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プロローグ − 見者

主人公はまだ登場していません。

+ ● & ○ + + + + + + + + +



 その部屋は、まるで瀟洒な洋館の居間の様な部屋だった。高級そうな絨毯と壁紙、壁には何処かの風景画が飾られ、年代物の棚には、触れるだけで価値が下がりそうな彫刻や花瓶等が収められている。


 ともすれば下品になりそうな赤で統一された家具も、部屋の内装と相まって重厚な高級感を醸し出していた。今、その部屋に1人の客人が訪れる事で物語が始まる。


「えっ?」


 1人の少年がその部屋に一歩踏み込んで、驚きの声をあげた。青年と呼ぶには少し幼さが残る顔立ちだが、身体つきは成人のそれだろう。年齢的には凡そ17,8といったところだろうか?


 ただ、ごく普通のパジャマを着た少年に、この部屋が不釣合いなのは間違いない。


「おや、お客様かな?」


 彼の声に応える声があった、アンティークな椅子に腰掛けた少年がそうだった。大きな背もたれに隠れて見えなかっただけなのだろうか?


 その2人目の少年を表現するなら、この世の者とは思えないという言葉がぴったりだろう。1人目の少年と違ってこの部屋の主と評してもおかしくない服装をしている。


燕尾服と言うのが7,8歳の男の子に相応しいかというのは議論の余地はあるだろうが、中性的な顔立ちには似合っている。


「人が居たんだ? 君は誰?」


「人に名前を尋ねる時には、自分から名乗れって教わらなかったかな?」


「僕は……?」


 1人目の少年はそこで言葉を切った。何故なら自分の名前が思い出せなかったからだ。


「ゴメンゴメン、ちょっと意地悪だったかな、自分が誰だか分からない人にいう言葉じゃなかったね?」


「何故それを? というか、僕は誰で、ここは何処?」


「落ち着くんだね、ここから出れば自分の事は思い出すよ」


「本当か?」


「うん、今までの例から言って間違いないね。逆にここで見聞きした事は忘れてしまうけどね」


「何だよそれ?」


「そう言う部屋なんだよここは、おっと、自己紹介がまだだったね。僕はアルゴ、見者(けんじゃ)アルゴと呼ばれる事もあるね」


「賢者?」


「違うよ、別に賢い訳じゃないよ。見る者で”見者”さ。ああ、別に君の心を読んだ訳じゃない、良くされる誤解だし、表情をみれば読むまでも無い」


 最後の部分はアルゴという名の少年が、他人の心を読めるという事実を示しているが、1人目の少年はそれに気付かなかった様だ。


「見者ね、随分と大層な名前だね?」


「そうかな、それしか出来ないという自戒でこう名乗っているんだけどね?」


「?」


「僕に出来るのは見る事だけなんだ。この部屋から一歩も出る事が出来ないし、見た物に干渉する力も無い」


「見るって、何を?」


 そう言いながら1人目の少年が部屋の中を見渡した。狭いとは言えない部屋だが、窓1つ無いから彼の疑問は尤もだろう。ちなみに、出入りする為のドアも存在しないが、彼はそれを考えない事にした。


「総てをかな? 君に名前が無いと不便だね、”ゲン”でどうかな?」


「ゲン? 何故?」


 ゲンと名乗る事になった少年が納得しかねるといった口調で尋ねた。


「やっぱり憶えていなくても嫌なものは嫌なんだね。ただ、君の名前の一部なんだから嫌うのは止めなよ?」


「……」


「さて、納得してくれた所で、模様替えをしようか?」


「模様替え?」


「ああ」


”パンッ”


 アルゴが軽く手を叩いた。小さな手から出た音は、”パチン”という音だったが、部屋自体が出した音に打ち消された形だった。


 ゲンが目を逸らした訳でもないのに、部屋の内装は一変していた。瀟洒な洋館の居間にしか見えなかった部屋が一瞬で丸太で作られた粗末なログハウスに変化していたのだ。


 粗末なと言うのは前後の比較での表現で必要最低限の家具などは存在している。概ねテーブルや椅子の位置は変わらないが、アンティーク調の椅子が、無骨な木製の椅子に変わっている。変わらない物と言えば2人の少年の服装と暖炉位なものだろうか?


