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第4話 - 出頭

別に逮捕はされないですよ!


天然系肉感的美女、やっぱり普通には居ないですよね?

+ ☆ & ★ + + + + + + + + +



 ユズ姉との無意味な闘争を終えて、何とか無難な服を数着借りる事が出来た。未使用の下着も手に入ったのは行幸だろうね。作画資料という名目で、普通では使えないような衣装を多く持っているユズ姉に少しだけ感謝する事になったよ。


 理々さんも意外とプライベートなファッションショーを楽しんだようで良かったな。個人的には単なるコスプレだったけどね。ユズ姉の見立て通り、理々さんはそういった衣装が似合うし、逆に普通の服が似合わないという奇妙な女の子だった。(ユズ姉もそう言う所があるね、俺がユズ姉に恋をした時もそうだった……)


「あの、幸太さん、こんなに服をいただいて良かったんでしょうか?」


「ん~、ユズ姉が衣装持ちなのは分かったよね?」


「はい、何時着るか分からない物も多かったですけど?」


「お祭りの時だろうね、特殊な……」


「はい?」


 いや、あの事は忘れると決めたはずだったな。


「でも、理々さんが色々な服を着るのを見れて良かった」


「そ、そうですか?」


 理々さんはどうも大人しい性格の様だけど、意外にボンテージとか身体の線が出る衣装が似合うんだよな。尻尾付きのキャットスーツとか言うのは凄いインパクトだったよ。明らかにユズ姉に騙されているんだけど、その気になって”ニャーン♪”とか言っちゃう辺りはある意味凄いと思うよ。


「幸太さんは、どの服が似合っていたと思いますか?」


「ブフォ、ゴホン、ゲホン」


 うぐ、いきなり聞かれてむせたぞ。質問内容としてはなんでも無いんだけど、えーい、邪念よ去れ!


「大丈夫ですか?」


「うん、理々さんならどんな衣装も似合うよ、さすがに外を歩けない格好は不味いけどね。中学生の体操服は別の意味でちょっとおかしいけどさ」


 きちんとした衣装(服装と言えない所が微妙だ)ならかな?


「え゛! 私外を出歩けない様な格好をしちゃったんですか?」


 何故か真っ赤になっちゃた理々さん、本気で気付かなかったらしいね。天然なのか、何処かのお嬢様なのか、記憶喪失の影響が酷いのか分からないけど、すっごく危険な気がする。


「ああ、普通に外を歩くには向かないという意味だよ。ああ言う格好の人達が闊歩している場所もあるからね」


「そ、それなら良いですけど……」


「俺が選んだ服なら、出歩いても問題ないよ」


「そうなんですね、良かった」


 うん、派手な格好をしても、地味な格好をしても、コスプレしても理々さんの場合は目立ってしまうだろうけど、それは服のせいじゃないし……。


 そして戦利品を手に家に戻るほんの十数メートルの間に、声を掛けられる事になった。


「幸太君、ちょっと良いかしら?」


「あ、藤田の小母さん、こんにちは」


「こんにちは」


「こちらが理々ちゃんね、うん、話に聞いた通り美人よね」


「あの、ありがとうございます」


「うん、性格も良いわね。モモちゃんが居なければウチの嫁になって欲しいわ」


「ヨースケには、モモが一番お似合いですよ。それで、何か?」


「まあ、幸太君にも春が来たんだから邪魔しちゃ駄目ね?」


「いいえ、そう言う関係、じゃ無くて!」


 どちらかと言えば、あまり良くない出会いだったし、一般的には加害者の被害者の関係だよね?


