じる訳もなかった。
「おっと、名乗るのを忘れていた。俺はオルキヌス・オルカだ。君は?」
「はい、私は徐晃。字は公明と申します!貴方の名前は随分と変わっているのですね、字はおるか?ですか?」
「ストップ!字ってなんだ?」
「すとっぷ?」
「はっ?これぐらいどこの国でも分かる単語だぞ!」
気をとり直して自己紹介をしたオルカだが、再び会話を途切れさせて思考を開始する。
会話がどうも噛み合わない、最初から気づくべきだったが、遅かった。どう見ても中東じゃ無い!と初めて気付いたオルカだが、更に混乱させたのは字という存在だ。
字という文字を使う地域を知っていれば何処に飛ばされたのも一瞬で検討がつくはず。それに、少女が名乗った名前で時代がおおよそ分かるのだが、オルカは歴史や文学に疎い。そんな事など知る由もなかった。
結局、徐晃 公明がオルカの言いたい事を察して字を説明するのだった。
「だいたい分かった。なら、俺にアザナは存在しない。それにマナとか言う大切な名前も持って無い。俺のは行動する為だけに与えられた名だ。自分の本当の名なんて忘れてたよ」
「そうですか……」
「で、ここはヨシューのキョショーの近くで良いんだな?」
「なんか、変な読み方ですけど、だいたい合ってます」
「で、今は乱世で、国の内部が腐敗したり、賊が横行してる。これも間違い無いと?」
「はい」
「はぁ〜……で、俺は訳の分からない占い師が言った天から降って来た救世主、天の御使いだと?」
「はい」
「絶対救世主じゃないぞ、俺は」
「私の窮地を救ってくれました」
「いや、見ろ。あいつら残酷に殺したぞ。どう見ても救世主とは程遠いぞ。天から降って来て早々に殺人だぞ、しかも複数の」
「そうは見えません!それに彼等は賊です!民達に散々酷い事をして来ました。こうなって当然です」
結局、オルカは字の説明を聞いただけでは無く、今の世界の事も全部、徐晃 公明と名乗る少女から説明された。そして、ここは自分の居た世界では無いと気づくと同時に死にたくなる気分になった。
そして、念のために確認を取るが、徐晃と名乗る少女はオルカの言う一言一言に目をキラキラさせていた。
しかし、オルカはその少女を突き離して逃げる事も出来なかった。
目の前にいるのは美が強調されるほどの美少女なのだ。歳はオルカと近そうな感じで、流線形な体のライン、出るとこはしっかりとでてくびれもはっきりしている。背も高くはないが、低い訳でも無い。そして、顔も整っていて髪は薄い水色で流れる川の様な綺麗さだ。道行く人100人に聞けば誰しもグッドと言うだろう。
「はぁ〜……俺はな、殺す、破壊、無敵の代名詞である隻眼の死神なんだぞ。救世主の救の字も無いぞ」
「だから、さっき私を…」
「もう聞き飽きた。止めてくれ」
「では、分かりました天の御使いさん」
「その呼び方は止めろ!オルキヌス・オルカだ!呼び辛いならオルカで良いから。その呼び方だけは止めろ。変な気分になる」
「ふふっ、貴方は面白い人です。御使いさん」
「ああー‼︎止めろって言ってんだろ!」
結局、この様なくだりを後数回やった後に日がとうに落ちて真っ暗だと知った二人は野営の準備をしていた。準備といっても徐晃が殆どこなしていたのだが……
「済まないな。殆ど手を煩わせて」
「いえ、1人でいるよりは全然良いので」
「1人で旅をしているのか?」
「いえ、私は曹操様の噂を聞いて士官したいと思い旅をしてました」
「全く、分かんない単語だらけだ……」
「オルカさんはここに来る前は何を?」
「済まない。俺の過去はあまり語りたく無いんだ」
「す、すいません!」
急に暗くなるオルカに慌てて謝る徐晃。
そんな徐晃を見て、オルカは申し訳無い気分になる。
「謝るな。別に大した事じゃ無い。最近はある人を探して傭兵をしてただけだ」
「どんな人なんですか?その人」
「ソラ シラヌイ。俺達、死神をまとめ上げたカリスマだ。俺と歳は変わらないのに何でもこなしてた……」
「良く分からない単語ばかりですが、オルカさんが言うならすごい人なんですね」
「凄いってもんじゃ無い。100の事をやれと言われたら200ぐらいまでやる」
「そんな凄い人に私も会ってみたいです!」
「多分、この世界にいないと思う。天の世界でのんびり暮らしてるんじゃないのか……」
と、オルカがソラの事を徐晃に言っていると……
「くしゅ!……うぅ」
