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真・恋姫†無双-獣達の紡ぐ物語-  作者: わんこそば
第一章 外史に落ちた一匹達
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19話 一刀の心



5日目


連合軍、天幕。

会議の為に連合の主要将軍達は集まってるが、表情は固く暗いものだった。

笑顔でいられるわけが無かった。

夜中に起きた、天の兵への襲撃。

寝静まる夜中に食い散らかす狼のような存在。


暴走するとはいえ、実力はあった彼等250人が、無残に殺され、その死体を焼かれる。

しかも、それを行なったのはたった4人という情報。

前日起きた連合軍の一部隊と、敵の天の兵の1人との交戦。

そんなレベルが複数人も存在するだけで震え上がるほどだ。



「本当に4人なのか?」


「ええ、そうと言ってるでしょ? それとも100人と言って欲しかったかしら?」



地方の諸侯に対して華琳は、呆れたと表情しながら答えた。

既に幾度も同じやりとりを繰り返してる事に嫌気がさしている。

対して、諸侯は意地でも現実を認めたくは無く、焦りが出ていた。

そんな化け物を目にして、この戦いを勝てる事は出来ないと認めてしまえば、この国がどうなるかを分かっている。

血による粛清。それが自身へ及ぶ事も。

それこそ彼等が粛清に来てもおかしくは無い。



「拉致があかないわね。あの汜水関を誰が落とすのか、それが重要なの」


「なら、曹操、貴様が出れば良かろう!」


「それがいい!」



袁紹陣営の誰かが言ったその一言に次々と同調者が現れる。

恐怖から一転、獣の贄となる標的にした事で強気になり始める。

華琳はこうなると分かって仕組んでいたが、それでもこの光景にため息が出る。



「分かったわ。そこまで言うなら、この曹操が汜水関を落とそう」



高らかに宣言する華琳へ、袁紹は面白くないと言った表情を向けた。





軍師2人の知恵を借り、一つの博打を打つ前の一刀は精神統一に励む。

余計な邪念を考えず、無にする。

だが、かつての友の顔が浮かぶ。



「空が敵?……」



前日での彼はまさしく敵と言ってもいい振る舞いをしている。

愛紗や星といった仲間と同盟関係を結ぶ者にも敵対し、あまつさえ銃を向けた。

それどころか、天の兵の抹殺。

一方的だったとはいえ、友好があった彼に剣を向ける事が出来るんだろうか。

机に置かれる自分の刀を触り、覚悟を確かめる。

洛陽で彼との戦闘があるかもしれない以上は、相応の覚悟がなければ取り返しの付かない事になる。

事実、空は一刀を敵と認識して銃を向けた。

その目は動揺で揺れていてもだ。



そんな彼を捕獲するためには、一瞬の機を逃すわけにはいかない。

ただ一つ難点は、彼はこの世界に住む武将を殺さないのであって、天の兵は容赦無く殺すと言うこと。

天の御使いと呼ばれる以上は、その事を覚悟してなければ、初手で殺されてもおかしくはない。

一刀は目をつぶり、昔の彼とのやりとりを思い返す。



『そんなにボロボロになってまでやる事か? アホらしい』


不良から後輩を守ってボロボロになった俺を助けた最初の邂逅。


『誰?』


転校したきた空と同じクラスになったのに全く覚えられてなかった2回目。


『物好きな奴……』


クラスで浮く空に何度も話しかけた1週間。


『俺はもともと勉強ができる』


帰国子女のはずなのに現国で負けた中間テスト。


『不安か?』


不良に囲まれた時すら余裕で気遣ってられる強さ。


『ふん、余裕だ』


体育際で、サッカーとかやった事ないと言いながらも、一点すら許さずドヤ顔をするキーパー姿の空。


『その子に手を出してみろ。ミンチだ』


銃をもった悪党に、怒りを露わにしてナイフを構えた空。



そんな光景が瞼の裏を流れる。

もっと色々あった。

たった1ヶ月ちょっとだったのに。

なんやかんや言いながらも助けてくれる彼は、一刀に取っては大切な友人だ。



『悪いが、お別れだ』



たったその一言を残して帰るまでの間は。

空が姿を消して、やっと出会った先は古代中国。

だからこそ、一刀も覚悟を決めなければならない。



「…………いや、違う。空は誰よりも賢いし、優しい」



空と話をする為に軍師の力を借りて出した作戦。

それを達成するためには邪念は命取りになる。

だからこそ心を無にしようとする。

そうでなければ多くの死を一刀は背負わなければならない。

そうなりたくはないし、彼にもそんな事をさせたくはない。

半ば邪念を捨てる事を諦め刀を取ると帯に挿す。

覚悟は無くとも、また関係は気付ける。

そう信じて……



「時間だよ、ご主人様!」



桃香に呼ばれ、天幕の外へ踏み出した。

大規模な策が始まる。


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