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まとめてみました

Invisible Man in Mirror House

作者: 風紙文

まだ日が昇って間もない時間、簡単に言えばまだ開園していない遊園地に、私は忍び込んだ。

膝まで隠れるぐらいトレンチコートに帽子を深く被り、まだ少し暗いがサングラスをかけている。更に手は手袋、足はロングブーツ。

他人が見たら、肌を出したくない人にも、逆にその下には何も着けていない露出狂のようにも見える出で立ちだろう。

ちなみに言うが、どちらでもないぞ。

といっても、まだ開園していないのだから人などいる訳がなく、ほとんどのアトラクションも動いていない。

だが心配ない、私の目的地は観覧車やジェットコースターではない。

迷うことなく目的のアトラクションへ、扉を開けて中に入った。

なに? 鍵はどうしたのかって?

それは気にしないでいただきたい。

ただどうしても知りたいならば、この世にはそういう技術がある。とだけ語っておこう。

さて、目的のアトラクション。

それは、ミラーハウス。

全面鏡張りの迷路の事だ。その中央、床を除く全方向を鏡で囲まれる場所に私は立った。

前も、後ろも、右も左も私が写る。コートに帽子にサングラスに手袋にブーツ姿の私が。

壁の一ヶ所に手を触れる。その鏡には向こうの私の手がこちらの手と重なった姿が写っている。

その姿を少し見てから、私は帽子に手をかけ……脱いだ。






鏡に写った私も帽子を脱ぎ、その下にある頭を――――――写していなかった。






鏡がおかしいのではない、何故なら、実際の私にも帽子の下に頭が無いのだから。




いや、無いのではない。見えないのだ。




私は、属に透明人間と呼ばれている者だ。





手袋を外して再び鏡に触れる――――――コートの裾と鏡の間に妙な間が出来上がった。





ブーツを脱ぐ――――――コートが宙に浮くという光景が写っている。





コートの前を開ける――――――本来写る筈の体を写さずに、コートの裏地が鏡には写っていた(あ、ちなみにズボンははいているぞ。私は露出狂ではないからね)。


再び手を鏡に当てる。向こうの私も同じ姿をした。

サングラスを外し、コートのポケットへ。顔を鏡に向けて、笑う。

口角を上げるという単純な笑顔を作る動作、それすらも前の私には見当たらない。そもそも顔が写っていないのだからとうぜんだが。

その他の表情も作ってみる。笑顔の喜、怒、哀、楽(楽と喜の表情の区別分けはどうすればいいか分からなかったが)。

私はすべての表情を出来る。だがそれを目で見ることは、叶わない。

これだけの姿を写すものに囲まれていても、私は自分の表情を見ることが出来ないのだ。

なぜなら、私は透明人間だからだ。

まあもう慣れたものだがな。

自分で自分の姿を見る必要な機会はそうそうないし、見えずに苦労したことはあまりない(あまり、という所にツッコミを入れないように)。



……ただ、一つだけ残念なことがある。




それは、同族(私と同じ透明人間)




その表情も伺うことができない事だ。




仲の良い同族、よく会話もするし、共に遊びに行ったりもする(もちろんこういう格好で)。

街に、山に、湖に、川に、海……は流石に行けないね。脱げないしこの格好は目立ちすぎる(どこでも目立つでしょう、というツッコミは無しだぞ?)

遊びに行けばそれはもう楽しいに決まっているし、さまざまな表情をする。

ただ、声で示さない限りその表情がどんなものか一切分からない。

お互いの表情は愚か、その容姿も確認できない。相手がどんな顔をしているかも知ることが出来ない。

それだけが、どうしても解決出来ない問題だ。






まぁ、それもいずれ解決出来るかと、私はプラス思考に考えることにしている。

コートの前を閉じ、手袋をはめ、サングラスをかけて、帽子を被る。

見えない中を隠す全て見える格好になり、私はミラーハウスを後にした。

今日はこの後、同族と会う約束がある。




そして二人で話し合うのだ。







互いの表情を見ることが出来る、その方法探しをね。

透明人間は互いを見ることが出来るのか? という疑問から浮かんだ物語です。

いろいろな資料を探った結果、やはり互いを見ることは出来ない。という結論に至り、この結末となりました。

若干悲しめの中に登場人物の一人コント(?)を含めてプラス思考に終わる。自分には少々珍しい文体となりましたが、これはこれで良い作品になったと思います。


感想及び評価、お待ちしています。


それでは、

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― 新着の感想 ―
[一言] こんにちは。お久しぶりです! 透明人間の寂しさ(少し自嘲気味にも感じられましたが)伝わってきました。 表情が分からないのは、どんな感じなのでしょう。 電話で相手と話している感じなのでしょうか…
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