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真・恋姫†無双-獣達の紡ぐ物語-  作者: わんこそば
前日譚 群れない狼
2/117

前日譚2



イタリア、カンパニア州サレルノ。

アマルフィ海岸西にある街、ポジターノのホテルの一室をノックする青年に近い少年が1人。

黒のパーカーに下は迷彩柄のハーフパンツ、黒のコンバットブーツとファションセンスなんてものはどこかに置いてきてしまったかのような格好するのは、先日、25人を短時間で屠った切り裂きジャックと呼ばれる彼だった。

10秒も経たないうちにそのドアが開かれる。



「よう、来たか坊主」



50代ぐらいの男性が部屋の中から姿を見せた。

坊主呼ばわりされる事に不満を持つ彼は、不機嫌そうに「久しぶり」と言うと、部屋の奥に入って行く。

ホテルの中でも一番高価なスイートルームに、彼以外の人が15人ほど部屋いっぱいにおり、酒を呑んでいたり、銃を弄っていたりと好き放題に部屋を使っていた。

彼が最後の到着者だったようで、先程ドアを開けた男性が部屋に入ると手を叩いた。



「さて、始めるぞ」


『うぃ〜……』



部屋にいた人達は気怠そうにソファーや椅子に腰掛けていく。

彼も部屋のソファーに座った。



「確認するが、全員揃ってるな」



仕切るその男性は己の目で人数を揃っている事を確認する。



「よし、オーケーだ。アオイ君」



全員いる事が確認出来、部屋の奥に向けて呼びかけると、日本人女性が大量の紙を抱えて出て来た。



「フェルカーモルト、あんたがいくら女好きだからって、こんな歳下に手を出すのはどうかと思うぞ」


「ストーム。お前はその口の減らなさは相変わらずだな。こいつは俺の女ではない。ソラの専属オペレーターだ」



机の上に紙の束を置く彼女をほったらかしに、部屋中の視線はソラと呼ばれる彼に全て集まった。



「……いや、聞いてないけど」



何にも知らされていなかったソラは、何言ってんのこの人?、とフェルカーモルトを睨んだ。

すると、「なら、今言った」とだけ返ってくる。

それで静まる訳もなく、部屋中、その話題で騒がしくなる。



「おお、良いなソラ坊。専属オペレーターちゃん可愛いし。一体どこでそんな娘拾って来たんだよ」


「おいおい、攫ったとかじゃ無いよな?」


「うわぁ、ソラならありそう……」


「ちょ…人をなんだと思っ」


「ねぇ、君。あんな無愛想な奴より俺の専属オペレーターやらない?」



彼に詰め寄るどころか、その娘を口説き始める者まで現れた。

いきなり口説かれたアオイと呼ばれる娘は、慌ててソラの後ろに隠れた。



「あんたはタイプじゃ無いってさ、コブラ」


「まだ何も言ってないだろ!適当に言うな、レイン」


「いや、その態度。明らかに怖がられてるだろ」


「ファング、お前までそっちにつくか!」



どんどん騒がしくなるスイートルームは止まる事を忘れたようだった。

その中、「やめんか」とただ一言で全員を黙らせた。

殺気すら篭ったその言葉は有無を言わさない凄みがあった。



「ボス、続きをどうぞ」


「感謝するぞファントム。隊長として中々様になって来たな」


「ありがとうございます」



ソラは後ろに引っ付くアオイを邪魔そうに引き剥がすと、無理矢理フェルカーモルトの方へと追いやった。

フェルカーモルトはゴホンッと咳を一つ入れると、アオイと言う娘について説明した。



「ええ、アオイ君は、ソラ坊が先月の日本での仕事の時に、同行していた社長が気に入って連れて来たらしい。因みにあのヤマトの娘だそうだ。下手に手を出すと痛い目見るぞ」


「おいおい、どうしたらあの髭ダルマからこんな娘が出来るんだよ。詐欺だろ」


「きっと、あの髭ダルマの妻が美人だなこりゃ」


「うわぁ、ありえそう」


「挨拶ぐらいしておきなさい」


「えっと……よろしくお願いします」



騒がしくなる中、フェルカーモルトに言われ、アオイは拙い英語で挨拶をした。

だが、まだ英語を話す事に慣れていなく、短く、一言だけだった。

その後、直ぐに再び知り合いであるソラの後ろに隠れてしまう。

邪魔そうにするソラだが、今度は引き剥がしはしなかった。



「彼女はまだ英語が喋れない。と言う事で、同じ日本の出身であるこの坊主の専属って訳だが、よろしくしてやれ。頑張って日本語を勉強すれば彼女とも友達にはなれるだろうから、勉強するなら今のうちにな」



