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真・恋姫†無双-獣達の紡ぐ物語-  作者: わんこそば
前日譚 群れない狼
3/117

前日譚3


イタリア、ミラノ。

ビルが多く建ち並ぶこの街に、明確な殺意を持った影が15ほど。



「敵襲ー‼︎」



ミラノのビル群の一つのマフィアが管理するビルに、敵を知らせる叫びと、銃声が反響した。

敵と言う言葉に反応したマフィア達はテーブルやロッカーに放り投げられた様に管理されていた銃器を手に、フロアを慌ただしく走り出す。

マフィア同士の抗争などは日常でしかない裏の世界で、こう言った事は慣れていた。

ただ、いつもと違った事はいきなり照明全てが消された事だ。

ストンッと電源部を根元から全て落とされたような消え方にマフィア達は今までにない焦りを覚えた。



「ボス、駄目です。エレベーターが動きません」



エレベーターを使い、地下に逃げて脱出を考えていたマフィアのボスは予想外の出来事に焦っていた。



「非常電源設備はどうなっている!」


「あちらも落とされたのかと」



思わず激昂し部下へ詰め寄るが、部下は申し訳なさそうに答えた。

逃げ場を一つ潰された事にマフィアのボスは舌打ちをし、



「クソッ!ヘリだ!ヘリを使う!」



用意していたもう一つの脱出方法を使う事にした。

エレベーターを使えない以上、屋上に置いてあるヘリへ向かうには非常階段を使うしかない。

その非常階段へ向かおうとした矢先に突如、後方にある窓ガラスが割れる。

かなり高層階に位置するこのフロアで窓ガラスが割れる状況など少ない。

黒い影が月明かりで照らされいるのを目で見てようやく敵が侵入して来たのだと理解した。

窓ガラスが割れた音で部下達が次々に集まって来る。



「ボス!早く逃げてください!下のフロアは全滅したようです」


「この短時間でワンフロアが全滅⁉︎」


「ボスこちらへ」



部下が、ボスを非常階段へ誘導すると同時に、黒い影が銃を発砲。

耳を塞ぎたくなる銃声と悲鳴が聞こえるのを背に非常階段へと誘導されていく。



「銃声が近い!早くヘリに急いで下さい!私が時間を稼ぎます」



部下に非常階段へと追いやられ、扉を閉められる。1人になったボスは階段を上り始めるが、半階上がった瞬間に、閉められた扉を、銃弾が何度もノックする音が響く。

目を背けたくなるのを我慢して、ボスは最上階を目指した。



もう何階まで上ったのか分からない。

息が上がるのを感じながらもヘリを目指して登り続けた。

足を止めれば、あの黒い影が追いついてしまう。

せっかく逃げる為に時間を稼いだ部下の努力を無駄には出来ない。

そんな事を考えながらも足を動かしていると、下の方から、コツ……コツ……と足音が聞こえて来る。

ヤツだ!

ボスは恐怖を覚えながらも必死に足を動かした。

今、下を見れば死ぬ!

死がすぐそこまで迫って来ているのに、屋上に着く兆しが見えてこない。

時折、下から銃声が響くと近くの手すりから火花が散る。

まるで急かすような、追い詰められたような感覚に、自分が狩の獲物であると理解させられる。

やっとの事で屋上につくと、急いで扉を閉め、その辺に置かれているものでバリケードを築く。

足音は止まり、ドアノブがガチャガチャと音を立て動くが、扉は開かない。

今のうちだと、マフィアのボスはヘリへと向かう。

屋上には敵はいなく、下のフロアと比べると静かだった。



これで、逃げれる!



そう確信し、ヘリに乗り込むと、どうやら部下達によってエンジンはかけられていたようだった。

ローターの回転数を上げ、いざ飛び立とうとした時、ピシッと目の前のガラスが砕け散った。

その直後、自身の胸から何かが流れ出るのを感じた。



「あ、あ、ああ………⁉︎」



声にならない悲鳴をあげ、必死に胸を押さえるが流れ出るそれを止める事は出来ない。

心臓を撃たれたのだと理解はしたくなかったが、流れ出続けているそれを目の当たりにし、恐怖をわかせる。

的確に心臓を射抜かれ、衝撃と恐怖で動けなくなったマフィアのボスはもう一度目の前のガラスが割れる音を聞き、視界を暗転させた。



この日、イタリアのマフィア組織の一つが、世界から抹消された。

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