表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真・恋姫†無双-獣達の紡ぐ物語-  作者: わんこそば
第一章 外史に落ちた一匹達
21/117

15話 狼殺し

戦場の空へ上がる緑色の二つの光。



「信号弾……緑が2発」



戦場から上がる信号弾にドッグが反応した。

それは空からの要請である。



「援護要請か。各員、援護してやれ。アイツからの援護要請となると想定外が起きた状況だ」



ファントムが指示を出すと各々が手に銃を取る。

そこへ急ぎで1人の武官が走ってくる。



「あ、あの。華雄将軍をどうすればいいのでしょう?」


「気絶しているだけだ。介抱してやれ」



回答と共に追い返されてしまう。

飛ばされた華雄は、空中でドラッグシュートを展開して汜水関へと帰還した。

あまりの勢いに気絶してしまった彼女は可哀想な事に、回収されるや彼女の部隊に押し付けられてしまった。

流石に生きてはいたが、対応に困ってしまったと言える。



「さて、我々もようやく出番だ」





空は奪ったベリルで敵を撃ち抜きながら大立ち回りを繰り広げている。

既に葬った敵は20人を超えている。

しかし、銃を持つ敵は勢いが衰えない。

当然だが、他の連合軍兵士達は対応が出来なく退却をしている。

古代中国にありながら現代の近接戦闘を行う、可笑しな地帯に変貌していた。



「ハハッ、死にやがって。マヌケが」



自分の横にいた仲間がやられても笑って撃ち返してくる光景に空の顔が引きつっていた。

空は一度、岩陰へと滑り込むと、奪った弾倉で即座にリロードを行う。



「スリルジャンキー共が……」



隠れているのに無駄弾を大量に消費してくる事に悪態の一つも吐きたくなる。

実際、弾幕密度が濃すぎて、空も攻めあぐねている。

援護を要請している以上、汜水関の上から仲間達からの援護射撃を受けているが、数が一向に減らないのだ。

3本あったミリタリーパックを連結させた尻尾も装備をだいぶ消耗し、残るは1本まで減っている。

使わなくなったP90とそのマガジンは既に投棄され、かなり身軽になっていた。



この状況を打開するべく、次の手であるM18スモークグレネードのピンを引き抜いた。

軽やかな金属音が鳴ると、それを近くの地面に転がした。

筒状の先から大量の白リンを撒き散らすと、大気中の水分を吸って化学反応を起こす。

辺りの視界は真っ白になるほど悪化した。

視界が悪くなれば攻撃が止まるなどと甘い考えだったならそれを改めなければならない。

なぜなら、逆にその白煙目掛けて弾幕が降り注ぐ。

まるで餌を見つけた魚のようだった。

だが、空の目的は別で煙とは反対側へと抜け出すと同時にベルリを発砲__数人を撃ち殺す。

戦力が削られ弾幕が薄くなった箇所__空はそこへ目掛けて駆け出す。

弾切れを起こしたベルリをその場に投棄し、コンバットナイフを一呼吸のうちに抜き出す。

そのまま敵の集団へ飛び込み、手にしたコンバットナイフで次々と敵を斬りつけた。



「ぎゃぁ!」


「こ、この!」



広がった白リンで視界が悪い中、聞こえるのは悲鳴と怒号。

何人も叫んでは、何人も悲鳴を上げる。

それが10人かそれ以上に聞こえてくる。

空が敵の首へ真っ赤に染まったナイフを滑らせて、動脈を切断すると、そこへ目掛け何十発もの弾丸の雨が降り注いでくる。

斬りつけた敵を盾代わりにすると、その中盾はズタボロになる。

分かったのは、戦っていて嫌になる程彼等は味方意識など皆無であるという事。

個人の傭兵が集まっても、もう少しはまともな光景になるだろう。

もはや獣の集団である。戦うのも嫌になるほどだった。

だが、何も考えずに弾を撃てば経戦能力の低下を引き起こす。

敵が次々と弾切れを起こし始め、次第に弾幕が薄くなる。

その隙間を見逃す訳には行かない空は、ワイヤーを駆使して戦場から離脱した。





防衛4日目。

流石に注意の一つでも受けたのだろう。

彼等は昨日よりは落ち着いた様子である。

そして、連合軍も目立った攻勢は掛けては来なかった。

昨日のあの戦闘を見た以上は当然とも言える。



「昨日の連中、やけに静かだね」


「静かなのはいい事だ」


「昨日のアレを見せられてまだやる気があるのなら、それは余程の死にたがりか、ただのアホだな」


「うんうん」


「分かってないだろお前……」



ドッグの言葉に首を縦に振り、頷くレイン。

それを見たファングが呆れていた。

惚けた反応を見せるレインに、他の3人は笑う。



そこから少し離れた場所では空とファントムの2人が話し合っている。

昨日の戦闘で拾った敵のワッペンについて、空はファントムに情報を求めていた。



赤い地平線(レッド・ホライズン)



ファントムから教えられたその名前を読み上げる。

空の記憶の底には彼等の存在はないようである。



「中米で活動していた傭兵グループだな。麻薬組織に手を貸す事が多い事で有名な筈だ。出身は元ギャングや警察、軍といった落ちぶれの集まりのようなものだな」


「弱いわけだ」


「不満か?」


「いや、仕事がしやすくて助かる」


「ただ、気を付けておくべき点が一つ。奴等、ほぼ全員がヤク入りだ。戦闘力は俺達の足下には及ばないが、それでも厄介だからな」


「戦闘経験がおありで?」


「他人行儀はよせ。一度だけある。ヤツらしつこいぞ?」


「肝に銘じておくよ」



それから赤い地平線の情報のやりとりを終え、連合の方へと視線を向ける。

彼等は下がった場所で、つまらなそうに待機している姿が見えた。

根っからの戦闘狂気質に空は溜め息を吐くしかない。

そんな空の背をファングが叩いた。



「よう、ソラ坊」


「子供扱いはよしてくれ……」


「そんなに嫌か?」


「真似する奴が増える」



空はレインを見る。

彼は楽しそうに銃を分解整備をしている。

空の反応にファングは笑っているだけ。



「いいじゃねぇか、減るもんじゃない」



別の問題に溜め息を吐きたくなるが、諦めたようで連合軍の後ろへと下がった敵を指差した。



「それより、アレをどう思う?」


「嵐の中の静けさと言いたいみたいだな」


「多分、仕掛けてくる。それも全戦力クラスで」


「だろうな。ここまでコケされた以上は殺しに来るさ」



その言葉でバツの悪そうな顔をする。

それを見たファングは笑った。

あまり感情を見せる事の無い空が少し困った顔をするのがツボにはまったらしい。



「先に潰したいって顔だな。その気概は買うが、やれば間違いなく悪になる」


「分かっている」


「なぁ、坊主。俺達の世界で悪だったとしても、この世界でまでソレを背負わなくて良い。俺達と違ってお前はまだやり直せる」


「どういう形であれ奪う行為が悪であると自覚しない奴等には虫酸が走る。それを善意だと言いながら奪うなら俺は悪でいい」


「つくつぐ損なヤツだよお前は」



どこか納得したように、諦めるかのように頷くファング。



「なら手伝ってやる」



そして、武器を取り出したのだった


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