「まあまあ、そんなに怒らないの。佐恵子から話を聞いたんだけど、警察には行くのよね?」


「はい、その積りです。ああ、小父さんに話を通してくれたんですね」


「ええ、ちょっと緊急の要件が入って旅行は中断だったのだけど、そちらは片付いたんだって」


 藤田の小父さんは警察官と言うより警察官僚なんだよな。40代後半で署長と言うのがエリートなのかは知らないけど、ある一面でヨースケの父親らしい男性なんだ。


「それで声を掛けてくれたんですね、すみません」


「良いのよ、からかったのは事実なんだから」


 うん、からかわないで欲しいね。我が家の母上殿も、辺見の小母さんも、藤田の小母さんも似ている所があってどうも俺は苦手だ。


「直ぐに行くと連絡入れておくから、受付で何時も通り名前を出しなさい」


「はい、ご迷惑をおかけします」


「まあ、幸太君も息子みたいな物だからね」


「ありがとうございます、小母さん!」


 俺は理々さんの手を引っ張って自宅の玄関をくぐった。どうも子供だと断言された気がして、その場に居辛かったんだ。



+ + +



 親父の看病(自分で気絶させておいて看病も無いけど、それに感謝してしまう父も甘いよね、ある意味マッチポンプだ)に忙しい母上殿にからかわれる前に、鞄を持って家を飛び出した。藤田の小父さんに会うだけなら手ぶらで歩いていける距離だけど、身分証明とか必要になるだろうしね。


「あの、警察に行くんですよね?」


「え? 勿論。理々さんの捜索願とか出てるかも知れないし、俺にとっては、傷害事件になるかどうかの瀬戸際なんだけどね……」


「そうですよね……」


 理々さんは警察と聞いてから、ほとんど喋らなくなってしまった。トボトボと言った感じで俺の後ろを歩いているけど、気が進まないと感じる。


 時々通行人の人達が理々さんを振り返っているのも気付かないみたいだ。あ、電柱にぶつかったサラリーマンがいるけど、気持ちは分かるよ。


 このまま警察に知らせないと言う選択肢は無いよな? 救急車も呼ばなかった訳だし、理々さんの父親とか出て来たら妙に疑われる事間違いなしだよ。


 俺が理々さんを連れて警察に行く事自体に意味があるんだと思うんだ。藤田の小父さんに相談するだけなら夜に藤田家にお邪魔すれば済む。俺(加害者)が理々さん(被害者)を連れて警察に行く事に意味があるんだろうね。(誘拐犯が自首する様な場合以外なら、逮捕はされないと思う)


 そうだ、怪我が無くても記憶に問題があるなら病院には連れて行かないと行けないだろうね。どんな病院が良いんだ? 記憶喪失科なんて無いだろうし、脳神経外科とかかな? 精神科とかは何か違いそうだよな……。


「警察行きたくないの?」


「いえ、そう言う訳では……」


 口ではそんな事を言うけど、理々さんは明らかに気が向かない様に見える。警察を避ける明確な理由があるのなら言ってくれると思うんだけど、まさか、警察に追われているとか、警察を陰で操る謎の組織から逃げてきたとか? それじゃあ出来の悪いフィクションだよ。


「理々さん、記憶が無いんだから不安に思うのは仕方無いけど、大丈夫!」


「幸太さん?」


「理々さんの事は俺が守ってみせる。喧嘩とかは強くないけど、負けない自信だけはあるからね!」


 多少の怪我なら慣れているし、身体の丈夫さも父譲りだ。身体が大きいから弾除けには丁度良い……、警察官に撃たれる様な状態には成らないと信じているけどさ!


 あっち系には冗談ではなく撃たれた経験があるから、当たり所が悪くなければ死なない自信もあるけど、こんな話は出来ないよな……。


「コータさん、はい、お願いします!」


「うん、任せてくれ」


 理々さんが、俺の事を頼もしげに見てくれる。俺の決意が伝わったとは思えないけど、頼りがいがある様の見えるなら上々さ。


「警察署だって怖がる事はないよ、留置場は居心地が良いとは言い切れないけどね」


「コータさんは、留置場に入った事があるんですか?」


 しまった失言だった。入れられたことは無いけど、入った事はあるんだ。


「うーん、説明が難しいな」


「いえ、良いです。コータさんが悪い事をしたなんて思えないですから」


「……、ありがとう、理々」


「はい、コータさん」


 信じられないけど、良い雰囲気だった。何処かに落とし穴があるんだろうけど、理々の為なら何でも出来そうな気がする。男って単純だなと思う、これじゃ親父を笑えないや。



何故、理々が幸太に懐いたかと言うと、インプリンティングという奴なんでしょうかね。


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