「どうしたソラ坊?風邪か?」
「俺が風邪なんか引く訳無い」
「そ、そうか?強がるなよ。なんなら風邪薬で…」
「いらん!」
と言うやり取りを、一刀達に客室に放り込まれたドッグとソラがしていた。
再び場所はオルカ達のいる森へ。
「お前も早く寝た方が良い。俺が見張ってやるから」
「でも!」
「今日の礼だと思え。それに俺は一週間は寝ず食わずで行動できる」
「あ、ありがとうございます……」
横になった徐晃はオルカの方向は見ずに一言、お礼を言った。
しかし、オルカは既にイズマッシュ・サイガに目が行って徐晃の事はいない様な感じに思っていた。
一瞬だけ徐晃は「むっ…」と言った曇った表情になる。
「……香風です」
「えっ?」
「私の真名。香風です。貴方に真名を預けます」
「そうか、生憎俺にマナとか言う大層な名は」
「分かってます。嬉しかったんです。1人、長旅で疲れていた時に賊に襲われて、そしたらオルカさんが格好良く現れて……」
「そうか」
「……………」
「って、おい」
「……………」
「寝てやがる……全く、飛んだ女だ。俺が襲うかも知れないってのに……」
と、最後にオルカがポツリと言うと再び、自分の愛銃イズマッシュ・サイガの掃除を始めた。
この時、香風は二度目の「むっ…」と曇った表情になった事はオルカは知らない。
そして時は戻り、一週間後へ。
オルカと香風の2人は許昌を前にして森の中を綺麗と言うのもアレだが、迷子になっていた。
「あー!なんだよ!さっきと同じ道じゃねぇーか!キョショーは何時になったら着くんだよ。もう一週間だぞ!」
「すいません!」
「だから謝るな!」
頭を抱えながらオーバーリアクションでひたすら困ったと言っているオルカ。
行商人に道を聞いてはその道を行き、また元の場所に戻るを繰り返し、一週間が過ぎていた。
香風の方向音痴とオルカの適当さが加わり、収集が付かなくなっていた。
行商人に連れて行って貰うと言う選択肢を何故選ばなかったと言えばそれまでだ。
「こうなったら……香風、掴まれ。面倒いのは嫌いだ。だから一直線でキョショーまで行く」
「えっ?」
「モタモタするな!」
「は、はい!」
一瞬、と言うより、香風にはオルカの言っている事は理解出来ない。
一直線で許昌まで行くと言ってと想像が付かない。
そんな感じで、恐る恐るオルカの肩に掴まると、オルカは戦斧ごと香風をお姫様抱っこの如く持ち上げる。
「ひゃっ⁉︎」
「じゃ、行くぞ」
恥ずかしさで顔を真っ赤にさせる香風などお構い無しに、オルカは足に力を込め始める。
「良し、こんなものか。加速モード。」
隻眼の死神の技を使い、右目を赤く輝かせると、香風をお姫様抱っこのまま、オルカは姿勢を低くする。
「前進加速!」
オルカが叫んだ瞬間、信じられない光景が香風を襲う。既に空中を飛んでいるのだ。上空100メートルぐらいの高さを。遠目でオルカを見た行商人には腰を抜かしていた。まるでミサイルの様に空へ飛んで行ったのだから。
「ひゃぁぁあー⁉︎ 」
「ハハハッ!」
降下する感覚に香風は悲鳴をあげ、オルカは笑っていた。それも、当たり前だ。香風には体験した事の無い恐怖なのだから。
そのまま凄い勢いで降下したオルカ達は無事に着地する。
「はい、到着!」
「はぁ…はぁ…」
許昌の街中、ど真ん中に着地したオルカ達。それを見た許昌の住民達はいきなり人が降って来た事に驚き、腰を抜かしていた。
「もう!酷いです!」
「許せ。でも着いた」
「ですが!」
余りに酷い空の旅に香風は抗議する目でオルカを睨む。しかし、オルカは全く気にせず。許昌の街並みを見渡していた。
そんな中、許昌を警備する兵達はオルカと香風の2人を囲んだ。
「お前達!何をしている!どうやって入った!」
「はっ?普通に空からだけど」
「普通?それの何処が普通だ!えぇい、こ奴らを捕えよ!」
「ええ⁉︎ 」
「はっ?普通に入ったって言ってるだろ、おつむが弱いのか?」
警備隊に言われて驚く2人。
それもその筈、国で言うなら無断入国なのだから……
この後、オルカが3日逃げ切った事は許昌中で噂になった。
徐晃 公明の真名は公式にしてありますが、性格はオリジナルです。
「I would talk about speed for you」
直訳にすると、貴方のために速さについて話します。
意訳はそれぞれに任せます。
お前に速さってものを教えてやるよ