「なっ、何をやったんだ、お前?」


「アルゴだよ、名乗ったろう、ゲン?」


「いや、まあ、何をやったんだアルゴ君?」


 ゲンの声が警戒の色を帯びた。単なる夢にしては何かおかしいとようやく悟ったのかも知れない。


「別に警戒する必要は無いよ。ゲンに危害を加える積りなんて無い。それより、良い趣味じゃないか?」


「そうか? あれ?」


「思い出せないけど、見覚えはあるだろう? 今のこの部屋はゲンの記憶から再現した物なんだからね。ちょっと飽きてきたから参考にさせてもらったんだよ」


「ちょっと待って! アルゴって見るだけしか出来ないって言ったじゃないか」


「そうだよ、外界には干渉出来ないんだ。逆にこの部屋の中なら大抵の事は出来るよ。そのパジャマも変えようか?」


「そんな事が出来るのか?」


「勿論、但し元の世界に戻った時にどうなるかは知らないけどね。普通に元に戻れば良いけど?」


「なんか嫌な予感がするからこのままで良い」


「そうかい? おや、そろそろ”窓”が開くみたいだ」


 アルゴの言葉に、ゲンがアルゴの視線を追うと先程までは丸太の壁だった場所に、窓が出来上がっていた。ゲンはその事実に驚いたが、今更驚く事でも無いと思い直した様だ。


「これは?」


「良く見るんだね、本来のゲンには見慣れた景色だろうけど?」


 ログハウスに相応しい木製の窓枠の窓には、ゲンが日常と”感じる”物が映し出されていた。


「これを”見て”いるんだね?」


「そうだよ。ふーん、これがゲンの世界か、微妙だね」


「微妙って、何だよ!」


「特徴が無いと言った方が良かったかな?」


 ”窓”から見えたのは、”21世紀初頭の日本”と思われる場所の、ごく普通の住宅街だったのだからアルゴの感想は間違ってはいない。運悪く、建売りの様な同じ形の三軒の家が目の前だったのが特徴が無いという評価に繋がったのだろう。


「はじまったみたいだね。意外と普通じゃないみたいだ!」


「何が楽しいんだか?」



+ + + + + + + + + + + + +




以下登場人物紹介ですが、ネタバレがありますのでご注意下さい。





+ 登場人物


−主人公周辺ー

☆不動 幸太(20) コータ

 主人公 幸福が多(太)く訪れる様にと名付けられたが皮肉な事に不幸が多く訪れます。不幸多です!

 とある事情で不幸な人生まっしぐらですが、特殊な力は無いです! ある意味選ばれちゃった人間?

 コータとヨースケとモモは幼馴染で同学年

 父親譲りの容姿で熊に例えられる事が多い


■藤田 陽介(19) ヨースケ

 後に救世主と呼ばれることになる人物だが、現在は自覚無し。


□辺見 百花(19) モモ

 陽介にぞっこんな女性、重要な役割を持っていますが出番はあんまり無いです。


△辺見 柚姫(23) ユズ姉

 ノーコメントで!


★不動 理々(18?) リリス

◎不動 理夢(15?) リリム

 ある目的で冥界から送り込まれてくるが……


−見る者ー

○アルゴ(不明)

 全てのものを見る存在


●ゲン 二宮 現人(16)

 アルゴの部屋に迷い込んだ人間

 もう1人の主人公かも?


−神々ー

◆冥界神:サウレニア サレちゃん

◇天界神:モナトウス モナとん

 普通?に冥界と天界という世界を作った神々、今は平和的に抗争中



−冥界ー

▼エドヴァン

▽チアーノ

 冥界の使者とその部下


−天界ー

△ユセリエル

 天界の使者で、ヨースケを陰から見守っている?


−その他ー


・不動夫妻(征夫・佐恵子)

 雑誌社のカメラマンと専業主婦


・辺見夫妻

 普通のサラリーマンとパートをはじめた奥さん


・藤田夫妻

 警察官僚と料理研究家の夫婦

・藤田 ウメ

 ヨースケの曾祖母、コータの命の恩人


・相原さん

 柚姫の担当さん、編集としては優秀なのに苦労が絶えない人


・千葉ちゃん

 コータ達が通っている大学の講師。30代前半の女性でズボラだが学生からは人気がある


・遠藤

 家出した娘を探している男性


全11話構成になります。


既に書きがあっているので、毎日午前9時に掲載していきたいと思います。


ご意見・ご感想をお待ちしています。


* * *

5/28 改訂

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