その一言で再び騒がしくなるが、今度はフェルカーモルトが数回手を叩く。

すると、一斉に黙った。

それもファントムの殺気の篭った一言での黙らせた方とは別の黙り方だった。

全員が殺気を滲ませるような戦闘モードに入ったかのような雰囲気だった。



「仕事の説明するぞ」



アオイはその雰囲気に圧倒されながらも固唾を飲んでそれを注視した。



「今回の仕事は中々に大きい。先日狩ったマフィアについてだが、やはりある組織との繋がりがあった。マフィアのボスは現在亡命を企画している。俺達はそれを未然に防ぎ、この世界から消す」


「要するに殺れと」


「そうだ。だが、一筋縄じゃいかない。ターゲットには100名近くの護衛がいる。それを突破する必要がある」


「その為に15人で殺ると。多くないか?その数なら3人で十分足りるだろ」


「普通ならな。マフィアのボスだが、コレがまた厄介でな。ミラノにビル一つを持っていて、そのビルの警戒がやたら高い。3人で行うには時間が掛かる。俺達には今後の1億ドルの仕事がある。これはローンウルブズ全員で行う仕事だ。今回は合流を急ぐ為に15人で早急に終わらせる」


「なるほど。今回の作戦の詳細はボス?」



ここに15人が集められた理由を知ったファントムは作戦の詳細を求めた。

例え、どんな仕事だろうと行動の詳細を知らなければどうする事も出来ないからだ。



「ターゲットはビルの35階。どこにいるかまでは詳細が無い。今回は3つのルートから侵入、敵を殲滅しながらターゲットを屋上へと追い込む。屋上にはヘリポートがあり、ターゲットはそれを使う可能性がある。イーグルはターゲットがヘリに乗り込む前に狙撃し、任務完了だ。任務完了時に敵が残っていた場合、これを無視し、離脱する。任務が完了次第、1週間の休暇を与える。その後、トルコ共和国イスタンブールで合流だ。休暇中に次の仕事の準備をするように。何か意見のある者は?」



アオイが持って来た紙束の一つを手にしながら全員に詳細を話す。

それが全て終わり、質問などを受け付けると、1人が手を挙げる。

ホーネットと呼ばれるメンバーだった。



「次の仕事とは一体何です?」


「最近話題に上がる、過激宗教組織による国家もどきの首都の完全殲滅。依頼者は世界各国。ターゲットはその首都に住む人全てだ」


「なるほど、それは面白そうですね」


「他には?」



再度、フェルカーモルトが聞くが、今度は沈黙が答えだった。

手をパンッと再び叩く。



「作戦は三日後だ。全員準備、準備。ミラノに行くぞ」



その一言で、全員が仕事の準備を始めた。


フェルカーモルト

年齢50代?

ローンウルブズを束ねる指示オペレーター兼実働オペレーター。私設部隊ローンウルブズの創設者であり、初代隊長。元々は実働オペレーターのみであったが、空の入隊を機に指示オペレーターを兼任している。

ローンウルブズ全員のコードネームを考えた本人でもある。

ローンウルブズでは空とファントムの師匠にあたる人物であり、空には射撃や格闘を全て叩き込んだ。自身は一昔前にかなりやんちゃしており、世界各国からブラックリストもしくは現在もマークされている。

戦闘力は空の師匠である事からかなり高く、彼と同等もしくはそれ以上の実力を持っている。

特に決まった武器は持たず、状況によりあらゆる武器、兵器を扱う。その精神は空に引き継がれており、彼も状況によって武器の使い分けを行う。

現在、ファントムに隊長をゆずり、指揮系統を教えている。





アオイ

17歳。

身長150cm

体重 不明

本名 大和 葵


ローンウルブズの指示オペレーター。現在はソラ専属オペレーターであり、先月入隊したばっかりである。

日常会話レベルで話せる言語はまだ日本語のみであり、ローンウルブズ内で日本語を話せるのはソラと言う経緯で専属オペレーターとして入隊する事になった。

指示オペレーターとしての実力はかなりなものであり、社長に気に入られている。戦闘に関しては、決して弱くは無いが、ソラ達ローンウルブズの戦闘力の高さにより隠れがちである。

父もローンウルブズでは無いが、アンノーンのどこかの部隊に所属している。

現在はソラの下で英語を勉強中。



ソラ (前日譚ver)

17歳。

切り裂きジャックの通り名を持つ、ローンウルブズのメンバーの1人。コードネームはジャック。ソラ本人やファントム達にはコードネームは通り名から付いていると思われているが、彼のコードネームの由来はトランプカードの11のJから来ている。何の柄なのかはフェルカーモルト本人のみぞ知る。

戦闘力は極めて高く、あらゆる仕事を単独でこなす事が多い。ローンウルブズ入隊以前は少年兵として戦場をうろついていた。

先月まで日本で仕事をしており、アオイがローンウルブズのソラ専属の指示オペレーターとして加わった。


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