7話 旅立ち
11月14日 以下同文
「えい!」
「やぁ!」
「はっ!」
「とぅ!」
「ほら、もっと重心を低く」
あれから一週間、子供達は空に教えられながら格闘術を学んでいた。
最初は武器を持ちたがっていた子供達だが、流石に大人達と空が止め、格闘術を学ぶ事へと妥協した。
空とハルトマンが手本を見せながら子供達に手ほどきをして、それなりの動きをさせているが……
「なんやこれ……」
外から来た来客には異様な光景だった。
当然の反応とも言える。
齢10超えた程度の子供が鋭い動きで組み手をしている光景はそうそう無い。
下手をすれば大人の兵すら倒せそうな鋭さを持っている。
「あんさんの仲間って、もしやあの小さいガキちゃうやろな?」
「え、ええ、違いますよ……」
関西弁で話す少女を連れたファントムも目の前の光景に少し反応に困っていた。
ほんの少し離れた間に遊び回っていた子供達が組み手をしていた、なんて到底想像出来るものでは無い。
引き気味で固まる2人を見てレインは笑いながら声を掛けた。
「あ、隊長じゃん。早かったね」
「あ、ああ……で、これは?」
「オ、オホンッ!えーっと、つまりこの2人があのガキ共にあの技を教えたっちゅー事やな」
村から借りている家に移動し、事の説明を受けた張遼こと霞は驚きながらも食い気味にその説明を聞いていた。
当の教えていた1人である空は興味なさそうに霞に目もくれずにお茶を啜っている。
ハルトマンは苦笑いで空を見ていた。
「あー、紹介する。こちら、洛陽を治める董卓さん?のところで客将をしておられる張遼殿だ」
「改めてよろしゅー、うちは張遼。字名は文遠や」
「はいはーい、質問なんだけど。客将って何?あと字名ってのは?」
霞が自己紹介を終えると待ってましたと言わんばかりにレインが手を上げて質問する。
この世界の知識など持たない彼等の至極真っ当な疑問だ。
それに答えたこはファントム、ではなくドッグだった。
「俺も詳しく無いが、簡単に言えば雇われの将校だな。字名は通り名、二つ名みたいなものだ」
「流石、元文学部は違うねー」
「元は余計だ、元は」
ストームがいらない一言を言い、ドッグと口論を始める。
そんな2人を一度退けるとファントムは続きを喋る。
「で、だ。彼女の雇い主である董卓殿が俺たちの新しい雇い主になる訳だが、異論は?」
ゴースト、空、ドッグの3人がほぼ同時に手を挙げる。
「業務内容は?」
「右に同じ」
「ああ、俺も同じだ」
「洛陽の警備、他雑務だ」
3人からの質問にファントムは答えるが、ドッグが近寄ってきて霞に聞こえないように耳打ちで尋ねる。
「戦闘に駆り出す訳では無いんだな?」
「今のところはな」
出来ればこの火種の巣窟からさっさと退避したいドッグなりの考えだった。
一歩間違えばこの危うい状況が悪化しかねない。
濁した答えにドッグは頭を抱えたくなるが、隊長が決めた以上従う他はない。
「今日の午後に出る。準備をしておけ」
こうして彼等の新たな仕事が決まった。
村の人々に経緯を伝え、旅立つ事を話した。
多くの村人が別れを惜しみ、子供達は寂しそうにしていた。
彼等15人はこれから途方もない戦いの旅路へと旅立つ事になる。
◆
「それで、僕を呼びつけるなんてよっぽどだけど、今度は何をさせるつもり?」
1人の少年にも似た男が目の前の椅子に座る青年へと問い掛けた。
「うん、そうだねー。君には黄巾党の残党を集めてある事をやって貰いたいんだ。構わないね?」
青年はまるで近くにある物を取ってと言わんばかりの軽さで答えた。
それに少年の顔が引き攣る。
「構わないけど、いい加減僕を便利な駒扱いするのはやめて欲しいんだけどな」
「仕方ない。君以外は癖が強すぎるんだよ。それに君はこの程度で失敗はしないだろう?」
「その安い挑発に乗るのは癪に触るけど、諦めてあげるよ、アドミニストレーター」
「心強いね。じゃ、頼んだよシエル」
この勢力が後に三国を苦しめるとはまだ誰も知らない。
いや、知る由もなかった。
二章へと続く。
この話で第一章は終わりです。
少しはまともな話しにはなった筈ですが……
こっから二章へと続きますが大分変わると思いますのでご了承のほうを。
主に読みづらい。
そのうち一章と同じく入れ替えるのでお待ちください。
あと、設定のやつはそのうち入れ替えます。




